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医療室にて4

久しぶりの更新です。次はもっと早く更新できたらいいなと思ってます。

「ねぇ、いつまでボケッとしてるの?話すことがないなら自己紹介くらいしてちょうだいよ」


シオンは呆然とする彼らに痺れを切らしたように言う。


彼らはシオンの言動に驚き呆然としているのだが、シオン自身はそれに気付いていないのか全く気にする様子はない。


「……自己紹介?」


ゼルダは呟くように考える。


「ハゲル以外は誰もアタシに名前を言ってないわ。それにアタシにだけ名前を言わせて名乗らないつもりなの?」


シオンは唇を尖らせる。


「ハゲルじゃない。ハルだって言ってるだろ?」


ハルはため息混じりに言う。


シオンと話しているとどうも調子が狂ってしまう。


怒る気力すら湧かなくなる。


シオンのような人間と今まで付き合ったことはない。


それは艦長と副官も同じようで盛大にため息をついていた。


「……そう言えば名を名乗っていなかったな。私はゼルダ・オーウェン。アリアクロスの軍人でこの戦艦レジェンドの艦長だ」


「私は艦長の補佐官のルミエール・ウルバです。…何なら趣味も言いましょうか?」


ルミエールが柔らかな笑みを浮かべて言う。


「……どうせ裸の美少女の観察でしょ?セクハラ親父め。つーか、何かもう顔がセクハラなのよね」


シオンはルミエールの顔をジーッと見つめて言う。


「……どういう意味です?」


ルミエールが怪訝な顔でシオンを見る。


「エロイのよ、顔が」


シオンは真面目な顔で答える。


「……」


「…ふっ、くくっ、ははは」


一瞬の沈黙の後、ゼルダが噴き出して笑い始める。


医療室にいる者は肩を震わせていた。


ルミエールに面と向かいそんなことを言う人間などいない。


穏やかではあるが、彼がやり手の軍人であることを解っているからだ。


「…せめて、艶があるとか色気があるとかの方がいいのですが」


ルミエールは若干落ち込み気味に言う。


昔はよくそんなことを陰で言われていた。


しかし、軍人としての地位が高くなるにつれて言うものはいなくなっていた。


もしかしたら未だに言われているのかもしれないが、自分の耳には届かない。


まさか、ほぼ初対面の少女に面と向かいハッキリ言われるとは思いもしなかった。


「ムッツリ、アンタも笑ってる場合じゃないわよ。アンタ達、二人でいると関係を疑われるんじゃない?ムッツリは男の方が好きそうな顔してるし」


シオンの言葉にゼルダは顔を引きつらせる。


そんなことを言われたのは初めてだが、そんな噂は実際にされている。


まさか、他の人間にもそのように思われているのかと思うとかなりショックだ。


「ぶはっ、あははっ」


ルミエールが堪らないといったように腹を抱えて笑い出す。


「どんな顔だよ」


ハルは呆れたように言うと頭を掻いてため息をつく。


「…結局、謎しか残っていないな」


脱線した話を戻そうとゼルダは疲れたように言う。


顔の話が続くと精神的に辛い。


それにこんな話をしに来たわけではない。


シオンと話をしていたら、いつまで経っても本題に入れない。


「……言語についてはディスクに何か謎を解く鍵があるかも知れませんね」


ルミエールは笑いを噛み殺しながら言う。


親友が困り果てる姿は見ていて面白いが、確実に自分も巻き込まれるので話を変えた方がいいと判断した。


シオンは誰かが話をすれば、素直に反応する。


話を変えればすぐに乗ってくるだろうことは予測できた。


「ディスク?」


思惑通り、話に乗ってきたシオンは首を傾げる。


「君の荷物の中にありました。着物の他にはノートとギターが入っていました。ノートとギターに不審な点は無かったのであとで返しますね」


「不審なノートとギターってどんなのよ。デスノートなんて持ってないわよ」


