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家族に変な所を見られたら、誤解される前に叫ぼう


時間が欲しい。龍神がそう言ってから1時間が経過した。

気まずい沈黙の中、ついに龍神が動き出す。


体操服に手をかけると、瞬く間に全てを脱ぎ去った。というか服が消えた。


「何でだよっ!?」


再び布団を巻き付ける。何してんのこの子は!?さっき僕が注意したこと何一つ理解してないよっ。


「ちょっ、邪魔しないでくださいよ。今から証拠を見せるんだから〜」


「暴れるなバカ!何を見せつけるつもりだコノヤロー、さっさと服を着ろい!」


怒鳴り服を着せようと、上から押さえつける。くそ、体操服は一体何処にいったんだ。

視線をあちこちに飛ばし探していると、僕の耳はとんでもない音を捉えてしまった。



ガチャ



「兄貴ぃ〜飯作りにきたよ〜」



あ、あわわわわわわわわわわわわ。


僕の現在の家はアパート。お風呂とトイレが一緒についており、使ってない部屋が一つと、残る部屋はリビングのみ。


玄関を開けるとそのままリビングが見えるようになっており、僕はそこにベッドを置いている。


つまり、有桜の目には僕が幼い裸の少女を無理やり押さえつけているように見える訳で……。


「ち、違うんだぁあー!!これには海よりも深い理由があって、決してお前の考えているような事は起こってないからぁああ!!」



「はぁ?どうしちゃったの、突然。違うって何が?」



慌てふためく僕をよそに、有桜は買ってきただろう食材を持ってキッチンに向かう。

は?どうなってるんだ?

まるで龍神の姿が見えていないかのような反応だぞ。


「……もしかして、これが証拠か?」


確認のため振り向くと龍神は、満足そうに頷いていた。

果たして服を脱ぐ必要があったのか。疑問だ。







有桜がキッチンで料理をしている間、僕は龍神に色々と説明をしてもらっていた。



「えーと、基本的に私の事は主しか見る事は出来ないと思います。もう気づいたと思いますけど、私は主が作った宗教の神様です。力が無かったもので、3ヶ月たってやっと主と対面することが出来ました」



「……実際見せつけられたら信じるしかないけどさ、今だにちょっと半信半疑だよ。神様なんて本当に居るんだな。てか、作った本人すら忘れてたのに、よく生まれることが出来たなー」



龍神教は1ヶ月でやめたはずだ。龍神が言う力が何のことか分からないけど、そんな簡単に生まれるものなのだろうか。


案外知らないだけで、そこら辺に神様がいるのかもしれないな。

この街なら尚更いそうだ。



「そうですよ〜、主がやめちゃったせいで全然力がたまらなかったんですから〜」



「さっきから出てる力って何なの?」



「宗力のことですか?宗力とは簡単にいうと、その宗教が取るべき信仰行為をおこなうと溜まる力なんですよ〜」


キッチンからいい匂いが漂ってきている。今日はオムライスみたいだ。

くんくん匂いを嗅いでいる龍神をよそに、僕はノートパソコンを起動させる。


もちろん僕は信仰行為なんて取っちゃいない。というか何一つ覚えていなかった。


そこで僕はノートパソコンの中のファイルの一つをクリックして、あるサイトを開く。



龍神教信仰サイト


僕が小遣いを得るべく作ったサイトだ。

そもそも龍神教とは、行った善は別の形でそのまま本人に帰ってくるよ、ということになっている。

さらに、行なった善を貯めることで確実に天国に行くことが出来ますよという事を謳っている。


いい人が確実に報われるであろう宗教だ。


そしてサイトには、その日行なったいい事を書き込めるようにしており、それを教祖である僕が読んで龍神に伝える事で、行なったいい事がその人にそのまま帰るという事になっている。



つまりだ、僕の予想が正しければ……


「やっぱそうか……」


そこには大量の書き込みがあった。

龍神教には三人だけ信者がいるわけだが、その三人が飽きもせずに毎日書き込みをしていた。

これは心が痛い。


教祖である僕は存在自体を忘れていたというのに……。申し訳ないという思いが込み上げてくる。

キチンと責任を取ってからやめるべきだった。



「……姿を現したのは、僕に復讐するためか?」


「いえ、違いますよ〜。確かにそれは怒ってますけど、今からやり直せばいいだけですし」



「やり直すって……僕に教祖として働けって事?ヤダよ面倒くさい。この人達には悪いけど、金にならないし時間の無駄じゃん。今すぐこのサイトは終わらせるよ」



「……信者を1万人にすると、何でも願いが叶うみたいですよ?」


「詳しく聞かせてもらおう」



踵を返して聞き返す。

ジト目で見てくる龍神の視線を受け流しつつ、次の言葉を待つ。


「……えっとですねぇ、そもそも何で私が生まれたか何ですけど、ここの土地は少し特別なんですよ。知ってると思いますけど、この街には宗教組織が多いんです。それも偶然ではなく、必然で、土地神様によって定められてるんですよ」



土地神?そんなのもいるのか。

それにこの街には確かに宗教が多い。だからこそ、僕もやろうと考えたわけだが。


「つまり、土地神様によって神が生まれやすくなっており、信者を1万人に集めると土地神様が願いを叶えてくれるってわけです」


「なるほどなー、でも存在自体を忘れていても生まれるなんて、神がすげー増えちゃうんじゃないか?」


「そこは三人の信者さんのおかげですよ、毎日信仰行為を行なってくれたからこそ、こうして主に取り憑くことが出来たんです」


なるほどなるほど。……ちょっと待て。取り憑くって何だ?いや、確かにずっと側にいたとか言ってたけど……深い意味はないよな?











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