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その時、私の頭の中には白雪姫に出てくるような悪い魔女のイメージが浮かんだ。
目の前の魔法使いはあの魔女のように私を殺そうとしているのだろうか。
再び瞳が潤んでくる・・・。
「師よ、全く人が悪い。先ほどの言葉、そっくりそのまま返しますよ。」
ルーと呼ばれた少年が呆れ顔で目の前の魔法使いに告げた。
呆然とその少年を見つめていると、不意に魔法使いが笑い出した。
「ハハハッ、人が悪いとは心外な。私はただこの純粋そうな娘の泣き顔が見たいと思っただけだ。」
「それを人が悪いと言うのです、師よ」
私は二人のやりとりを呆然と見ていた。
つまり殺される心配はないのだろうか。
「すまないね、お嬢さん。君が愛らしくて、ついつい悪ふざけが過ぎた。許してくれるかい?」
悪ふざけだったのか、と安堵したとともに、この美形に愛らしいと言われたことに照れて真っ赤になった。
「あーあ、師の冗談を真に受けちゃって。」
ルーと言う少年が魔法使いから私を引き離した。
この少年は性格が悪いらしい。
「いやいや、それにしても本当の子供と会ったのは久しぶりだな。」
魔法使いは感慨深げにそう言った。
「そうですね。ただのガキみたいだ。」
ルーが答える。全く攻撃的だ。
「お嬢さん、名前をうかがっても?」
知らない人に名前を教えちゃいけない。学校で教わった教訓が頭をよぎった。
私は口をつぐんでいたつもりだったが・・・
「マリ・・・」
口が勝手に動いた!!とっさに口を押える。
「こら、ルー、魔法を使うな。」
今のはルーが私に魔法をかけて言わせていたようだ。
「この小娘に黙秘権などないのですよ。」
ルーがふんっとそっぽを向く。
「まったく・・・」
魔法使いは呆れながらイスに座り、私をその膝へと導いた。
魔法使いと膝の上で向き合うカッコになった。
ち、近い近い・・・!!
間近で見る完璧な美しさにドキドキする。




