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医療室にて2

読んでくださってありがとうございます。誤字・脱字には気を付けていますがあったら教えてください。

「……起きて早々、騒いでいるなんて元気ですね、君たちは」


「あら、最低最悪の変態親父連盟第二号の鬼畜セクハラ親父。騒いでないわよ?うちのお兄ちゃんの変態っぷりを披露してただけよ」


「……長い上に酷い称号だ。しかも変態披露って……。ハル?具合はどうです?」


ルミエールは呆れたように言うとシオンの隣のハルに声をかける。


「……すみませんでした」


ハルは表情を曇らせる。


彼の怪我は、制止も聞かずマクシミリアンを駆逐しようと一人で深追いした結果だ。


明らかな判断ミス。


小隊長としては、あってはならないことだ。


シオンの声で目が覚めたので、彼が二人に会うのは二日振りだ。


ハルの表情は自然と硬くなる。


「……すみませんでした?そんな言葉を聞きたいわけではない。何故、制止を聞かなかった?」


ルミエールは冷たい表情でハルを見る。


「それは…マクシミリアンを殲滅しようと」


「……殲滅できたのか?」


「……いいえ」


「ハル・ジェイド、君は勘違いをしている。個人の力量は勿論大切だ。だがそれより大事なのは連携だ。君は小隊長であるにも関わらず、自らと仲間を危険に晒した。言ってる意味は解るか?」


ルミエールの言葉にハルは俯く。


「…この馬鹿者が!お前は軍人だろうがっ!上司の言うことが聞けんのなら軍人など辞めてしまえ!エースだと呼ばれていい気になるな!自分の腕を過信し、成果も挙げられず、怪我までしやがって…仲間の言葉が聞けんのか?ならばレジェンドを降りろ」


スゥーッと息を吸い、ルミエールはハルを一気に怒鳴りつける。


ハルはビクッと肩を震わせ、ルミエールを見る。


「……何度も言ったはずだ。小さな油断が命を落とすことになると……二度と判断を間違うな」


ルミエールは表情を和らげ、ため息をつく。


「…今回はカウスやアスカのお陰でその程度で済みましたが、本当に命を落とします。演習ではないのです、肝に銘じておきなさい。それに君は小隊とは言え、隊長なのです。ミリアムが居たらこの位の叱責では済みませんよ?よく考え行動しなさい」


「…はい、すみませんでした。これからは二度とないように気を付けます」


ルミエールの言葉にハルは俯く。


「……その位にしておけ」


ゼルダがルミエールに言う。


「ハル、ルミエールの言う通りこれは教習ではない。生き残るためには己で考え行動するしかない。己の判断一つで仲間まで危険に曝してしまうということを……いや、しつこいな。すまない」


ゼルダは途中まで言いかけため息をつく。


「艦長、最後まで言いなさい。貴方は甘い。命を落とすのはこの子なのです。彼を死なせたくないのなら言うべきです」


ルミエールは静かにゼルダを見て言う。


「大事なことはお前が言った。何度も言われたら萎縮してしまう。それにハルはパイロットになり半年しか経っていない。経験が少なすぎる、今はまだわからないことの方が多いはずだ」


「だからこそ、言わなければならないでしょう?ああ、そう言えばどこかの誰かさんも、ハルと同じことをしましたっけ?」


ルミエールは怒りの矛先をゼルダに向ける。


「……だから、私はハルに厳しくは言えない。ハル・ジェイド、一つ言えることは無謀と果敢とは違う。我々の使命は市民の命を守ることだが、まずは己と仲間の命を守れ。君達が生きていなければ市民の命は守れない。それに、君が死んだら悲しむ人間がいる…それを忘れるな。君の処分は今の叱責と…副官の部屋の掃除だ」


