ソビエト戦線
5
スターリンは追い詰められていた。
現在、バイカル湖西のイルクーツクに本部を置き指揮を取っていた。
最前戦はソビエトを真ん中あたりで縦に走るエニセイ川を挟んだ形で激しい戦闘が行われている。
しかし、備蓄兵器にも限りがあり工場も破壊され供給もされない状況が続いていた。
もう降伏も時間の問題であった。
そこに新たな報告が飛び込んで来た。
『ドイツ新型兵器がエニセイ川を渡って来ているようです。
あのウィンドパンツァーだと思われますが新型が混ざっているようです。』
『なんとか侵攻を止められんのか?』
『現在、我が軍の戦車部隊では無理です。
なんとか歩兵部隊だけが奮闘しているようですが、それも徐々に消耗して行っております。』
歩兵だけがゲリラ戦によりある程度効果を発揮していたのだ。
『もう一度、前戦を下げ空軍と榴弾砲部隊で一斉砲撃をしろ!』
『それが、後方の部隊にも砲撃がありかなりの被害が出ているようです。
かなりの巨弾で一発で100m四方に被害が出る見たいです。
噂に聞く列車砲かも知れません。』
『あれは、近くに線路がなきゃ無理だろう。
おまけに侵攻部隊にはついて行けないはずだ。』
『その通りです。しかしあの巨弾は考えられません。
もっと動けるように改造されたのかも知れません。』
『ウィンドパンツァーにそんなもんまで出て来たのか!
では全部隊に撤退を指示し部隊の再編に勤めさせろ。
対応はその間に考える。』
こうしてソビエトは本部を一気にハバロフスクまで移動させてしまった。
もう海岸まで400kmほどである。
『閣下!もう日本に援助を求めるしか我が国はおしまいです。』
『わかっておる!しかし、あの弱小国に出来た事が何故出来んのだ。』
『お言葉を返すようですが、すでに日本は弱小国ではありません。
太平洋のほぼ全域を制圧し、アメリカでさえ占領出来るほどの強国なのです。
中国も今は何を言っても日本の指示がない限り動かんでしょう。
閣下、決断して下さい!』
スターリンは頑固で知られていたしプライドが非常に高かったのだ。
しかし戦況がそのプライドをズタズタに切り裂いていったのだ。
『わかった。日本の大使を呼んでくれ。』
6
日本にソビエトからの援助要請が届けられた。
しかしドイツとは日独伊三国同盟があるためこの要請は拒否しなければならないのだ。
日本政府はソビエトが苦境に立てば援助要請が来るだろう、と予想されていたので会議はもう終わり政府首脳はすでに結論を決定していたのだ。
かなり時間をかけ会議を重ねた結果、このように判断された。
ドイツとの世界二極化はヒトラーの思想や今までの行いなどを見る限りありえない。
アーリア人が世界の支配者と言う考えは覆さないだろう。
そのうち日本にも牙をむき結局は戦争になってしまう可能性は大である。
よって日本はアメリカ、中国、イギリス、ソビエト、その他の国々と連携しドイツとの戦争に踏み切る構えである。
要請があり次第、ドイツへの宣戦布告を決定する。
このように政府では待ってましたとばかりにドイツ大使に宣戦布告を発表したのだ。