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目覚めた少女

「……あのー」


オペレーターの一人、エミリアがおずおずと手を上げた。


「…カプセルの文字ですが、地球のものと思われます」


「……地球?ばかな。地球はもう300年前に滅びている」


エミリアの言葉にゼルダはあり得ないと首を振る。


「『はやくおきておまえのうたをきかせてくれ』『しあわせになれよ、しおん』あとも同じようなことが別々の筆跡で書かれているようです」


エミリアはハルから送られた映像の文字を読み上げる。


「…でもこれ、日本語です。おかしいですね。日本は400年前に海に沈んだはずですけど」


エミリアは言いながら首を傾げる。


「…とにかく、今は回収が先だ。エミリア、君にはカプセルの他の文字も読んでもらうことになるだろう。すまないが格納庫に待機していてくれ」


「はい」


エミリアは返事し立ち上がると格納庫に向かうため、ブリッジを出ていく。


「…今日は拾い物が多いですね」


副官のルミエールがゼルダに声をかける。


「…ああ。難民はともかく、正体不明の少女か。暫くは監視対象になるな」


「……裸の女の子の監視か。かなりの役得ですね」


「…服は着せろ、服は」


ルミエールの冗談を軽く流し、ゼルダは手元のモニターを見る。


「地球製のカプセルだとしても見たことがないものだな」


「……マクシミリアンではないようですね」


ルミエールもモニターを覗き込んで言う。


「…しかし、仮に地球人だとしたら自由はなくなるだろうな」


ゼルダは同情するような表情をしカプセルの中の少女の顔を見る。


眠れる少女は幸せそうに見えた。


「おや、裸の美少女をそんなに凝視しないでくださいよ。娘さんに怒られますよ」


「……」


ゼルダはその言葉に大袈裟にため息をついた。


「最近は口すら聞いてくれない」


ゼルダの発言にルミエールは笑いながら肩を叩く。


「…仕方ないですよ。奥さまとは離婚なされて新しいお父様もいらっしゃるんですから」


その言葉に更にゼルダは肩を落とす。


「…貴方はまだ若いしモテるんですから、新しい彼女でも作れば」


―――ビービー


ルミエールの言葉を遮るように、非常警報が鳴り響き、一気にその場は緊張に包まれる。


冗談を言い合っていた艦長と副官はすぐに厳しい表情になり、緊急モニターに目をやる。


「前方2000フィードにマクシミリアン確認。こちらに猛スピードで向かってきています。アルテミス帰還まで500フィード、このままでは追い付かれる可能性があります」


「ハル、マクシミリアンが近付いている。加速ブーストは使えそうか?」


『このカプセルに耐久性があるかわかりません。このまま、マクシミリアンを迎撃します』


「……ハル・ジェイド、戻ってきなさい。空いてるパイロットは直ちに迎撃準備」


『俺ならだい』


「カプセルの少女を危険に晒すつもりですか?」


ルミエールの厳しい言葉にハルは何も言えなくなる。


『……了解しました。ブーストは使いませんが急いで帰還します』


ハルは小さく言いながら、スピードをあげる。


『アスカ・エミル、グレイド〈ゼウス〉迎撃準備出来ました』


『カウス・エグセイ、グレイド〈アテナ〉同じく準備出来ました』


「…ハルとカプセルを頼むぞ」


『『はい!』』


艦長の言葉に二人は返事をし、彼らの乗ったグレイドは宇宙に飛び出していく。


「砲撃の準備を。軌道は右舷185゜だ」


「…それではマクシミリアンから大分離れますが」


「マクシミリアンは必ずその位置に移動する」


ゼルダは自信ありげに言う。


「了解しました。エネルギー充填始めます」


「……元エースパイロットの勘というやつですか?」


「……そうかもな」


「マクシミリアンがアルテミスに追い付きました」


オペレーターの声に緊張が走る。


『うわっ』


「落ち着け、今、アスカとカウスが向かっている」


『違います。カプセルが発光して……』


急にハルの通信が途切れ、大きな咆哮がした。


ブリッジのクルー達は緊張の面持ちでモニターを見つめる。


『………グレイド?』


ハルの小さな呟きが聞こえる。


「ハル、何があったんです」


ルミエールが問いかける。


『……カプセルが急に発光して手元を離れ変形しました。グレイドのように見えます』


ハルは呆然としながら答える。


『ハル、大丈夫?って、何コレ?え?グレイド?』


『……アリアクロス製ではなさそうだな』


ハルと合流したアスカとカウスの通信も入ってきた。


彼らも驚きを隠せないようだ。


「映像を送ってくれ」


ゼルダが冷静に言う。


『え?送っているはずですけど、見えませんか?』


ハルは驚いたように言う。


「何者かの妨害電波のために映像が遮断されています」


オペレーターが手元を操作しながら言う。


「カプセルの自衛システムが作動している為と思われます」


オペレーターがモニターから目を離さずに報告する。


『…!…マクシミリアン確認、編隊を組んで迎撃します。未確認グレイドは我々に攻撃の意思も逃亡の気配もなさそうです』


ハルは混乱しそうな頭で、見たままの状況を説明する。


見たことのないグレイドのようなロボットは全く動かなかった。


操縦士である少女が眠っているのだから当たり前だ。


「………許可する。未確認グレイドがおかしな動きをするようなら直ちに撃ち落とせ」


『『『はい!』』』


ゼルダの言葉にパイロットたちは訓練通りの編隊を組むと、マクシミリアンに向かっていく。


その時だった、先程の咆哮が聞こえ未確認のグレイドが幾筋もの光を出したのは。


『『『!?』』』


グレイドパイロット達を避けるように光は進み、マクシミリアンに光は吸い込まれた。


―――ブォォ


マクシミリアンの断末魔の叫びが聞こえた。


一瞬だった。


マクシミリアンは跡形もなく消え去り残ったパイロットたちは呆然と謎のグレイドを見る。


『……何があったの?』


『わからん。ただ、あのグレイドがマクシミリアンを消し去ったことだけは確かだ』


『……何なんだよ、あれ?』


「…状況を説明しなさい」


ルミエールが通信をする。


『謎のグレイドが一瞬でマクシミリアンを消し去りました』


ハルはグレイドを見ながら答えるが頭が混乱していた。


少女は眠っていたのだ。


攻撃など出来るはずがない。


それならばグレイドが自主的に攻撃したと言うことになるが、今のグレイド技術はそこまでいってはいない。


『……うーん、うるさいなぁ。お兄ちゃん?あと5分寝かせてよ』


謎のグレイドから声が聞こえ、パイロットたちに緊張が走る。


聞こえた声は眠たげで、今起きたばかりという声だった。


『……まだ、夜じゃない。何なのよ…………って、何じゃコリャ?え?アタシ、裸?はい?何?え?どこ?』


謎のグレイドから混乱したような声が聞こえる。


『………あ、夢か。そうよね。裸で寝るわけないし?夢に決まってるわ』


慌てた声だったのが、気の抜けたような声に変わり、パイロット達は対応に困りグレイドを呆然と見つめるしかなかった。


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