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隣の家の魔法使い  作者: 彩
9/11


「あ、黒猫だ!」


満月から目をそらし、歩こうとした先の街灯の下に、黒猫がいた。

黒猫の目はこちらを見つめていた。


「かわいいー!」


そう言って近寄ると、黒猫は逃げずに、フイッと顔をそむけゆったりと歩き始めた。

この黒猫、なぜかデジャブ感があるな・・・。


「一緒に帰ってるみたい」


黒猫は私たちの歩調に合わせて進んで行ってるように思える。


角を曲がると、見慣れたいつもの家並みが見えた。隣の洋館を過ぎれば私の家。その向かいが桐の家だ。


黒猫は洋館の塀に軽やかに飛び移った。


「そこがオウチなの?じゃあね、黒猫ちゃん」


黒猫は静かに塀の上に座り、こちらを見つめている。

何だか睨んでいるようにも見える。

猫の表情などわからないけれど、なぜかさげすまれているように感じる・・・

いつか見た憎らしい少年の表情と重なる・・・

誰・・・?

あの少年、名前は・・・・・



「ルー?」



言葉が先に出た。


するすると、頭の中での記憶が呼び起される。


この洋館は、毎日見ていたはずなのに、すっかり忘れていた。

まるで誰かが私の頭の中の記憶を消したかのように・・・。


美しすぎる魔法使い、呪いにかけられた、そう、呪い・・・。


そこで私は部屋の中に置いている、あの鍵を思い出した。


――――リズが呼んでいる。


私は桐の存在を忘れて、自分の家に駆けこんだ。


階段を上り、部屋に入り、どこだっけ・・・



「そのタンスの中だ」




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