青い鳥
電車を二本見送って、次の電車に乗り込むか悩んでいた。
視界がさっきからぼやけてにじむ。このままホームに座り込んでしまいそうだ。座り込んで蹲って、小さく小さくなって見えなくなってしまいそうだと思った。本当だ。それで僕はそれが怖くって、小さなプライドがそれを許さなくて、一応何とか突っ立っている。
蹲った僕をひとはいぶかしんで見つめるだろうな。でもそのうちひとは僕のことなんか視界に入らなくなってしまうだろう。そうして僕は雑踏の中で透明になるんだ。透明って言ったてそんなきれいに見えなくなるんじゃなくて、ゴミ屑みたいに時々に足にぶつかって、「あ、ごみだ」って気づかれる。
そんなこと考えてる僕ってどうなの?さっきからこの考えがループしていて電車に乗れなかった。
「間もなく3番ホームに電車が参ります。黄色い線までお下がりください。」
駅員のつぶれた声が僕の耳にかすかに入ってきた。次こそ乗らなきゃ。学校に遅れちゃう。
「お客さん危ないから下がって。」
今度は駅員のちょっと怒った声が聞こえる。
その時だった。
世界が大きく揺れた。視界がおかしな方を向く。向のホームのひと。屋根。空。どんよりした曇り空に鳥が一羽。
僕は線路に吸い込まれていった。