プロローグ
1
世界情勢は今だ安定していなかった。
現在、日本は中国、ソビエトとは不可侵条約が締結されており、アメリカとは停戦協定を結び紛争は起きていない。
東南アジア方面は日本軍が占領しており、オーストラリアはアメリカと同じく停戦協定を結んだ。
ハワイには日本太平洋艦隊の司令部が置かれておりアメリカ西海岸の常駐軍とともに太平洋の平和維持に活動している。
ヨーロッパを見てみるとドイツとソビエトが今だ戦闘中だがイギリスを含めほとんどがドイツの占領下になり中立国もドイツの顔色を伺っている状態だ。
ソビエトはドイツに押されモスクワも陥落したのだがなかなか降伏せず、広大な領土とツンドラ地帯と言う地の利を生かし粘っているのが現状だ。
2
赤間裕太大佐は現在、昔いた海軍工廠に戻り龍砲の改造の指揮を取っていた。
『正雄!この新型龍砲に乗りたいって言ってたよなぁ。
さっき第一龍砲艦隊の竹内中将と話してたんだが3番艦に空きがあると言っていたぞ。』
『ほんとでありますか?赤間大佐!』
『あ〜、若くて威勢の良いのがいると推薦しておいてやったからな。』
『ありがとうございます。』
春木 正雄はまだ18歳なのだが最初の龍砲開発から工廠にいて龍砲の事は何から何まで熟知しているベテラン技師だ。
性格は大雑把な所もあるが、たまにみんながビックリするようなアイデアを出しなんでも率先して行動する元気な青年である。
『第一龍砲艦隊にはお前も知っている白木少佐が隊長だから頼りになるだろう。
俺から連絡しておくから少佐の所に行って見ろ。
ただ、戦闘になると今までのようにはいかんぞ!しっかり気持ちを整理してから行く事だ。』
『解りました。大佐殿!
これからも宜しくお願いしま〜す。裕太先輩!』
とお調子ものでもある。
二人は歳が5歳離れているが龍砲の事となると名コンビで、あれやこれやとアイデアを試したり模型を作ったり周りから見ると兄弟のように和気あいあいと仕事をしていたのだ。
この工廠には現在、300名の技師がおり龍砲に関する開発をチーム分けして行っている。
大きく分けて3部署、兵器部、走行部、電気部があり。
1部署ごとに約10のチームに細分化されていた。
兵器部では砲塔、砲弾、測距儀、機銃、高角砲など担当により開発をしているのだ。
正雄はその能力なのか可愛がられる性格なのか解らないが、あちらこちらからお声がかかり自然と全ての事に熟知していったのだ。
『お〜い、正雄!こっちを見てくれ』だの、
『この付け根の部分になんかアイデアないか?』だの
『燃焼実験を手伝ってくれ!』と、
けっこうな人気物なのだ。
裕太はそんな正雄と息が合いこの新型龍砲も試行錯誤の上、完成させたのだ。