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ディスク解析3

「何が解ったの?もしかして、お兄ちゃんに求婚した宇宙人のこととか?」


シオンが不思議そうにルミエールを見る。


「…そんなのは解りませんって。そうではなくて、このディスクには翻訳システムを使っていないんです」


その言葉にレイスが驚いたようにルミエールを見る。


「どういうことだ?」


「言葉のままです。どうやら、シオンが我々と翻訳システムなしで会話が出来るのは、お父様が何か関係しているようですね。そのことについて何か教えてくだされば理由もはっきりとするのですが」


「じゃあ、アタシのチートな会話能力はお兄ちゃんが犯人ってことなの?」


「…犯人とは人聞きが悪い。父上は犯罪者ではないのだから原因と言うべきではないか?」


ゼルダが苦笑する。


『あ!俺、重要なことを言うのを忘れてた。超重要なこと』


正宗の言葉に視線が映像に集まっていく。


『俺のお嫁さんにしたいNo.1はシオンだからね☆』


それを聞いた医療室内の者は何とも言えない脱力感に襲われる。


「……うん、何かごめん。特に重要じゃないわよね」


正宗の見当外れの言葉に対しての室内の明らかな呆れの空気に居たたまれなくなり、シオンは謝る。


『あ、そうだ。ディスクについて説明しとこうか。七枚あるでしょ?一枚目がこれ。二枚目がシオンの友達のビデオレター、三枚目がシオンのバンドのPVで四枚目が地球の現状、五枚目がお兄ちゃん特撰シオン盛り、六枚目がシオンは見ちゃダメなシオンちゃんの正しい扱い方、で、七枚目が俺の考えた侵略者と戦うためのガ○ダム的なロボットの設計図。以上だね。ロボットも俺が造れば良いんだろうけど器用じゃないからさ。でもかなり頑張ったんだよ』


「…五枚目と六枚目の説明おかしくね?」


シオンは顔をひきつらせる。


「ディスクは九枚あったのですが…誰か他の人物が二枚入れたのでしょうか?」


ルミエールが腕を組んで言う。


正宗の言ってる意味はディスクを見れば解る。だが、彼の触れていない二枚のディスクについてはよく解らない。


「それも見てみれば分かるだろうな。それより、地球の現状や設計図と言うのが興味深い。あのグレイドの元かも知れない」


レイスが考えるように言う。


「アタシとしては五枚目と六枚目を破棄したいわ。とてつもなくろくでもないもののような気がする」


『必見は五枚目だよ。シオンが家に来た頃から隠し撮りし続けた、あんなシオンやこんなシオン、可愛いシオンがてんこ盛りなんだから。六枚目はシオンは見ないでよ?シオンの保護者的な人だけ見て欲しいな。……あ、でも、シオンのお父さんは俺だけだからね?』


「盗撮かよっ!見て喜ぶのお兄ちゃんだけじゃん。つーか、成人間近の娘に保護者とかワケわかんないし」


シオンはムッとする。


「…親にとってはいくつになっても子供は子供なのだよ。自分の手の届かない場所に大切な娘が居れば心配なものだ。…六枚目は父上の意思を尊重し我々だけで見せてもらうことにしよう」


