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第11話 一角の出会い

今回から少しずつ妖怪以外の異形が出てきます。

人間界で生活するために時折していたバイトの中で学校の清掃があって、何度か色々な学校に訪れたことがあるから何となく学校の雰囲気とかは分かっているつもりだ。

だけど、この妖魔学園は人間界の学校とは訳が違った。

「国立大学かよここは!?」

食堂は数百人は入れる大きさだし、武術部で使う道場は大きな大会で行われるような大きなアリーナだし、何よりも驚いたのは……。

「これ、国立図書館……!?」

「ううん。普通の図書館」

案内された図書館は妖魔学園の地下にあるのだが、その面積の広さや膨大な書物の数が半端がなかった。

昔行ったアメリカやヨーロッパの国立図書館並のレベルだった。

これが学校の図書館ってどういうことだ?

「妖魔学園の妖怪が書いた本や、他国の本がたくさんあるよ。天音を召喚した時に書いた魔法陣もここの図書館から借りた本に書いてあったんだよ」

「マジですか……?ちなみにどんな本?」

「えっと……確か『人間でも分かる西洋魔術初級編』だったかな?」

「その初心者用の本で人間を召喚したのね……」

そんな初級編の本に書かれた魔法陣で人間の俺を召喚してしまうなんて……本当に世の中何が起こるかわからないものだな。

「本当に何が起こるかわからないからこそ、世界は面白いものですよ」

俺の心の声に同意するように現れたのは落ち着いているけどどこか不思議な雰囲気を持ち、額に何かの印が描かれた額当てをした青年だった。

「あっ、けいちゃん!」

「けいちゃん?」

「始めまして、星宮天音君。僕は佐鳥慧乃助と申します。ここで司書長を務めています」

「この図書館の司書長……?ところであなたは何の妖怪ですか?」

見た目は人間にしか見えないので失礼だけどこうして何の妖怪か聞くしかなかった。

「僕はさとり。心を読む妖怪ですよ」

「さとり……!?」

さとりって、あのどんな人間の心も読んでしまう強力な妖怪じゃないか。

「ああ、ご心配なく。君の全ての心を読んでませんよ。今は『眼』を封印していますから」

慧乃助さんは額当てをコンコンと指で叩きながらそう言う。

「眼を封印……?」

「けいちゃんはね、額に第三の眼を持っていて、それで相手の心を読めるの」

「僕は……いや、僕以外のさとりたちは心を読めることで苦しんでいた。他人の善意も悪意も全て読めてしまうからね」

「そこでお母さんがさとりの力を封印する額当てを作って、それでけいちゃんの第三の眼を封印しているの」

さとりの第三の眼を封じる額当て……千聖さんはそんなことも出来るのか、凄いな。

「ですが、僕のさとりの力が強すぎるために完璧に第三の眼を封印することは出来ず、他人のちょっとした心の声だけは聞こえてしまうのですが、千歳のお母さんには本当にお世話になりました」

「いえいえ。とんでもないですよ」

まるで幼馴染みのように千歳は慧乃助さんを慕っている。

微笑ましいと思えるのだけど……何か心がもやもやするものがあった。

「……では僕は司書の仕事があるので失礼します」

「うん、頑張ってね、けいちゃん。天音、次行こう!」

そう言うと千歳は元気よく図書館の出口へ向かった。

「では天音君、図書館にはいつでも来てくださいね」

「は、はい……」

「それから……」

慧乃助さんは俺に近づいてそっと耳元で囁いた。

「千歳の事をよろしくお願いしますね」

「え?」

「千歳は……君をこの世界に呼んでしまったことに責任を感じていると同時に……君の事を異性として、気に入っているみたいです」

「え……?」

千歳が俺の事を……?