シオンは苦笑する。


「デスノート?」


「……ルミエール、聞くな。話が進まない」


ゼルダは話を脱線させぬように、デスノートに興味を示したルミエールに釘を差す。


デスノートとやらにはゼルダも興味はあるが、すべき話が出来なくなっては意味がない。


「……ディスクには全てロックがかかっていた。パスワード、人物認証、指紋解析と厳重だ。君以外は見れないようになっている」


ゼルダは腕を組みシオンを見る。


「……アタシ以外に見れないようになっているって、わざとそうしてあるんじゃない?」


シオンは考えるように言う。


「何でだよ?」


ハルが聞く。


「だって、そうすれば取り合えずアタシの身の安全の確保にはなるじゃない。わざわざ、生かしておいたアタシが簡単に死んだら意味がないわよね?」


シオンは推測を言う。


その推測を聞き、ゼルダとルミエールは視線を一瞬だけ交わす。


「……成る程、レイス博士が褒めるのも納得できますね」


感心したようにルミエールが口にする。


危害を加えようなどとは最初から思っていなかったが、自分達以外の異星人がシオンを発見した場合はどうなっていたかわからない。


仮に他の異星人が見つけたとしても、グレイドのこともあるのでとりあえず、命の保証だけはされるだろうと予測は出来る。


地球人というだけで命の保証はあるだろうが、それを信じるかはわからない。


それを考えれば、開発者はシオンの命を守るためにわざと様々なロックをかけたのかも知れない。


推測ではあるが、それに気付いたシオンは言動はともかく聡い娘であることは間違いない。


「鬼畜眼鏡男ね。アレのどこが褒めてたの?」


シオンは顔をひきつらせる。


「……彼が人にああいう風に言うのは初めて見た。褒めていなければ多分、言動通り頭が悪いで終わっている」


ゼルダは言い切る。


「……何か酷くね?アタシの言動なんて普通よ?」


シオンはムッとする。


「普通は見ず知らずの人にムッツリだのセクハラだの言わないと思いますよ?」


ルミエールが苦笑する。


「挨拶みたいなものよ」


シオンは悪びれた様子もなく言いニカッと笑う。


「どんな挨拶だよ」


ハルは顔をひきつらせる。


「…私達に発見されて良かったですね。他の異星人なら本当に鬼畜なことをされてたかもしれませんよ」


ルミエールがしみじみと言う。


アリアクロスの人間は比較的大らかで友好的だ。


しかし、他の惑星の人間が友好的とは限らない。


気性の激しい惑星の者ならば、シオンの口の聞き方では本当に酷い目に遇わされていてもおかしくない。


「その時は運が悪かったってことで諦めるわ」


シオンは言うと小さく笑う。


「……君は変わっている。運が悪かったで諦めるなど聞いたことがない。言葉遣いを直せばいいだけの話だ」


ゼルダは呆れ半分に言う。


運だけで人生を左右されるなど、自分の実力で今の地位まで駆け上がったゼルダには考えられない。


「一応敬語も使えるけどさ、何か嫌なのよね。作ってる自分とホントの自分のギャップがさ」


シオンは苦笑する。


「そう…ですか。君には今度、エターナル首長に面会してもらうのですが、敬語を使いたくなかったら使わなくても構いませんよ」


ルミエールが嬉しそうに言う。


「ルミエール、それでは困る。首長と面会する時くらい敬語を使ってもらわねば……まあ、だが、使いたくないならそのままでも構わないか」


ゼルダは言いながら腕を組んで考える仕草をする。


シオンが自分達の側に居た方が都合が良い。


無理に敬語を使わせる必要もないだろうが、シオン自身が軽く見られてしまう。


決して頭が悪い訳ではない少女が頭の悪い娘だと評価されるのも何となく後味は悪い。


「面会?首長?よくわからないんだけど?」


シオンは首を傾げる。


「何から説明するかな」


ゼルダは眉間をグリグリ指先で押して考える。