ゼルダが言う。


「……期待するようなものは多分何も入ってないと思うわよ?」


シオンは顔をひきつらせる。


「まあまあ、それは我々が判断しますよ」


ルミエールが苦笑して言う。


『あとさ、まあ、どうでもいいことかも知れないけど…。俺さ、実は宇宙人なんだよね。昔、シオンに話したらサ○ヤ人とどっちが強いの?とか信じてくれなかったよね』


正宗は軽く言うが、医療室内は騒然とする。


それが事実ならば、彼は当時の異星間の協定を破っていたことになる。


地球と異星間、異星間同士の重要な協定。


必要以上に地球に干渉しない、地球の一般の人間とは関わらないことなど百項目以上の細かいルールがあったはずだ。


それを破っていたとなれば異星間同士の争いにも発展しかねない。


「……え?マジだったのアレ?まあ、どうでもいいって言ったらどうでもいいことかも知れないけどさ」


シオンはポカンとしながら呟く。


「どうでもいいことじゃないだろ?親父が異星人なんだぞ?それに協定を破ったことになる」


ハルは驚いたように言う。


シオンはどうでもいいと言っているが、いいわけがない。


「別に宇宙人だろうが地球人だろうがお兄ちゃんはお兄ちゃんだもの。アタシの父親であることは変わらないでしょ?それに協定って何よ?」


シオンは不思議そうにハルを見て言う。


何故、そんなことを気にするのかが解らない。


シオンにとっては本当にどうでもいいことだった。


そんなシオンを周りの人間は驚いて見る。


「当時、異星人は地球の一般の人間に干渉してはならないと言う協定が結ばれていました」


ルミエールが言う。


「その協定っていつの話よ?」


「協定が結ばれたのは地球歴の1980年です」


「それなら知らなかったんじゃない?お兄ちゃん、さっきも言ったと思うけど半世紀生きてるし?1966年生まれのはずだわよ?」


シオンの言葉に一同は映像を考えるように見る。


初めて地球と接触したのはガリア星人だと言われている。


それが地球歴1975年のことだ。


それより以前に宇宙人が地球に現れた形跡はなかったと宇宙史には書かれていた。


歴史さえ覆してしまう事実に驚きを隠せない。


「年齢をごまかしているのではないか?」


ゼルダが言う。


「それはないわ。アタシ、おじさんにも会ってるし?ちょい悪ダンディーでよくお小遣いくれたのよね。お兄ちゃんのパパとママの写真も見せてもらったし。お兄ちゃん、ママにそっくりなのよ」


シオンの言葉に一同は考える。


「…地球にずっと住んでいたと言うことなのか?」


レイスが呟くように言う。


「協定より前に一族で異星人が住んでいたとは思えません。それに感知能力の高いガリア人が異星人に気付かないのもおかしくありませんか?」


ルミエールは言いながら考え込んでしまう。


ガリア人は特殊な能力を持つ者が多く、殊に異星人の選別に関しては定評がある。


彼らが異星人の存在を見逃すとは思えない。


「後で詳しく調べる必要がありそうだな」


ゼルダは頭を掻いて言う。


地球に異星人が住んでいたという記録はない。


登録籍のない異星人がいるとも思えないし、実際にそんな記録もない。


まだ見つかっていない未開の惑星ならともかく、地球に渡れる技術力を持つ異星人ならば惑星連盟に登録籍があるはずだ。


記録はないが正宗は自らを異星人だと言い、シオンの話では彼は地球で生まれ育ったらしい。


あり得ないことだ。


「……そうですね。調べてみる必要がありそうですね」


ルミエールも険しい表情で言う。


『てかさ、お兄ちゃんは超レアな宇宙人なんだよ。サイ○人並みにレア。多分俺は最後の一人かな。同じ種の宇宙人に会ったことないしね。俺の種族は最悪な奴が多かったから迫害を受けて滅びてしまったんだ』


映像の正宗は苦笑する。


正宗の言葉に一同は更に考え込んでしまう。


四百年前位に迫害を受けて滅びた種族など聞いたことがない。


マクシミリアンに滅ぼされたのならともかく彼の言い方では人間に滅ぼされたように聞こえる。


それに最後の一人だと言った。


「シオン、お父様のご家族は?」


「両親は事故で亡くなったってのは聞いたわ。で、さっき言ったおじさんは、お兄ちゃんのママの弟でお兄ちゃんは一人っ子だって言ってたわよ。でも、おじさんも宇宙人ならお兄ちゃんの言ってることおかしいわよね?」


