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混ぜるな危険、混ぜると混沌

皆様お待たせしました。

第7話をお送りいたします。

残念ながら今回はポロリは有りません。

ですが、カオス分は多めです。


皆様の暇つぶし程度に楽しめれば幸いです


それでは本編、スタートです!


陽菜とクレアの二人が妖魔から上手くやり過ごせた同時刻、妖牛車の牛丼丸で現場に到着した颯と晶彦は目の当たりにした光景に思わず絶句してしまう。

大破した車やガラスが割れてしまった店舗。抉れ穴の空いた道路には火の手が上がり、辺り一面に鉄が焦げた臭いが立ち込める。

更に夥しい血溜まりがそこら中に点在している。


「………」


「………」


二人は生存者が居ないか辺りを見回しながら慎重に進んでいく。

すると、物陰に何かが動いた気配が生じ颯が駆け寄ろうとするが、晶彦がそれを阻む。

颯が抗議しようとした正にその時、物陰から禍々しい姿の異形が躍り出る。


姿形は人のそれに近いが四本の腕に蝙蝠の様な大きな紫の翼。

皮膚には沢山の六角形の鉱石の鱗が埋め込まれ手足の先には鋭い爪、血の様に真っ赤な目に鋭い牙がズラリと並んだ口。

そんな禍々しく仰々しい異形が後から後から湧いてくる。


「救助云々の前に先ずはこの妖魔を倒さないといけないみたいだね」


「あれを、全部?」


「心配しなくても大丈夫だよ。これぐらいなら僕一人…いや、僕と影光で充分さ!」


大見得切った晶彦は、首から下げていた白い勾玉を手に取る。

そんな晶彦に晶彦が先程妖魔と呼んだ二体の異形が唸り声を上げながら襲いかかって来る。


「影光!起動!」


異形に向かって走りながら晶彦が叫ぶと白い勾玉は眩い光を放ち、瞬く間に一振りの薙刀へと変る。

薙刀へと変った影光を手にした晶彦は更に一歩強く踏み込み異形との間合いを一気に詰め、擦れ違いざまに二回づつ妖魔を斬り伏せて行く。


颯の眼には晶彦が一度しか薙刀を振らなかったようにしか見えなかったが妖魔の体に付けられた二筋の斬り傷が晶彦の攻撃回数を正確に物語っていた。

晶彦に斬り伏せられた二体の妖魔は、独りでに青白い炎を上げ塵と為って消えて逝った。


「さぁさぁさぁ!死にたい奴からかかってきなよ!!」


そんな晶彦の挑発めいた台詞に妖魔達は怒りに打ち震え、雄叫びを上げて次々に襲いかかって来る。

そんな妖魔達を晶彦は影光と全身を使って次から次へと倒していく。

その光景を見ている颯の眼にはアクション映画のワンシーンに見えていた。


「はぁぁ!」


薙刀で妖魔の一体を斬り伏せ、そのまま振り向き背後の一体を斬り伏せる。

右からきた二体の妖魔の攻撃を薙刀で捌き、体勢が崩れた処へ蹴りを放ち、薙刀の突きで止めを刺す。

そんなこんなであっと言う間に30体ほど倒したのだが、減るどころか後から後から湧いてくる妖魔。

すると、晶彦は薙刀に霊力を注ぎ込んでいく。影光の矛先にバチバチとスパークが発生し段々その強さが大きくなっていく。


「必殺!雷鳴烈破斬(らいめいれっぱざん)!!」


晶彦は振り被った影光を勢い良く振り下ろすと雷の刃が何重にも重なりながら放たれる。

眩い閃光と落雷と同じ爆音を轟かせながら放たれたそれは迫り来る妖魔に牙を剥き、妖魔達を一掃して行く。


「ふぅ~。あらかた片付いたかな?」


「もうどっちが化け物か分からんな……」


妖魔を一掃した晶彦が薙刀を肩に担いで息を吐く。そんな晶彦に対し颯は顔を引き攣らせながら苦笑いを浮かべていた。

数十体の妖魔を僅か数分で一掃して見せた晶彦。

妖魔が弱かったのか?それとも単純に晶彦が強かったのか?

