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店内で大声を出すのはやめましょう


「悪いっ貴也!りゅうじっ、じゃなくてリンと一緒に少し待っていてくれ!!なるべく早く戻るっ」


振り向きもせずに僕は大声で叫んだ。

驚いた子供たちの目線が僕に突き刺さるけど、この際どうでもいい。


あの後ろ姿は間違いないっ。あの人だ!!

初めて会った場所でまた会えるとは!凄い偶然だ。

しかも僕が困っている時に現れるなんて。

本当に最高だぜ、師匠ッ!!


ザッと見渡しても師匠の姿はもう見えない。

屋上から出たのだろう。


デパートの屋上までの行き方は階段とエレベーターがあるけど、師匠の性格からしてエレベーターは使わないはず。


なら階段を飛び降りながら行けばすぐに追付けるはずだ。周りの人に迷惑がかかるけど、避ければ大丈夫だ。



「よしッ、とりゃ!!」


グギ。



ぐっあぁぁああああ!足をくじいたァアア!

チックショォ、早く会いたいという想いに身体がついていけなかったかぁ!


師匠が何階で降りるかわからない以上、こんな所でもたついている場合じゃないのにぃ〜。

どうにかして師匠の足止めを出来ないものか。


はっ、ケータイがあるじゃないか!

って、連絡先しらねぇーよ!知ってたら苦労しねぇーよ。


あぁもう。もどかしい、もどかしすぎる。

諦めるしか、ないのか。

……いや、諦めてたまるかよ。


僕は大きく息を吸い込む。


「す〜〜〜ぅ、師っ匠ぉおおお!!!」


そして僕は大声で叫んだ。腹の底から、デパート全体までその声を轟かすために。


「僕です!!龍ヶ崎ぃい鋼介でぇえす!!!いるんでしょぉおお師匠ぉおお!!」



ハァハァハァハァ、これ、で。ハァハァ師匠は、僕に気づいたはずだ。


あぁ〜周りの視線が痛い。かなりの迷惑行為をしてしまった。

店内を全力疾走したり大声で叫んだり、出禁にされても文句は言えないレベルだ。


ブーブー。


その時、僕のスマホが振動した。

メールだ。

こんなタイミングだ、師匠に違いない。

緊張する指を操作してメールを開く。



浜野はまの 貴也たかや

Re:声デカすぎ笑

キッモ笑笑



野郎っ!ぶち殺してやる。


ブーブーまたもやメールが届いた。今度こそ師匠だ!!



水無月みなづき 零奈れいな

Re:店内で騒ぐのは止めましょう

モラルというのを知っていますか?お手元の携帯で調べてみてください。

どういう事情があるにしても、人に迷惑をかけないよう努めるのは人としての常識だと思います。



クラスメイトに恥ずかしい場面を知られた死にたい。

うぅ、街唯一の大型デパートなんだ、知り合いがいたとしてもおかしくはない。

くぅう〜この方法は間違っていたか!そもそも師匠も僕の連絡先しらねぇーだろぉーがー。


ブーブーまたしてもスマホが振動する。

誰だよもう。水無月に続いて知り合いがこのデパートにいたのかよ。



○△□**@*¥$=com.

Re:師匠はやめろ

すまん



知らないメアド。これは、正真正銘師匠からだ!

やった、やったよ!師匠のメアドをゲットだぜ!!

イヤッフゥウ!!!

って喜んでる場合じゃない。本文のすまんってどういうことだ?


何の意味なんだろうか。


届いたメアドにどういう意味か聞くためにさっそくメールを送る。


数分待つ。

一向に返ってくる気配がない。


仕方無しに僕はくじいた足を引きずりながら、屋上に戻ることにした。



「美味しいかいリンちゃん。おっと頰っぺたにアイスがついてるよ。俺が舐めてとってあげよう」


「ただいまー」


「おぶっ」



ふぅ、危ない危ない。あと少しで龍神にクズの毒牙がかかるところだった。


「おかえりなさい主、じゃなくて鋼介さん」



「うん。そのアイスは貴也に?」


「はいっ。買っていただきました」


嬉しそうにアイスを舐めている龍神。褒めてつかわすぞ貴也。


「イッテェなぁ。モラル無し男が。空気読めよ」


「黙れ。人の彼女に何しようとしてんだボケが。殺されないだけ感謝しろ」


二度と龍神と貴也を二人っきりにはしない。モラルがないのは貴也の方だろうが。


「それで何してんだよ鋼介こうすけ。あんな馬鹿な事してよぉ。馬鹿みたいに大声出して」


「聞いてたろ、師匠がいたんだよ。」


「師匠とは誰ですか?」


小首を傾げながら龍神が聞いてくる。


「んー、僕ら幼馴染三人組のリーダーみたいな人かな。初めて会ったのがこのデパートでさ、そん時僕たちは小学三年生で、師匠は六年生だったかな」


「へぇ〜つまり四人目の幼馴染みたいな感じですかね。鋼介さんはその師匠という方が好きなんですか?」


「そりゃ、色々教わったり世話になったからね。好きだよ」


初めて会った時の事は今でも鮮明に思い出すことが出来る。

あの事件がなければ、いい意味でも悪い意味でも、今の僕達はいなかっただろう。


「しかし、貴也は随分と冷静だな。2年ぶりの師匠だってのに、お前も師匠の事は大好きだろう?」



「ああ、まあな。てか俺さっきまで会ってたし」


「はぁ!?ちょっ、待て!どういう事だそれは!!」



「ぐぇ、胸ぐら掴むなよ。どうって……久しぶりに会わないかって連絡があったからこのデパートに来たんだよ」



何て事だ。どうして貴也なんだ?おかしいだろ、何で一番に僕に会いに来てくれないんだ?


「ショック受けてるとこ悪いが、俺に会う前にりょうの奴とも会って来たってよ。師匠曰わく、お前今面倒ごと背負い込んでるから会いたくないってよ」



そんな殺生な!!二人には会って僕には会わないなんて、あのメールはそういう事か。

てか、困ってる事に気付いてるんなら助けてくれてもいいのに。


「冷えよ師匠……」


「しょうがねぇよ。師匠も別件で忙しいんだとよ。俺はお前を手伝うよう言われたし、ちゃあんと好かれてっから心配すんな」


「……死ね」


「人が慰めてんのに死ねってどゆこと?リンちゃんこんなクズはやめた方がいいぜ。俺が変わりに幸せにしてやるから」



「次リンを口説こうとしたら口を糸で縫い付ける」


いちいち口説きにかかりやがって、このクズが。手当たり次第に口説こうとするから女子から嫌われるんだっつうの。



「まぁこの話はここまでで、お前が抱えてる問題を聞こうじゃないか」


貴也が本題を尋ねてくる。里美さとみちゃんの件は僕一人で解決は難しい。なら、頼るしかない。


僕は龍神の事も含めて全てを貴也に話した。




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