米内内閣
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東条内閣が総辞職し次に国民の期待は陸軍より活躍目覚ましい海軍であった。
これにより米内光政に白羽の矢がたち再度組閣が命じられた。
米内は開戦前にも天皇陛下より直接組閣の銘があり内閣総理大臣に就任し、その後日独伊三国同盟に反対し、ものの半年程度で総辞職に追い込まれてしまった。
その後、米内はしばらくは予備役としていたが海軍大臣として復帰し活躍していた。
その米内に再度、組閣が命じられ第二次米内内閣の発足となった。
米内はイタリアにいる山本五十六を呼び戻し将軍達を招集し各専門家達も集め緊急会議を開催した。
当然、赤間裕太も特別に呼び出された。
『諸君!現在ヒトラーの放送により世界が氷着いたような状態だ。各国とも答えが出せずアメリカと我が日本の判断を待ちそれから動こうとしている国が多いようだ。
アメリカでは現在、実験している数発の核爆弾を落とす事を中心に考えてるいるようだ。
しかし、ヨーロッパにおいて二度の核爆発と工場での爆発を調べた情報が入っているが、その地域では爆発後も次々と死人が増え、近づく事も出来ないと言う。
専門家達も50年以上は被害が及ぶと言っている。
そんな兵器が登場し人類が使い始めたら地球自体が住めなくなってしまうだろう。
アメリカにも使わせる訳には行かない。
皆が何かアイデアを出しこの事態を打破していきたいと思っている。その為にも力を貸して頂きたい。』
山本は
『総理の意見に賛成ですが現在イタリアでは我々日本軍がほぼ制圧している状況ですが、イタリア残存兵力と国民が暴れ出す寸前です。このまま手をこまねいていると全兵力を引き上げねばなりません。
私自身、良い方策は見つからない現状ではアメリカの策に乗るしかないのではと考えます。』
『陸軍としても同意見です。世界各国でも連合軍に参加していない地域ではドイツに傾きつつあります。ある程度の犠牲もやもえないのではないですか!』
『攻撃の意見が強いのは皆解っていると思う。しかしここで誰か良い方策を思いつかねばこのまま行くしかなくなるのだ。
何か案のある者はいないのかね?』
会議は誰も押し黙り沈黙だけが続いていた。
赤間裕太もひたすら考えていた。
今ある兵器を思い浮かべていた〈龍砲、龍砲改、母龍、青龍だろそれにジェットの翔燕に富嶽、で最近出来た虎鱏、どれも核兵器には太刀打ち出来んなぁ…〉あれこれ考えてはいたが中々良いアイデアは浮かばなかった。
総理は
『意見が出ないようなので今日はこれまでにしましょう!明日もう一度会議を開きそこで案が出なければアメリカの作戦に協力しようではないですか。皆一晩考えて下さい。それでは解散。』
会議は進まず皆会場を後にした。
裕太も会場を出たがそこに山本が声を掛けてきた。
『赤間大佐!ちょっといいかね。』
『長官、ご苦労様です。』
『君には苦労を掛けさせてしまっているね。婚約もしたと言うのに祝言も挙げさせてやれないで申し訳ない。もう少しでこの戦争も終わらせられると思っていたがやはりヒトラーはしぶとい。まだ苦労させるかも知れないがよろしく頼む。』
『いえ長官、アカネは解ってくれていますので大丈夫です。私も最後まで頑張りますので任せて下さい。今も何か思い付きそうなのですが少し頭を整理し考えて見ます。』
『そうか、私も出来れば核兵器は使いたくない!なんとか打開策が見つかれば即座に賛成するから頼むぞ。』
『解りました。私はこのまま工廠に戻り皆とも話し合ってみます。それでは長官また明日よろしくお願いします。』
そう言うと裕太も会場を後にし工廠に向かったのだ。
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夜遅くに工廠に着いたが幹部達は裕太を待っていた。
『大佐!お帰りなさい。どうでしたか会議の方は?』
『お〜ただいま。う〜ん何も案は出なくて一度解散になってしまったんだわ。で明日も朝から行く事になる。』
それを聞いたみんなは落胆すると思いきや何故か笑顔になった。
『では我々の考えた案も聞いてもらえますか?と言ってもアイデアは正雄なんですけどね。』
『何か対策があるのか!是非聞かせてくれ。』
『では会議室に行きましょう。』
それを聞くと裕太は脱兎のごとく会議室に走りこんだ。
会議室に行くとすでに10名ほどの技師達が集まっていた。
『おい対策が見つかったのか?』
『裕太先輩、お帰りなさい。そんなに慌ててどうしたんですか?』
『お〜すまん。会議では案が出なくてな。悩んでいたのだ。正雄!いい方法があるのか?』
正雄は少し難しい顔になり話しだした。
『うまく行くかは解りませんが試して見たいと思う方法があります。
虎鱏を使って見ようと思うのです。』
『虎鱏を………あんな小さいのでどうするんだ?』
『虎鱏だけではありませんが全ての軍の協力が必要なのです。アメリカの協力も必要です。』
『そうか、とにかく早く聞かせてくれ。』
この後、話し合いは続き詳細な計画書を作り上げる事が出来たのは夜明けを迎える時間であった。
裕太は仮眠を取ると出来上がった書類を確認し、正雄を叩き起こすと一緒に本会議に出席するべく列車に飛び乗ったのだ。