繁華街の現状を見るに間違い無く後者である。自分より年下の少年が一体どれ程の努力を重ねこれ程の力を得たのか。そんな事を思った颯だが、今やるべき事は友人を、惹いては逃げ遅れた人達を助ける事が先決だ。


「少し、急いだ方が良いかもしれない」


「どう言う事?」


「これだけの事があってしかもあんな妖魔までうろついて居るのに、悲鳴の一つも聞こえないのはおかし過ぎる。」


「何処かに隠れてるとかとちゃうん?」


「さっきの騒ぎで“何も反応が無いんだよ”。少なくてもこの付近には…。とにかく、もう少し先に行ってみよう!」


晶彦の後に続き颯も駆けだしていく。

走りながら颯は心の中で友人二人の無事を祈り続けていた。

けれども、一秒毎に颯の中で不安がどんどん大きくなっていく。


「ところで、お姉ちゃんの友達には連絡は付かないの?」


「それが、さっき掛けようとしたんやけどなんでか知らんけど圏外になっとってん」


晶彦の問いに颯が答えていると不意に二人の携帯の着信音が鳴る。

二人は揃って携帯を取り出すと、颯は喜びと驚きが混じった表情を浮かべ携帯に出た。


「もしもし陽菜ちゃん!?今何処におんねん!」


『やった!やったよクレアちゃん!電話繋がったよぉ!』


「クレアちゃんもおるん!?二人とも今何処におるん?!」


『私達今、ムーンライトビルに居るんだけど…』


『信じられないかもしれないけど、街に化け物が出て来て、突然暴れ出したのよ!私達の他にも何人か此処に逃げ込んでるみたいなんだけど――』


「うん、わかっとる。二人ともそこを動かんでて。直ぐにそっち向かうから!」


『だっダメだよ颯ちゃん!こっちにも化け物がウロウロしてて危ないよ!』


「大丈夫や。今救助の人と一緒におるから、だから心配せんでも平気や。だから二人とも、化けもんに見つからない様に隠れてまっとって」


『わ、わかった。颯ちゃんも気を付けてね!』


「うん、それじゃぁ一旦切るけど二人とも気を付けてな!」


そう言って颯は通信を一度切り安堵の息をもらす。二人の無事が分かった事で少なからず彼女の不安は和らいだ事だろう。

一方晶彦の方は兄隆浩からの通信だったらしく、未だ話してる最中の様だ。


『もしもし晶彦か?あぁ良かったやっと繋がったぜ』


「もしもし兄ちゃん、街は予想以上に深刻な状況だよ」


『その様だな、今おいら達もお前等のとこから南南西に20キロ程離れた所についたんだが、こっちは死体の山に血の海。地獄絵図とは良く言ったもんだ』


「こっちは死体どころか生存者すらいないんだけど?」


「その事なんやけどちょっとええ?」


『おぅ、えっと龍ヶ峰つったっけ?なんだ?』


「今うちの方に陽菜ちゃ、友達から連絡があってな、今他の人達と一緒にムーンライトビルに居るみたいなんや」


『ほほぉ、ムーンライトビルに…分かったお前達の現在位置からの最短ルートをっと…よし、送るぞ』


隆浩は、陰陽寮にいるとある人物特製の端末を操作しながら晶彦の携帯のGPSを元にムーンライトビルまでの最短ルートを算出し晶彦へと送る。


「はいはーい。確かにルートデータ届いたよぉ」


『あくまで最短ルートを出しただけで、それが安全かまでは分からん。一応青龍たちをそちらに向かわせているが二人とも気をつけてな。特にあの女、えぇっと…龍ヶ峰には、無茶はしても無理はするなと伝えといてくれ』


「うん、兄ちゃんたちも気をつけてね」


『おう、それじゃまた後でな!』


そのような会話の後に通信を切った晶彦は、別の端末を取り出す。

近未来的な作りのその端末はペンの様に細い形をしているのだが真ん中の摘みを引っ張ると、ディスプレイに為っておりそのディスプレイに隆浩から送らた地図と現在位置から目的地までの最短ルートが3Dで写しだされていた。