少なくとも千歳が俺を異性としてみてくれている事に心臓が強く鼓動する。

「だから、守ってあげてくださいね。君にはその力がある……夜空に輝く数多の星の如き『龍星』の力を宿す君ならね」

「……流石はさとりですね。では、また……」

さとりである慧乃助さんに俺の『力』を見破られ、少し警戒しながら千歳の元へ走った。



千歳の案内でだいたいの学園の施設を案内してもらうと、今度は学園の外にある千歳のお気に入りの場所に案内してもらうことになった。

しかし、そこは学園から少し遠い場所らしいので何かの手段を使うのかと考えると……。

「天音、私の背中に乗って」

「は?」

「変化!妖狐モード!」

千歳の体が煙に包まれるとセーラー服姿の美少女から大きな狐の姿に変化した。

しかもただの狐ではなく九本の尻尾を持つ大きな狐……これこそ人間が持つ九尾の妖狐のイメージ通りの姿だった。

「えっと……乗って良いのか?」

「良いの良いの。今から行くところはここから結構遠いから飛んでいくのが一番なのよ」

「飛べるの!?」

「もう、良いから早く乗りなさい!」

「えっ!?ちょっ!?」

千歳は長い尻尾を使って俺の体を掴み、背中に乗せる。

初めて動物(?)に乗ったけど、九尾の妖狐の千歳の座り心地と触り心地は最高で、俺を支えるために巻きついた尻尾のモフモフ感は最早言葉に出来ないほどの柔らかさだった。

「それじゃあ、行くよ」

「お、お願いします」

俺を乗せた千歳は走り出すと、そのまま空中に足場が出来たかのように宙を駆け抜けて空高く走る。

「すっげぇ……空を走ってる……風が気持ち良い……」

まさか数日前まで空を走る事になるとは夢にも思わなかった。

流石は異世界……人間界の常識は最早通用しないな。

「気に入った?」

「ああ。人間界だと、空を飛べる術はみんな機械とかだからな」

「機械か……一応この世界にもあるけど、人間界はどんなのがあるの?」

「そうだな……携帯端末やパソコンが十年たらずで広まって日々進化して、最近だとロボットが作られているな」

「ロボット?」

「ああ。まだ実用化されてない研究段階だけど、完成すれば人々の役に立てるんだ」

「ふーん……でも、科学が発展するとますます異形の存在が消えていくね」

「そうだな……」

科学と異形は真逆の存在だ。

大昔は異形……神や悪魔、魔法や呪術などが信じられていて、伝染病や自然災害はみんな異形の所為だと言われ、罪も無い多くの人が命を失った。

今では科学の発展で解明されてきたので伝染病や自然災害のメカニズムが理解されているので、逆に今度は異形の存在が疑われて徐々に人々の心から離れてしまっている。

そんな科学の発展がこの世界……エレメンティアを生み出すきっかけになったのだろう。

「でも、俺は摩訶不思議なこの世界が好きだな。人間の常識が通用しないからな」

「そうなんだ。そう言う答えをする天音も結構摩訶不思議だよ?」

「そうか?」

「そうだよ。あっ、見えてきた!」

千歳の目的地が近付くとそこは深い森で、その中に大きくそび立つ巨大な大樹があった。

「あれは……?」

「妖霊樹。何千年もの時を生きた妖力を秘めた大樹だよ」

「妖霊樹……」

デカイ……人間界にも樹齢千年とかそれぐらいの大きな木は幾つかあるけど、この妖霊樹はそれよりもさらに倍以上も大きな大樹だった。

妖霊樹の近くに降りて見上げるように見るとその大きさに圧倒されてしまう。

「本当にデカイな……」

「妖霊樹は妖魔国の象徴として祀られていて、妖霊大帝様が眠っているって言われているの」

「妖霊大帝?」

「妖魔国の神様って言われていて、日本神話の神々と互角に渡り合える神力の持ち主なんだって」

「日本神話の神々と互角か……」

千歳の話を聞き、凄いなと思いながら妖霊樹に近づき、幹に触れようとしたその時。







『力を……お貸しください』







透き通るような綺麗な声が響き、俺と千歳はとっさに振り向いた。

そして……振り向いた先には妖怪じゃない別の異形がそこにいた。

「ユニコーン……!?」

それは人間界でも有名な異形、額に鋭い円錐のような大きな角を持ち、青空のように綺麗な毛皮を持つ馬……ユニコーンだった。




まずはユニコーンです。

やっぱりユニコーンは魅力的で外せませんでした。

次回もまた新しい異形が出ますのでよろしくお願いします!

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