はじまり
「いやー、今日もいい天気だな~」
一人の青年、才天乃絵が言った。
平成○○年、ある科学者が作った薬によって特殊能力を持つ人間が現れた。その数、およそ1万人。才天もその一人だ。今から予想もできない事がたくさん起こるだろう。
キーンコーンカーンコーン、学校のチャイムが鳴る。森山岡高校は3時間目の授業が終わり、休み時間に入っていた。
「ねえねえ、テスト何点だった?」
「私は86点だったけど」
「へ~、なかなか凄いじゃん!」
クラスのみんなが返されたテストの点数を教えあっている。
「才天、お前何点だった?」
隣の席の寺内が聞いてきた。
「97点」
「マジで、天才だな!」
「こんなのマグレだよ、マグレ!」
才天乃絵、中学の時から美術部で絵ばっかり描いていた。スポーツは得意、頭も良い、そのうえ女子にはモテモテ。でもやっぱり絵が一番好きだという。休み時間にはいつも絵を描いている。
「それよりさ~才天。テスト終わったし、明日遊ぼうぜ」
「ごめん、明日は近くの美術館が新しく開館するからそれを見に行くんだ。なんでも有名な人の絵がたくさん飾られているらしいからね。」
「そうか、それは残念。んじゃ、また今度遊ぼうぜ」
「分かった。なんかごめんな」
「気にすんなよ、また今度な」
「うん、また今度」
その日の放課後、美術室に向かい美術部の活動をした。陽がまだ沈まないうちに家に帰り明日の準備をした。その後、お風呂に入り、少し小説を読んで寝た。この生活を見ると、文化系の男にしか見えないが、一応これでもスポーツ万能なのだ。
翌朝、乃絵は6時30分に起床。そして朝ご飯のフレンチトーストをくわえて、美術館まで走った。
「やっべ、早くしないと最後の方に並ばないといけなくなるよ」
美術館は7時開館。完璧な寝坊だ。乃絵が美術館に着いたころにはたくさんの人で長蛇の列を作っていた。
「うわっ、最悪だ。くそ~、寝坊だけは小学校の時からの癖になってんのかな~」
こうして7時に美術館が開館した。この美術館の中で乃絵に災難が襲いかかる。