「……一つ聞いてえぇ?最近の陰陽師ってこんなハイテクなん?」


「え?利用できる物は何でも利用するのが陰陽師だよ?」


「あ、そうなん…」


何処か納得出来なかったが颯はそれ以上何も言わず晶彦と共に地図を頼りに陽菜とクレアが居ると言うムーンライトビルに向かうのであった。


  ◆  ◆  ◆


ところ変わって晶彦達の所から南南西に20キロ程離れた地点では、隆浩と夏美も数十体の妖魔達に囲まれていた。


「はぁぁ!!」


気合と共に振り下ろされた日本刀によって一体の妖魔の体は真っ二つに裂け背後から来たもう一体を、振り向き様に斬り伏せる夏美。

もうかれこれ三十は叩き斬った筈だが、後から後から湧いてくるため数は減るどころか寧ろ増えている位である。

流石に少々息の上がった夏美を余所に、隆浩は妖魔達の攻撃をひらりひらりとかわしながら夏美の携帯で電話をしていた。


「おう、それじゃぁ気を付けてな…うん、うん、わかってるっておいらを誰だと思ってるんだ?そうそう分かれば良いんだよ……でさぁ、その近くに美味しいケーキやが有るんだけど…そうそう多分それだと思う。うん、うん、それで帰りにケーキを買っといて欲しいんだ。あ、イチゴのタルトか若しくはショートケーキな。んとそうだなぁ、数は大体―――――」


「コラぁ!隆浩君!電話もうとっくに切れてる筈でしょ!?何“まだ繋がってるふりして”サボってるのよ!!」


「あ、ばれた?」


「あ、ばれた?じゃ無いわよ!!私一人でこれ全部相手に出来る訳無いでしょ!!!」


電話が切れているにも拘らず、未だ通話しているフリをしている隆浩に夏美は妖魔を倒しながらそれを見破り叱責の声を上げる。

化け物退治を夏美一人に任せサボリに興じていた隆浩だったが電話をしながら妖魔の攻撃をかわし続ける事が出来たのはその身のこなしだけでは無く、的が小さかったのも在るだろう。

兎に角サボる為の演技がばれてしまっては仕方が無いとでも言わんばかりに隆浩は携帯を夏美に返し、妖魔の拳をひらりと紙一重で避けその腕を掴み、捻り上げながら足を払い、自分の4倍もの大きさのある妖魔の巨体を投げ飛ばす。

続けて襲いかかって来た妖魔も、その攻撃の力を利用して体勢を崩し、意図も簡単に投げ飛ばしていく。

地面に倒れ伏した妖魔の上半身を先に倒れた妖魔の下半身と絡め関節を決め、再び倒して絡め関節を決める。

そんな事を数十回繰り返し、妖魔達の体で巨大な円を作り出した。


「いや、そこは頑張ろうぜ?妖刀・白雪(しらゆき)を所有している神無月夏美さんならこれぐらいの妖魔共なんぞ軽く一捻りだろ?」


「少しは手伝いなさいよ!」


「手伝ったじゃんよ!ちゃんとこうして安倍家に代々伝わる体術の“無限関節地獄車(むげんかんせつじごくぐるま)”で動きを封じてやっただろ?何を隠そうこの技の利点は、掛けられた者の互いの体重で締まっている御蔭で動けば動く程きつく締まっていき、一度掛けると外部からしか解く事が出来ないと言う――――」


「……何で一々そんな手の込んだ技をチョイスするの?……」


「だって術を使うと霊力消耗するし、お前みたいに戦うと体力消耗するし、今日はそんなに銃火器持って来てないし…」


「もう少し頑張ろうね隆浩君」


「わぁ~お、ゴメンゴメン悪かったから。全く、素適な笑顔で首筋に刃物を向けるなんて、一真(ナマケモノ)と言いお前と言い何でおいらの周りの奴らは急所を的確に狙うんだ?」


つらつらと戯れ言を並べた立てる隆浩に眉間に青筋を浮かべながら笑顔で首筋に白雪の刃を当てる夏美にこれ以上は流石に身の危険を感じたのか両手を上げ降参のポーズをとりながら隆浩は夏美を宥めに掛かる。

どんな時でも人をおちょくる事を止めない隆浩に夏美はやれやれと深い溜息を吐く。


勾陳(こうちん)騰蛇(とうだ)、白虎、太裳(たいじょう)天后(てんこう)天一(てんいつ)玄武(げんぶ)太陰(たいいん)