説明するのはあまり得意ではないが、シオンを保護した責任は果たさなければならない。


「…まずは、地球の事から説明したらどうです?」


ルミエールが考え込むゼルダに苦笑し助言する。


自分が説明しても良いが、それではゼルダの艦長としての資質が疑われてしまう。


シオンは誰が説明しても気にはしないだろうが、ここはゼルダに話をさせるべきだろう。


「……まずは、シオンの話から聞いた方がいいと思うが?」


急に現れたレイスにゼルダとルミエールは驚く。


「いつの間に来たんです?」


ルミエールがレイスを見て驚いたように言う。


「面会がどうのこうのと言ってた辺りだ。…シオンの服をメルに頼まれた。どうもガリア難民に急患が出たようでな」


レイスはため息混じりに、シオンの服を軽く上げて言う。


「……一人で着れる自信がないのに、ここにいるのは男ばっかり。あのお姉さんって結構天然?」


シオンは顔を引きつらせる。


「そうだな。僕も下着まで持たされるとは思わなかった」


レイスも疲れたように言う。


まさか、女性物の下着まで持たされるとは思いもしなかった。


「…誰か女の人を呼んできましょうか?」


ハルが気を利かせて言う。


「ハル、君は怪我人だ。シオン、とりあえず一人で服を着てくれ」


レイスは言いながら服をシオンの目の前に置く。


「努力はするけどさ、アンタ達、そこでアタシがもがきながら服を着るの見てるわけ?何?羞恥プレイ?」


シオンの言葉に盛大に周りの人間はため息をついて、薄いレースの仕切りを動かし閉める。


「…これでいいか?着れなさそうだったら言ってくれ誰か呼ぶ」


レイスは仕切り越しに言う。


「わかったわ。つーか、何かスゲェ可愛い下着だわね?これ持たされた鬼畜眼鏡、超ウケるー」


シオンはププッと笑い言う。


「……。艦長、シオンを教育しようと思うのだがどうだろう?」


「…やめておけ」


レイスは笑いながら言うが、その目が全く笑っていないことに気付いたゼルダは目を逸らし答える。


彼の教育とやらに任せたらシオンが発狂してしまいそうだ。


「つーか、明らかにサイズの合わないブラだわね?これは貧乳のアタシに対しての嫌がらせなの?詰めるものも用意してよ」


「……シオン、黙って着れないんですか?」


ルミエールが苦笑する。


慎みや恥じらいと言うものが少女からは感じられない。


可愛らしい容姿に合わない発言が本当に残念だ。


「カーテン開けて誰もいなくなってたら嫌だなーって。黙って着替えるから、喋っててよ」


シオンは言いながら、用意された服を着ようと奮闘する。


身体は中々言うことを聞いてくれず、下着を着けるのも一苦労だ。


小さな気合いが呻き声となるが気にせず下着を着けるために、ベッドで小さく動き回る。


「ディスクは持ってきたのか?」


仕切り越しに聞こえる呻き声に眉を寄せ、レイスはゼルダに聞く。


「ああ、一応な。だが、今は現在の状況から説明した方が良いかと思うのだが」


ゼルダは入ってきた時に机に置いたディスクの束をチラリと見て答える。


「それならば先にディスクを見せるべきではないか?内容は解らないがシオンに残したメッセージなら説明する手間も省ける。それに地球に何があったか知ることが出来る」


レイスは考えるように言うとゼルダを見る。


「…確かに一理あるな。だが、関係のないものなら結局説明はしなければならないがな」


ゼルダも考えるように答える。


「では先にディスクを見るということでいいですか?」


ルミエールの質問にゼルダは頷く。


ルミエールは、医療室の机の上に置いてあるコンピューターを操作し始める。


そして、ディスクをコンピューターに接続されている器機に次々と挿れていく。


「準備は整いました。後はシオンの着替えを待つだけです」


ルミエールはレースの仕切りを見ながら言う。

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