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ハッと後ろを振り向くと、桐が立っていた。
「桐・・・?」
「ほら、開けてみろ」
言われるがままに、桐が指差すタンスの引き出しを開けた。
「!!」
鍵は、しまっていたはずの箱から出て、白い光を放っていた。
そして、フワリと宙に浮き、私の手の中に納まった。
次の瞬間、私の目の前にはリズがいた。
「リ、リズ・・・!?」
あの日から、何の変化もないリズが目の前にいた。
というか、目の前すぎる・・・!
顔が、顔が近い!リズの美しい目が私の目をじっと見つめている。
しかも、リズの腕が離さないとばかりに私の首に回っている。
これは、ドラマとかでよく見る、キ、キス5秒前な感じ・・・!?
「ちょっ、無理無理!」
勢いよく腕を突き出すと、案外簡単にリズの身体は離れた。
ちょっと残念・・・なわけがないだろう、私!!
あたりを見回せば、いつの間にか私は洋館の中の一度訪れた書斎の中にいた。
「マリ、ずっと待っていたぞ。」
かつて一度聞いた、リズの美しい声が私の名前を呼んだ。
「リ、リズ・・・」
顔が火照っているのを感じる。
再会をあの日確信した。けれども、本当にこの日が来るとは思っていなかった。
リズは本当にちっとも変わっていない。
魔法使いは老けないのだろうか。
まるであの日のまま、私だけが年を取ってしまったかのようだ。
「あの日から、ずっとマリを恋焦がれていた。毎日マリのことを見ていた。」
見られていたの!?恥ずかしすぎる・・・。本当ならドン引きのセリフでも、リズが言うと恥じらいしか生まれない。
「マリ、あの日の約束通り、来てくれるかい?」
「・・・約束?」
「そう、あの日した約束、忘れてしまった?」
約束なんて覚えていない。呪いの話を聞く前の時点で、私の記憶は止まっている。
私がしどろもどろしていると、徐々にリズの顔が悲しみに歪む。
ちょっ、なんかわからないけど、約束してたのか、私!?
すごい悲しい顔してるよ、こんな美人を悲しませるなんて、大罪にも程があるんじゃない!?地獄行き決定だよ・・・!!
「あ、思い出した思い出した!行くんだよね、行く行く!」
気づけば、情けないことに、私は嘘をついていた。
しょうがない、美しい人の悲しみの表情に勝てる私ではない・・・!
そう言うとリズは、とてもうれしそうに微笑んだ。
思わず鼻血が出そうな程、これまた綺麗な笑みで!!
「では、早速行こうか。私の母国へ。」
はい????
マリは詐欺に合いやすいタイプのようです(笑)