夏美から解放された隆浩は勾陳を始めとした十二神将を呼び出す。

筋骨隆々の逞しい巨躯の大男の白虎。。肩甲骨まで伸びた深緑色の長髪に眼鏡を掛けた知的な外見の青年、太裳。

水色のチャイナドレス風の衣装に鎧姿の白銀の美女の天后。天女の如き出で立ちと美貌をもつ金髪美女の天一。

晶彦と同年くらいの外見の黒髪の少年、玄武。玄武と同じ子供姿で桃色の髪を左右で輪の様に結んだ女の子太陰。

そして、深紅の短髪に隻角(せきかく)が特徴の長身の青年、十二神将最強にして最凶の神将、騰蛇。

以上、十二神将の内、八人がズラリと勢揃いした。


「騰蛇と勾陳、白虎の三人は、おいらと一緒に来い。他は生存者探索と救助に向かってくれ。もし、こんな妖魔とかが現れたら、容赦無く始末しろ!」


『御意!!』


神将達に指示を出すと、騰蛇、勾陳、白虎以外の神将達はすぅーっと姿を消し、霊態と為って四方へと気配が遠のいていく。


そんなやり取りを夏美は先程よりも少し離れた場所で眺めていた。

と言うのも、夏美は騰蛇が怖いからである。夏美だけでなく、陰陽寮の殆んどの者を始め、同じ十二神将である太陰すら半径6メートル以内には絶対に近寄らない程で、極一部の人間を除いて皆が騰蛇を畏れ、恐怖するのだ。

別に騰蛇が悪い訳では無く、只単純に十二神将騰蛇と言う存在を認識した時、本能的に恐怖を感じてしまう程の存在感を騰蛇が持ち合わせているだけなので、これはもうどうしようもない事なのだ。


