原子爆弾
26
イギリスで各国の会議が開かれている頃、ソビエトでは龍砲部隊の再合流により順調に戦線を押し返していた。
いよいよモスクワ近くに最前線が到達する頃になってドイツの猛反撃が開始された。
ドイツ空軍はほとんどの機種が長距離に向いていなかったためここでジェット戦闘機や爆撃機などがソビエト日本連合軍に襲いかかったのだ。
ソビエトも日本も侵攻が早く内陸の飛行場の整備が間に合わなかった為、制空権の弱さが現れた結果だった。
連合軍は一度前線を下げ再戦略をしなければならなくなり龍砲も何隻かが被害に遭い修理と補充が必要になってしまった。
しかし、ここで思わぬ情報がもたらされた。
連合軍がモスクワに近づいた為、政府関係者や市民などが前線に逃げ込んで来たのだ。
そこである政府関係者から原子爆弾の情報がもたらされた。
『ドイツがチェコスロバキアの鉱山にかなりの人材を派遣していました。何かと思い調べたところウランが発見されていたようです。』
と言うのだ。
原子爆弾の爆発の情報はこちらにも伝わっていた為、すぐにイギリス連合軍にも伝えられ同時に対策協議に入った。
27
そんな時、オランダの港から3隻のウインドパンツァーが出港した。
沿岸沿いに南下を開始しドーバー海峡に向かっていたのだ。
テムズ川の河口には連合軍の艦隊が集結しており、海峡には艦隊の一部が偵察も兼ねて守備にあっていた。龍砲も2隻が交代で哨戒に出ていたのだがそこに上空の偵察機よりウインドパンツァー発見の報が入った。
『よ〜し、また敵さんが現れたようだぞ。
懲らしめに行きますか。』
そう言って103と105が向かっていったのだ。
『おっ!見つけたぞ。攻撃準備始め。全速前進!』
龍砲2隻は二手に別れ挟み込む形でウインドパンツァーに向かって行った。
すると敵は分散し逃げに入った。
『おいおい!戦う気がないなら出て来るなよ〜。』
『どうしますか?艦長!』
『とりあえず右の一隻を追っかけて一撃食らわすか。』
『了解!二時の方向に転舵。』
103は右の艦を105は真ん中の艦を追っかけ始めた。敵は後ろを見せたまま逃げているがスピードが違うため10分もかからず追い付かれ海の藻屑と消えて行った。
『よし、あと一隻は何処に行ったのだ?』
『たぶん105がもう一隻をやったと思いますが一番左に逃げた敵は逃げられたかも知れません。』
『仕方がない、報告だけして戻るぞ!』
103、105はこうして転進し始めた。
しかしこの取り逃がした一隻がとんでもなかった。このウインドパンツァーは変な形をしていたのだ。
真ん中に砲門が無くそこに小型の高速ボートを乗せている。
そのウインドパンツァーはイギリスの陸地に近づくとボートを降ろし乗員全員がそれに乗り方向転換し戻って行ったのだ。
すると無人になったウインドパンツァーはスピードを上げ始めテムズ川河口方面に突進し始めた。
なんとそのウインドパンツァーは無線操縦されていたのだ。
偵察機がそれに気付いた。
『なんだあの一隻は?ほっといたら主力艦隊に近づくぞ!すぐ様攻撃開始だ。』
近くにいた僚機とともに機銃掃射するべく急降下していった。
『なんか変だな、得意の回避運動はしないのか?おまけに砲門もないぞ。とにかく撃ちまくれ!』
3機がウインドパンツァーに波状攻撃し3度目の攻撃をしたとたんそれは起こった!
ピカッ!
かなりの閃光が走りいきなり爆発した。
あっという間に火玉は拡がり3機は爆風に巻き込まれ一瞬で燃え尽きてしまった。
その閃光は50km離れた主力艦隊でも確認された。
『なんだあれは?爆発か?すぐ報告しろ!』
『了解、司令部へ!こちら母龍、テムズ川河口西50kmほどのところで閃光確認!何かの爆発と思われる。現在その方面にはキノコ型の雲が発生しております。
わ〜〜〜〜っ!っと』
報告中、高波が船を大きく揺らした。
なんと高さ5mもの波が艦隊や沿岸部に押し寄せた。
『申し訳ありません。今高波が本艦を抜けて行きました。津波に注意されたし。』
高波はテムズ川も駆け上って行き沿岸部では浸水したところもあり、かなりの被害が報告された。
28
司令部ではちょうど捕虜にしたドイツ将校達に尋問していたところであった。
原子爆弾の開発研究所及び工場の場所を聞き出していたのだ。
ほとんどの将校達が何も情報を持っていなかったのだが親衛隊の将校が有力な情報を持っていた。
彼は元ユダヤ人捕虜を選別する役職にいたのだ。捕虜を強制収容所の他に工場などにも送り込んでいた為チェコスロバキアの鉱山や過酷な労働工場を知っていた。
彼自身は核開発の事は知らなかったようだが捕虜が変わった死に方をし次々と人員の補充の催促が来ていたのを不信に思っていたのだ。
それを聞き出した事と、いろんな情報を集めると3箇所ほどの場所に焦点を絞る事が出来、再び会議に入った。
『先の報告の通り、ドイツは原子爆弾をウインドパンツァーに搭載し攻撃して来るようだ。これは想像だが敵の原子爆弾は大きく重量がありドイツ軍機にはこれを搭載する能力が無かったのではないかと思われる。
飛行機に搭載されるようになれば皆も解るだろう。
それと今までの情報を整理するとウランはチェコスロバキアの鉱山、工場はドイツ南部のシュトゥットガルトにあると解った。
これによりこの二箇所の殲滅を最優先とする事が決まった。
この作戦は日本軍が中心となるため竹内中将より話して頂く。』
『はい、長官。我々は現在主力艦隊が地中海のアドリア海にてイタリアと交戦中です。
東部戦線では間も無くモスクワを陥落出来ますでしょう。
作戦はこの主力艦隊が中心となって攻撃を行う事になっております。
その陽動に皆様の力をお貸し願いたい。まずオランダ、ベルギー、フランスの港湾とドイツ前線基地に対し攻撃を開始します。
それと同時に富嶽が両目標に対し爆撃します。その後龍砲601部隊が鉱山へ701部隊が工場に砲撃と工兵隊を乗せ地下施設などに爆弾を設置し完全破壊する事になっております。
龍砲隊の護衛についてはほぼ全艦載機が当たる事になっておりますが、その間主力艦隊の制空権が心配ですのでイタリアに対しアメリカ軍のB-29が各航空基地に爆撃を行ってもらいます。
ですから我々連合軍はヨーロッパ沿岸でできる限り暴れ回って頂き上陸もあるぞと思わせてもらいたいのです。』
フランス将校が
『解った。しかし原子爆弾はあと何発あるのか解っておるのか?』
『いえ、解りません。しかし研究者から報告では短期間にそれほど作れないと見ているそうです。あってあと3発、もしかしたら1発かも知れません。
予想では数がないので狙いも我が連合軍に対してが最も有力です。
これに対しては我が軍のジェット戦闘機【翔燕】隊とアメリカ軍のB-24がウインドパンツァーを最優先し攻撃する事になっております。』
アイゼンハワーは
『よしこれで作戦は決まった。開始は2日後の12:00からにする。各軍戦闘準備に入ってもらいたい。』
こうして作戦は実行される事になった。