第6話 妖魔学園最強の鬼
これより天音の無双が始まりまーす(笑)
色々ハイスペックです。
「何、これ……?」
私は目の前の光景に目を疑い、夢を見ているのではないかと錯覚した。
生まれてこの方、昨日までは人間がどんな生き物なのか知らなかった。
天音は私が出会う初めての人間。
お母さんは今の人間で私達妖怪と対等に戦えることのできる存在は大昔にはたくさん居たけど、今の人間界ではその存在はほとんど居ないと言っていた。
それなのに……。
「神魔流体術、風凛天舞」
たくさんの妖怪生徒を相手に天音は舞を踊るように戦っていた。
まるで目がたくさんあるように四方八方から来る攻撃は受け流し、そして納刀したままの刀で鍔や鞘を襲ってくる妖怪生徒の腹や頭に攻撃して次々と倒していく。
「てめえ!何で刀を抜かねえ!」
「刀を抜かなくて済むなら、それに越したことはない。だけどちょっとキツくなったから……」
天音は左手で人差し指と中指を立てて印を結んだ次の瞬間。
「神魔流忍術、分身の術!!!」
何と天音の姿が一気に八人に増えたのだ。
まさかあれって、古き日本にいたとされる闇の世界の暗殺者、忍ぶ者……忍者の使う忍術!?
「さぁて……一気に決めさせてもらう!」
八人に増えた天音は単純計算にして八倍の戦力で一気に攻め立てた。
「やるではないか、天音は」
「強い……相当修行しないとあそこまで強くなれないよ」
雲母と雷花は天音の強さに感心しながら観戦している。
戦況が逆転したその時……妖魔学園最強の『鬼』が降臨した。
「うらぁっ!!」
「はっ!?」
鬼が振り下ろした獲物……金棒で天音を攻撃した。
間一髪でかわしたが、金棒がポケットを擦り、中に入っていた紙が破れてしまった。
「しまっ……!?」
紙が破れてしまった瞬間、天音の纏っていたお母さんの妖力が消えてしまい、天音は元の人間の戻ってしまった。
「やべぇ……」
妖狐の変化から人間に戻った天音は額に汗を浮かびながら周囲を見渡した。
「なるほどな……通りで妖狐とは違うと思ったら……お前、人間だったんだな?」
天音が人間と知り、生徒達はザワザワと騒ぎ出した。
それは当然だった、本来ならこの世界には人間は存在しない。
その人間が突然現れたのだから混乱するのも当然だった。
「天音、逃げよう!私が、あなたをーーー」
私はとっさに天音の前に出てこの場から退散しようとしたその時。
「待ちな!!」
「逃げる必要はねえよ、千歳ちゃん。俺は別に人間はいようがいまいが関係ねぇよ」
「先輩……」
金棒を振り下ろした鬼は私の先輩で信頼できる妖怪だった。
「俺様は鬼嶋牙王丸……見ての通り、鬼だぜ。お前の名前は?」
「俺は天音……」
「天音か……どうして人間がこんなところにいるのか知らねえが……そんな事はどうでもいい。お前、強いだろ?」
「さぁな……」
「とぼけるな。鬼の勘でお前がとんでもなく強いってのはよく分かる。だからよ……」
鬼嶋先輩は金棒を肩に担いで大きな一撃を放つ構えを取る。
「俺様と勝負しな。俺の金棒とお前の刀……どちらで相手を倒せるか、一瞬の極限勝負だ!」
天音と鬼嶋先輩の極限勝負!?
鬼嶋先輩は生粋の戦闘狂で妖魔学園最強故に常に強い相手を求めている。
「戦わなければならないのか……?」
「ああ。俺は負けるつもりはねえが……お前の力を示せばここの奴らも認めるだろうよ」
妖怪の世界では己の持つ力を示せば周りから認められている。
つまり、この鬼嶋先輩との勝負で天音の持つ力を示せばみんなが下手に天音を襲ったりはしなくなる。
「分かった。その勝負、受けてやる……」
静かな雰囲気を纏う天音は今まで鞘に収めていた龍星神の鯉口を切った。
すると天音の体が一瞬紅く輝いて紅いコートを身に纏った。
そのコートは一流の職人が作ったような綺麗なもので妖力とは別の力が宿っていた。
「紅い、コート……?」
「俺の戦闘服だ。千歳、下がっていろ」
「う、うん……」
天音に言われ、その場から下がった。
すると天音は龍星神を左腰に持って行き、右手を柄に添えて足を軽く開いた。
「ほぅ、居合いか……」
「神魔流抜刀術……一対一の決戦なら、これが一番有効だ」
抜刀術……それは刀剣を鞘内で走らせながら抜き放つことで剣の速さを数倍にして相手を斬り伏せる一撃必殺の大技。
だけど、もし外してしまえば無防備となってしまうまさに諸刃の剣とも言える技……この局面で天音は抜刀術を選ぶなんて……勇気があるというか何というか。
「面白い……勝負だ、天音!!!」
「望むところだ……鬼嶋牙王丸」
燃え盛る炎と凍てつく氷のような二人が対峙する。
その対決に私達は手出しも口出しも出来ず、ただ見守ることしかできなかった。
そしてこの対決が天音と私の運命を大きく変えることになるのだった。
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次回は天音VS牙王丸の勝負です。
剣術に忍術に体術に抜刀術……なかなかチートですね(笑)