なので夏美の態度に騰蛇は気にする素振りは無く只、自然体の姿勢で、だが周りに警戒をしつつ隆浩の指示を待っている。


「しかし隆浩、お前この妖魔共はどうするつもりだ?」


「心配しなくても大丈夫だよ勾陳。ちゃんと“有効利用”するって」


「はぁ~…まったくお前と言う奴は…」


「そう言うなよ白虎。敵の戦力が分からない以上、仕方無いだろ?」


そんな事を言いながら、隆浩は未だ自分達の体で雁字搦めに為って悶え苦しんでいる妖魔共に近付き頭の所にしゃがみこむ。

隆浩が背中を向けている為、夏美からは何をしているのかは全く分からず、顔も見えないが声音から恐らく悪役顔負けの君の悪い笑みを浮かべている事は容易に想像が出来た。


「お前達には、色々とやって貰いたい事があるからな。フッフッフッフッフッフ………」


隆浩がそう口にすると、隆浩の瞳に逆五芒星が浮かび、淡く、そして不気味に光りだす。

そんな隆浩の目をそむける事が出来ない妖魔の目から段々と光が消えていく。

果たして、妖魔達はどうなるのか………。


一応言っておきますが、隆浩は悪役ではありません。


  ◆  ◆  ◆


「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」


隆浩との通信を終えてから既に三十分程経とうとしている頃、颯は汗を大量に掻きながら大きく肩で息をし呼吸を整えていた。


そんな颯をよそに晶彦は薙刀の影光を振い、合流した朱雀、清流、六合と共に妖魔達を次々に蹴散らしていく。

颯も一応十体程は、昨日拾ったガングニールを起動させ、光弾と直射砲撃で撃退できたのだが、未だ戦いに不慣れな颯は早くもヘバッテいる状態である。


大紅蓮閃(だいぐれんせん)!」


自身の倍は有ろうと言う大剣を朱雀は軽々と振り回し、刀身に炎を纏わせる。

怒号と共に横薙ぎに振り払うと炎が弧を描きながら飛んで行く。

さながら業火の刃と形容するに相応しいそれは、妖魔達の胴を一刀両断し、切断された妖魔達は瞬く間に炎に包まれ灰塵に帰す。


竜巻旋風斬(たつまきせんぷうざん)!!」


一方清流は三日月を模った様な大鎌を高速で振り回し巨大な竜巻を発生させる。

妖魔達は風に煽られ竜巻に引き寄せられ宙を舞う。中を待った妖魔達はまるで龍が鋭い爪と牙で引き裂いていくように次々にその身をズタズタに切り刻んでいく。


「…………」


六合は無言で白銀の長槍を振い妖魔達を坦々と始末する。

だが余りにも数が多い為、どうしても取りこぼしが出てしまう。

晶彦達の攻撃を免れた妖魔は疲弊している颯へと襲いかかる。

颯は咄嗟に十字槍の矛先を異形へと向ける。

すると、矛先に白い光球が現れ、弾丸と為って異形の額に炸裂する。


「グギャァゴロロォ!」


奇声を上げ顔を抑え悶える妖魔の背後から六合が銀槍を一突き。

妖魔の心臓を見事に穿ち、その命を刈り取る。

絶命した妖魔を突き刺したまま六合は銀槍を横薙ぎに振うと遠心力で槍から妖魔が抜け、別の妖魔に向かって飛んで行く。

三体の妖魔がそれに巻き込まれ倒れ伏した所へ朱雀の放った炎が止めを刺す。


「……大丈夫、か?」


「は、はい!なんとか…あぅ!」


「無理は、するな……出来る事を、しろ」


六合は足元がふらついている颯に手を貸し励ます。

十二神将の中で最も寡黙で口数は少ないがとても心優しき神将だ。


「六合!そんな小娘捨て置け!足手まといにしか為らん!」


「そう言いなさんなって青龍。友達を助けたいって言ってるんさぁ。少しは手を貸してやっても良いさァ」


「心意気は認めるが、それだけではどうにもならん!!全く、あの戯けは―――――!!」


隆浩に面倒事を押しつけられ怒り心頭の青龍。

昨晩3時間程怒鳴り散らして説教をしたにも拘らず目を覚ます丁度その時に繁華街襲撃の知らせを受けた隆浩は青龍達に「よろしく」とたった一言で、たった一言で有無を言わさずに反論も許さずに此処へ送りこまれたのだ。

なので青龍は、半分と言うか九割方は八当たりで妖魔達を滅殺しているのだ。


「あの戯けめがぁ!帰ったら覚悟しろよぉ!」


この場に居ない隆浩の代わりに妖魔達に怒りをぶつける青龍に颯は若干恐怖すら感じていた。


「なぁ、六合。あの譲ちゃんだがアイツ只者じゃねぇさぁ」


「…………気付いたか?」


「あぁ、“妖魔共の攻撃を全部紙一重で避けて反撃してる”。更に“さっきみたいに奇襲を仕掛けて来たのに対しても反応し的確に撃ってやがる”隆浩の話じゃ昨日の晩に初めて魔法を使ったらしいが、“一晩で百発百中の攻撃魔法が使えるもんなのさぁ?”」


「おそらく、あの槍がそれを可能にしている…………」


「成程、ラディんとこのセラフィムと同系統か……あとよ、オレっちの気のせいかもしれないが、アイツ戦い慣れしてないか?」


朱雀と六合の視線の先で、颯は妖魔の攻撃を紙一重で避け、十字槍で斬りつける。

だが、その攻撃は致命傷には程遠く、それで止めを刺す事は叶わない。

けれども、怯ませたり体勢を崩す事が出来るのでその隙に光弾を急所に放って行く。

そんな芸当を颯はこの短時間で身に付けているのだ。


「やはり、選ばれるだけの素質は有るみたいさぁ」


「……そうだな」


颯を気に掛けつつ朱雀と六合は妖魔達を駆逐して行くのであった。

果たして颯は無事に、目的地であるムーンライトビルに辿りつく事が出来るのか!