シオンは首を傾げて答える。


『俺さ、れ…』

『服を着ろー!』


―バサッ


正宗の言葉を遮るように正宗に着物が投げつけられる。


『…慎ちゃん、俺、今、すごく大事な話をしようとしてたのよ?邪魔しないでよ』


正宗は着物が頭にかかった状態で服を投げつけた人物、シオンのバンド仲間の八巻慎に言う。


『大事な話なら服を着て話せよ。つーか、いい歳なんだからいい加減分別をつけろって』


「あ、慎ちゃんだ。慎ちゃんはバンドのメンバーで友達なの。因みに恋人はなっちゃん、夏生って言うのよ。なっちゃんはアタシの親友なんだ」


シオンが説明する。


「我々には、君の友人が何を喋っているか言葉が解らない」


ゼルダが呆気にとられたように言う。


正宗の言葉は解るが急に現れた慎の言葉は解らなかった。


これこそが、正宗が地球人ではないという証拠ではないだろうか。


「慎ちゃんは服を着ろってお兄ちゃんに言ったのよ」


シオンは説明する。


ルミエールはシオンに近寄ると置いてあるコンピュータを片手で操作する。


『翻訳システムを作動します』


無機質な音声が流れピピッと電子音が聞こえる。


『慎ちゃん、怒ってばかりいると禿げちゃうよ?』


『誰のせいだよ!どうして、アンタは人をイラつかせるんだ!』


翻訳システムは正常に作動したようで慎の言葉は解るようになっていた。


どこかで聞いたような台詞に一同は思わず苦笑いをする。


『俺のせい?おかしいな、俺、慎ちゃんに何か迷惑かけた?あんまり怒ってるとザビエルにみたいになっちゃうよ?』


正宗は解らないと言うように首を傾げる。


『……はぁ。もういい、風邪引くから服着とけよ?アンタ見てるとこっちが寒くなるんだよ』


慎はため息をついて諦めたように言う。


『慎ちゃん、着物だけじゃ寒い。どうせなら下着も用意しといてくれないと』


『テメェで用意しろ!つーか、パンツくらい穿いとけよ!アンタがそんなんだからシオンまであんな風におかしな感性を持っちまうんだろうが!』


怒りが込み上げてきたのか、再び慎は怒鳴る。


『慎ちゃん、シオンは個性的なだけでおかしな子じゃない』


「…え?何か、アタシ今何となく酷いこと言われてる?つーか、慎ちゃんはアタシのことおかしいとか言ってねーし」


シオンは映像に突っ込むが、誰もシオンには答えない。


むしろ慎の言葉に同意したい。


『……あー、もうとにかく服を着てこいよ。ついでに暖かい飲物を飲んでこい。今日は特に冷え込んでいるからな』


慎は疲れたように言う。


『いや、だから俺は今大事な話をしていたんだって』


『大事な話ならちゃんとした格好でしろ。シオン以外も見てるかも知れないんだぞ?』


慎は言い聞かせるように正宗に言う。


『それはそれで……興奮するね』


『…シオン、お前ってスゲェよ。こんな変態とずっと一緒に暮らしてたなんて』


慎は心底疲れたように言う。


『俺は変態じゃないよ。裸族なだけだし、それにシオン以外に変態って言われても萌えないし』


「……キモっ」


シオンは思わず呟く。


『……あー、何か、殴りてぇ』


『だから、シオン以外に殴られても萌えないって』


『……シオンがアンタのことを気持ち悪い変態って言うのがよく解る。とにかく、服を着てこいよ。風邪引くぞ?』


慎は顔をひきつらせながら正宗に言う。


『ちぇ、わかったよ。着てくればいいんでしょ?じゃあ、軽くシオンに地球であったことを教えてあげといて。殆ど説明してないから解りやすくね』


『……今まで何の話をしてたんだよ?』


『……えー?色々?』


正宗の言葉に慎はため息をつく。


『じゃあ、着てくるから宜しく』


正宗は言うと、椅子から立ち上がり着物を持って画面から消えていく。


『……シオン、元気にしてるか?まあ、お前は絶対元気なような気がするけど。正宗さんの話をぶった切って悪かったな。あの人、最近身体の調子悪いみたいでさ、風邪引かれても面倒みれねーし』


慎はカメラに向かって困ったように言うと頭を掻く。


『つーか、お前、何やってんだ。いつまで経っても会場に来ないと思ったら…。今さら言っても遅いけど、バイク乗るときは気を付けろってあれほど言ったのに…皆、お前が死んだかと思って真っ青になってたんだぞ?夏生なんか神社とか寺とか廻って御守りやら護符やら買い漁って泣きながら変な祈祷してたんだからな』


慎は怒ったような顔をした後に小さくため息をつく。


『…お前が居なきゃバンドも出来ねぇよ』


「……そっか、アタシ、ライブ会場に行く途中に事故ったんだ」


シオンは思い出したように呟く。


飛び出してきた猫を避けたところまでしか覚えていない。


大事なライブだったのに、と、メンバーに申し訳ない気持ちになりシオンの表情は曇る。


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