プロローグ2
そのあと彼女にいろいろ説明してもらった。
この世界は異世界らしい…
突然で申し訳ないがそうとしか思えないのだ
だって聞くもの全てが知らないんだぜ?
俺は生きるために人よりたくさんの知識を得てきたつもりだ
そうでなければ独りでここまで生きて来れまい
その知識に一つも引っかからないのでは異世界ではないかと言うわけだ
それに冷静に考えたら猫耳美少女なんているわけ無いじゃないか!
そんなのはアニメかゲームの話だよ!
やっぱり異世界だ!うん!
なんて事を考える俺
そして、今俺は夜中と言う事もあって焚き火をしている
猫耳少女のニーナは今馬車の中で寝ているはずだ
それはもうすやすや寝ている
馬車の外で不寝の番をしている俺にも
「もぅ食べられないですにゃ~」
と寝言が聞こえてくる
「まったく…捕まりそうになっていたのにのんきだな」
と俺は苦笑した
苦笑と言っても俺は殆ど笑えないので笑えているかは分からないが
そう言えばニーナを連れ去ろうとしていた男たちは縛ってその辺の木に吊している
「許してくれー!」
とか聞こえてくるが猫耳を害しようとしたのだ降ろす気はさらさらない
俺は手ごろの石を盗賊達に投げつける
ダンッ!ドンッ!バン!とやはり凄まじい音を立てながら石は股間にストライク
白目で気絶する盗賊を尻目に俺は焚き火に薪を足した
パチンとパチンと薪がはじける音を聞きながら俺はこれからの事を考える
とりあえずニーナを村に届けようかなとか猫耳触り損ねたな等考えていると
魔剣使いwのオッズが持っていた大剣が目に入った
刃渡り一メートル三十センチ以上で柄を合わせると一メートル七十センチに届かんばかりだ
黒い刀身は真っ直ぐで鈍く光る銀色の波紋がその切れ味を物語る
鍔はなく細身の刀身は俺に日本刀を連想させた
柄には黒と赤を編み込んだ強化繊維のような物で巻かれていて万が一にもその剣がすっぽ抜けることはない
「流石魔剣wと呼ばれるだけはあるな、コイツはかなりの業物だ」
そう言って感嘆の声を上げながら立ち上がり魔剣wに近づく
すると
「あれ?この刀、もしかして…いや、でも色が…」
不思議に思いながらも刀に触れた瞬間
ピカーッ!と周りが光りに包まれた
…稚拙で申し訳ないが俺は驚き過ぎてそう言うしか出来なかったのだ
なんせ目の前には見た目一五才程度で漆黒の腰まで届く長い髪をなびかせ
キツくつり上がった瞳は見るもの全てを畏怖させる赤い宝石のようだ
しかし、つり上がった目が駄目と言うわけでは無く
むしろ、彼女の整然とした佇まいに似合ってさえいた
服装は黒いワイシャツで更にその上に同色のパーカー
下は瞳と同じ赤いミニスカート
足元は黒いハイニーソックスに黒いスニーカーだ
そして、その真っ黒少女はジロジロ見られて嫌気が差したのか俺に言ってきた
「はぁーあんまりジロジロ見ないでよね体に穴が開いちゃうわよマスター」
「すまんすまんいきなり人間形態になるからってえぇっ!」
何で!俺の相棒が!
あれって俺が昔連れ添った相棒じゃないか
そう、俺は昔戦場にいた時期があった
その時に一緒に戦った相棒がコイツだ
話せば長くなるが、俺はコイツを助け俺もコイツに救われた正に相棒と言っても過言ではない
ちなみにコイツの淹れたコーヒーが異常に美味かった
だがある日突然コイツは居なくなったのだ
俺はベッドの下や冷蔵庫の中を調べたが遂に見つからなかったのだ
数少ない友人にも全て聞いたしかし、遂に俺の所には戻らなかった
そして、相棒の消失を機に俺は戦場を去ったのだ
ていうかコイツは元々真っ白ではなかったか?
汚れたのか?そう、契約してから戦場に居たときもコイツは光るような白い髪をしていた
それをコイツに聞くと
「ウチにも分からないわよ!いきなり朝マスターを起こそうと思ったらウチだけ刀のまま道端に放り出されてね!しかも、形態変化出来ないから喋れないしだから、今まで言いように使われてきたのよ!もう本当に最悪だったわ!」
色はだんだんこうなったのよ!
と昔は白だったが今もこれはこれで美しい漆黒の髪をかきあげながら言った
確かコイツは怒ると髪をかきあげる癖があったなと思いながら、俺はなだめるためにとりあえず当時は真っ白だった髪の毛について言ってみる
「まぁ黒い髪の方が強そうで格好いいと思うぞ」
俺が言うと彼女は腰に手を当てプイッとすっぽを向いて
「マ、マスターが言うならこのままでも良いかもしれないわね」
と言うその顔はわずかに赤い
俺ははぁーと内心安心しながら聞いてみた
「でも、良かった
この異世界で知り合いが全くいないと思ったらまたお前に会えたよ。」
腕を組ながら自分では笑っているつもりで問いかける
自分では気付かなかったがいきなり異世界らしい所に飛ばされて不安が募っていたようだ
ぶっちゃけかなり安心している
「そうね!ウチは全然心細く無かったけどマスターが会いに来てくれてウチはほんのチョッピリ喜んで上げても良いわ!」
別に会いに来たわけでは無いのだが、それを言ったら面倒くさいのは目に見えてるので言わない
「てか、お前じゃなくてアイリスよ!マスターが付けた名前なんだからしっかり呼びなさいよね!」
髪をかきあげながらアイリスが言ってきたので名前で呼ぶ事にする
べ、別に名前を忘れてた訳じゃ無いんだからね!
……止めよう自分でやってバカみたいだ
本当に忘れてた訳じゃないぞ!本当だ
そして、俺は異界の夜空の下
刀少女であるアイリスと奇跡の再会を果たしたのだ