  ◆  ◆  ◆


「不幸だ……」


俺、神童一真は繁華街に来ています。

本当は家でゴロゴロ過ごすつもりだったんだが、突然現れた幼馴染の楠木千歳に、爽やかな笑顔で――――


「ね♪♪」


――――と言うたった一言で俺は此処に連れて来られた。否、拉致られた。

やっぱりあれだ、昨日姉さんに押しつけられた書類が原因で寝不足でツッコミや抵抗が出来なかったのがいけなかったんだと思う。

ラディのクソガキを手伝わせたけどそれでも終わったのが日付が変わった午前2時。

良し、帰ったらクソ狐を一発殴るとしよう。


さて、そんな訳で俺は今繁華街に来ていたのだが、何か妖魔の大群が降って湧きやがって街は大混乱。

そいつ等の始末をして一般人共を避難させてやった所までは良かった。


何故なら――――――。


「さっさとくたばりやがってくれます?この生ゴミにも劣る雌豚がぁ!!!」


「そっちこそさっさとくたばりなさいよ!爆裂鉈女!汚い体で悪臭漂わせながら一真に近づいてんじゃないわよ!!」


何故なら、駅でアッシュ・クリスティーに出会ってしまったのが俺の運の尽きた瞬間だった。

救護や避難誘導が終わった途端に、互いに魔武器(まぶき)を起動させ殺し合いの大喧嘩をおっぱじめやがったんだ。


「カズ君とデートしようったってそうはいかないわ!と言うか、あんたがカズ君とデートしようだなんて1万年と2千年早いわよ!!」


「あたしが一真とデートしちゃダメなら、あんたなんか一真に口を利く事が2億4千万年早いわよ!!」


「言ってくれるじゃない、この雌豚ぁ!!」


「その言葉そっくりそのまま返すわよ!!」


アッシュは大鉈で千歳は両手に付けた鉄の籠手でと具足で互いに相手を滅ぼさんと攻撃し合う。

その度に、ビルが、電柱が、道路が、ありとあらゆる物が破壊されていく。

そこへ妖魔共が現れては二人の殺し合いに巻き込まれ後片も無く消滅されていくと言うのをもう数えるのがめんどくさく為る位続けている。

まぁかれこれ20分近く殺し合いの喧嘩をしているが、決着がつくのはまだまだ掛かりそうだ。

此処から立ち去ると言う手もあるが、それをやった後のリスクを考えると…うん、帰ったらクソ狐を黒月で叩き斬ろう。

そんな事を俺が考えていると突如空に向かって稲妻が幾つも駆け上がって行くのが見えた。

あの稲妻、そしてこの霊圧は晶彦の奴か!アイツが居るって事はクソ狐も来てるって事だな。

よし、見つけて滅ふる事にしよう。

すると、二人は突然攻撃を止め、同時に携帯を取り出す。

はて?さっき携帯は圏外に為っていた筈だが?

あぁ、さっきの稲妻で磁場が安定したんだな。


「「一真!/カズ君!」」


「な、なんだ二人して」


「「今直ぐ私とムーンライトビルに行くわよ!」」


突然二人揃って俺の所に駆け寄って来たかと思えば、二人揃って同じ台詞を吐きやがった。

一体何が有ったと言うんだ?


「さっき隆浩からメールが来たんだけど」


「逃げ遅れた人達がムーンライトビルに居るらしいわ!」


「成程、二人ともちょっと携帯を見せて貰って良いか?」


俺は二人から携帯を貰い、受信メールを開く。

送り主は夏美の奴だったが本文にご丁寧に安部隆浩と名のってやがる。

まぁあいつは今携帯ぶっ壊れてるって言ってたし夏美に借りたんだろう。

そしてメールにはこう書かれていた。


『ハローか弱い子狐、安倍隆浩だ。今、繁華街で妖魔共が暴れて逃げ遅れた人達がムーンライトビルに居ると言う情報が入った。おいらと夏美も向かって居るんだが妖魔共の足止めを喰らって居てな。悪いがちょっと手伝ってくれないか?もし、手伝ってくれたら……一真のハンコをプレゼント♪』


―――よし、アイツは見つけ次第ぶっ殺す!!―――



「そう言えば、何で急に携帯が通じるようになったのかしら?」


「推測だが、何処ぞの輩がこの訳の分からん騒ぎを起し、妖魔が発する妖気で磁気嵐と同じものを生みだし、乱れた磁場で携帯などを使えなくしたんだろう。だが、晶彦の奴が放った術の影響で、その磁場が安定したからだろうぜ」


「流石私のカズ君♪どっかの雌豚と違って頭良いね♪」


「喧嘩売ってるのかしらこのゴミ女は?」


「あらぁ?私は楠木千歳なんて品の無い名前なんて言ってませんけど?やっぱり雌豚としての自覚が有ったのかしら?」


「一真ぁ、ちょっと待っててくれる?今直ぐこの生ごみを片づけるから」


「カズ君、少々待っててくれる?この雌豚を始末するから。大丈夫直ぐ終わるから♪」



またも激しく火花を散らし始める千歳とアッシュ。

こいつ等が争っている間に、クソ狐を見つけ出し俺様のハンコを取り返さねば!


「あぁ、それじゃ先行ってるからな」


そう言って俺は、踵を返しムーンライトビルに向かって走りだす。

その直後二人も追っかけて来た――――――互いに殺し合いの喧嘩をしながら、な。


俺は走る。背後から迫る危険から逃れる為に。

そして、クソ狐をこの世から消し去る為に!


やっぱり人型より軟体生物型を出すべきだったと少し後悔してますズッキーです。(待てこら


まぁそんな事はさて置き、皆様にアンケートを取ろうかと思います。

キャラ設定とかを載せようかと思って居るのですが本編に出してしまうと本編が短くなってしまうので二次創作時代にやっていたあとがきコーナー的な物を別で作成しようと思うのですが、如何でしょうか?


「そんな事してねぇでさっさと更新しろこの亀!」は1番を。


「世界観がサッパリなんじゃボケカス!説明を要求する!」と言う方は2番を。


感想及びメッセージにて3月末まで受け付けます。

皆さま何卒ご協力の方宜しくお願いいたします。


次回はもっとカオス成分を多くしポロリも出来たら入れたいと企んでいます。

それではまた次回まで、御機嫌よう。


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