ゼルダは優しい眼差しを向けハルに言う。


ルミエールが厳しく言うのは、勿論ハルを心配しているからだ。


何人も仲間を失ってきた。


まだ若いパイロットに命を落とすような行為をさせたくないからの言葉だ。


ゼルダはそれがわかっているので敢えて強くは言わない。


ハルの処分は甘過ぎるがそれでいいと思っている。


ルミエールは小さくため息をつき、それ以上は何も言わなかった。


「……無事でよかった」


ルミエールは小さく言い、ハルの頭をガシガシと撫で回す。


「……すみませんでした」


ハルは項垂れて言う。


「……次はない、同じことを繰り返さなければいい」


ゼルダは言うと、ハルの肩に手を置く。


「……あれ、随分おとなしいじゃないですか?」


ルミエールが話を変えるようにシオンを見て言う。


「……大事な話は邪魔をしない。それくらいは空気読めるわよ」


言いながらシオンはハルとゼルダを食い入るように見ている。


「……何となくですけど、不埒なことを考えてません?」


「…まさか、BLっぽいとか妄想なんかしてないわ」


「……びーえる?」


ルミエールは首を傾げる。


「……うふふ、世の中には知らなくていいことが沢山あるのよ」


シオンは生暖かい目で二人を見て言う。


「……頼むから、変な想像をするのは止めてくれ」


ゼルダはシオンの意図を感じ取ったのか、ハルの肩から手を離して言う。


シオンのこの目は、上司の二人を見るオペレーター達と同じだ。


これ以上、男色家だという噂が流れれば本当に娘に会わせてもらえなくなるような気がする。


「……ああ、もしかしてびーえると言うのは男性同士の恋愛のことですか?」


そのゼルダの様子に、ルミエールが納得したように言う。


「………お前ってさ、本当に何か色々残念な女だな」


ハルは顔をひきつらせて言う。


「ところで、いつになったら服を着させてくれるのかしら?」


先程までの重苦しい雰囲気がなくなったので、シオンは言う。


「…え?着てるんじゃないんですか?」


驚いたようにルミエールは言い、シオンを見る。


薄い上掛けは体のラインにピッタリと沿って服を着ていないことは明白だ。


「……うーん、宇宙人にしか見えない服とか着てるのかしら?それとも何、裸の王様ごっこ?アタシがバカだから見えないとか言いたいの?」


シオンは言う。


「……申し訳ありません。色々忙しくて……着せてませんでした」


申し訳なさそうにメルが言う。


「……二日も経っている。いくらなんでもそれはないだろう」


ゼルダは呆れたようにメルに言う。


メルのうっかりは有名だが流石にこれはないと思っていた。


「……お姉さんは悪くないわ。別に四百年ずっと裸だったわけだし?一日や二日くらい裸でも……って二日も寝てたのかっ!」


シオンは言いながら驚く。


驚きすぎてシオンの肩から上掛けが落ちてしまったのを見て、ルミエールがサッと掛け直す。


「……今までずっと眠っていた身体が急激な変化に対応できないのです。慣れるまでこんな感じで睡眠が続くかも知れません」


メルが困ったように説明する。


「……身体が慣れる前に裸を見られることに慣れそうだわよ。早く服ちょうだいよ」


シオンは口を尖らせて言う。


「……そう言えば、君の服がカプセルに入っていた。着物とかいうらしいけど」


ルミエールが思い出したように言う。


「…着るのが面倒臭い。それは着たくないわ」


シオンはため息混じりに言う。


「綺麗でしたよ?」


「お兄ちゃんが入れたのなら綺麗だと思うわ。和装萌えがどうたらこうたら言ってたし…甚平とか浴衣ならまだ着れるけど着物は着付けが本当に面倒なのよ」


「…あれを着れるのか?」


ゼルダが驚いたように言う。


あの着物という服は一体どうやって着るのか皆目見当がつかなかった。


「まあ、一応ね。うちのお兄ちゃんはお茶の名家の人だったらしいから礼儀作法は厳しかったの」


「……厳しかった割には君は自由過ぎません?メル、服を着させてあげなさい」


ルミエールは苦笑しながら、メルに指示する。


メルは頷いて医療室を出ていく。


「礼儀作法はって言ってるじゃない。あとは溺愛されてたからね、気持ち悪いくらいに」


シオンの言葉にハルが苦笑する。


「……君は、本当に義理の父上が好きなのか?」


ゼルダが聞く。


シオンの言い様だと、好きなようには感じられない。


好きだと無理をしているのではないかと心配になる。


「ハゲル、うちのお兄ちゃんの話をしてあげてよ。アタシ、何回も同じ話できないのよ」


シオンはハルに言う。


「……ハゲルって呼ぶなって」


ハルの言葉にルミエールが噴き出す。


「仲良くなったみたいでよかったです」


「それで?」


ゼルダはハルを見る。


「……こいつがお兄ちゃんを大好きなのは間違いないです」


ハルは疲れたように言う。


どの辺の話をすればいいのか見当はつくが他人の自分が言ってもいいのだろうかと考えてしまう。


「……お前が自分でお兄ちゃんの良いところを言えばいいだろ?」


ハルはシオンを見る。


「顔!」


シオンは即答する。


「………」


ハルはため息をつく。


「……まあ、嫌いではないということでいいんじゃないですか?」


ルミエールは苦笑する。


「あ、そう言えば聞きたかったんだけど、アタシ何でアンタ達と会話ができるの?」


シオンは思い出したように不思議そうに首を傾げて聞く。


「……?」


周りの人間は不思議に思いシオンを見る。


今現在会話をしているのにこの少女は何を言っているのだろうと。


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