爆破作戦
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各国の連合軍のほぼ全兵力が動き始めた。
東部戦線ではモスクワ奪還の総攻撃が開始されヨーロッパ沿岸部では日本アメリカ連合艦隊がフランスからオランダまでの港湾施設や軍事施設に対し空爆が始まった。
そしてアドリア海側ではイタリアに対しB-29 100機が各航空基地に爆撃を開始した。
日本主力艦隊はその1日前に龍砲601部隊と701部隊に作戦を開始させ、現在アルプス山脈を迂回しオーストリアのウィーンにいた。
601部隊の隊長は井澤大尉で豪胆な人柄として知られている。
『これより701部隊と別れ我々はドイツ国内に入る予定だ。かなりの防衛戦が張られていると思うが突破を優先し敵は出来るだけ無視しろ。』
『隊長!作戦開始の命令が下されました。』
『よし、全艦全速前進!』
601部隊10隻は轟音をたて突進していった。
その前に現れる敵に対し日本の艦載機が露払いするように爆撃し機銃掃射しながら龍砲の道を切り開き、龍砲隊の上空にもたえず50機ほどが旋回し護衛していた。
701部隊も同様である。チェコスロバキアに向け作戦を開始した。
30分ほどするとそのはるか上空を中国から発進した富嶽の編隊が追い越して行きシュトゥットガルトに向かって行った。
『よ〜し予定通りだ。富嶽に手柄を全部取られないように急ぐぞ!』
『前方に敵戦車隊です。』
艦載機の爆撃や機銃掃射で残った敵戦車30両ほどが行くてを遮るように配置されている。
『艦載機達に離れるように言え!主砲用意!弾種散開弾、610は三式弾用意!』
『目標までおよそ5km』
『よし打ち方始め!』
散開弾が敵上空に到達すると燃料をばら撒いた。そこに三式焼夷弾が引火し物凄い轟音と共に火玉が広がった。
爆風と火炎が収まると当たりは一面焼け野原である。
当然集結していた戦車隊も黒焦げである。
『敵戦車隊全滅しました。』
『目標まであと少しだ前進再開せよ。』
601部隊は一隻の損害もなくシュトゥットガルトの西30kmまで迫った。
『隊長!前方目標地点に火の手が見えます。富嶽の爆撃だとおもわれます。』
『全艦微速!主砲発射用意、弾種徹甲!
用意出来た艦から随時発射しろ。』
龍砲隊は主砲を撃ちながら時速90kmほどで進んで行った。
近ずくと建物はほぼ全壊しあちらこちらで火の手が上がり人が逃げまどっている。。
『よ〜し全艦停止!陸戦隊出動せよ。』
今回の作戦では各艦5名づつの陸戦隊が乗り込んでおり爆破作戦を敢行するため全員がフル装備で待機していた。10隻の龍砲から飛び出した総勢50名が目標地点に向け駆け出し、残存兵に向け射撃しながら突進していった。
陸戦隊の隊長は吉田大尉である。
『各中隊は瓦礫から地下への道を探せ!』
『隊長!ひどい有様ですよ。地下なんてあるんですかね?』
一面コンクリートの瓦礫が散乱しており建物の痕跡すらないような有様であった。
山裾の瓦礫を進んでいた中隊から報告がはいった。
『吉田大尉!見つけました。ここから入れます。』
『よし、10名はここで待機、残りは俺に続け。』
瓦礫の中を掻き分けながら地下への坑道を斜めに降りて行った。
ババババッ!
『敵兵だ!隠れろ!』
30mほど入ったところで隠れていた敵からマシンガンが放たれ何人かが負傷した。
何度か応戦したが銃撃が止む気配が無い。
『手榴弾を投げろ!』
どっかーん!2発の手榴弾が投げられ敵は沈黙した。
『よし、負傷した者はここで待っていろ。あとで迎えに来る。』
その後敵にも遭遇せず最下層まで辿り着いた。入口から300mも入ったところで地上からは約70mの深さのところに工場はあった。
そこにはまだ50名ほどの工員達が怯え隠れていた。
『ここはすぐに爆破する。命の欲しい者はすぐに退避しろ!』
日本語で言ったせいか皆キョトンとしていたが兵隊達の行動を見て気付いたのか慌てて逃げ出し始めたようだ。
『爆弾セット完了です。』
『よし全員退避〜!30分で爆発するぞ、急げ!帰りに捕虜を数名捕らえるのも忘れるな!』
途中負傷した兵を連れ、逃げていた工員も数名捕虜にし急いで地上に戻ると待っていた龍砲隊に飛び込んだ。
しかしそこにドイツのジェット戦闘機が飛来したのだ。
上空護衛の艦載機が蹴散らしにかかったが3機が龍砲に近付き604と605にロケット弾を叩き込んだ。
龍砲はまだ停止していたため2隻が被弾してしまった。
『全員救助急げ!』
『こちら604、主砲はダメですがまだ行けます。』
『よし605の生存者を乗せたらすぐに退避だ!あと20分だぞ。』
こうして全速で元来た道を退避していった。
20分後!
大きな爆音と共に後方で核爆発が起こった。
龍砲隊はすでに目標から50km以上離れていたため被害は無く9隻が全速で退避する事が出来た。
『艦隊に報告しろ!作戦成功、目標地点は壊滅、残った核も誘爆し完全に消滅した。』
こうして核工場は再起不能なまでに壊滅する事が出来た。
鉱山に向かった701部隊も601部隊より早く目標の破壊に成功し報告が入っていた。
これで数年は開発を遅らす事が出来ただろう。
しかし、捕虜の話しを聞くと3発が完成していたようだ。
すでに2発が爆発しているのであと1発が残っている計算になる。その報告後、龍砲隊2隊は日本艦隊に戻っていった。