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医療室にて

読んでくださってありがとうございます。

「……のわぁぁ!」


今まで静かに眠っていたシオンの突然の奇声に、彼女の周りにいた医療班の面々はビクッとし、そちらを見る。


シオンは目だけをパチクリし、何かを確認するように視線をさ迷わせていた。


「……あのー?大丈夫ですか?」


医療班の主任であるメルはシオンに声をかける。


「……変態が…お兄ちゃんが…何人も居た……夢か」


ブツブツと何かを呟くシオンの顔は真っ青だった。


「……大丈夫ですか?」


メルはもう一度今度はシオンの顔を覗きこんで声をかける。


「……」


「……」


暫く沈黙が続き二人は無言で見つめ合っていた。


「………あのー?」


メルは心配になり困ったようにシオンを見る。


「……ここは?」


シオンが聞く。


「レジェンド艦の医療室です」


メルは答える。


「………ああ、そうか。本当に夢じゃなかったんだ」


シオンは呟くと起き上がろうとするが、身体が重くていつも通りに動くことができずにもがいてしまう。


「…あれれ?何か動きづらいんですけど?」


「貴女の身体は長い間、無重力状態であったのはわかりますか?」


メルはシオンの身体を支えながらシートを上げ少しだけ上体をあげて楽な姿勢にさせる。


「…わかんない。それと動きづらいのと関係あるの?つーか、お姉さんも美人ね。何この美人率の高さ」


シオンはメルを眺めながら言う。


前に見た二人の女性もかなり美人だった。


美人なのは女性に限らず男性の方もだと思っているが、それは敢えて言わずにいる。


「…ここには重力が存在します。貴女の身体は今までなかった加圧により過度の影響を受けて動くことが難しいのです」


メルは少しだけ頬を染めて説明をする。


美人などと正面から言われたことはないからだ。


「……うーん、つまり大リーガー養成ギプスをずっとしてる状態みたいなことかな。……貧乳に磨きがかからなきゃいいけど」


シオンは呟くように言う。


「……大リーガー養成ギプス?」


メルは首を傾げて考える。


「……あんまりそいつの言うことは考えない方がいいですよ」


左の方から呆れたような声が聞こえシオンは首を動かす。


隣のベッドにはハルが頭に包帯を巻いて寝ていた。


「…アンタは、……ハゲル!」


「禿げてねぇよ!わざとか?俺はハルだ、ハル・ジェイドだ」


「……あの女の子割と凶暴ね。まさか本当にぶっ飛ばすなんて」


「アスカにやられたわけじゃないぞ?」


ハルは呆れたように言う。


「ねぇ、とりあえずアタシ服を着てないよう見えるんだけど?え?マジで真っ裸で監視なの?チクショウ鬼畜変態親父連盟め」


「……お前、一体何なんだよ?」


ハルは心底疲れたように言う。


「……つーか、裸の美少女が隣で寝てるって思春期真っ盛りの男の子的にはどうよ?」


「…普通、自分で美少女とか言うか?」


「しょうがない、事実だもの。アタシ美少女だってよく言われるのよ?」


シオンは胸を張り言う。


「………黙ってれば美少女なんだろうな」


「あ、それも、よく言われるのよねー」


ケラケラとシオンは笑い出す。


「……あ、あのさ、この前は最悪だとか言って悪かった」


ハルはバツが悪そうにシオンに言う。


カプセルの中でシオンのことをアスカに聞いた。


知らないこととは言え、酷いことを言い悪かったと思っていた。


それに殆ど八つ当たりだ。


「…別にいいわよ。アンタは、というかアンタ達はあの雰囲気からいって家族とか友達をすごく大切にしてるんでしょ?何かこっちこそ悪かったわね?アンタ達からしてみれば確かに最悪だと思うわ」


「………」


シオンが余りにも素直に言うのでハルは何も言えずに戸惑ってしまう。


「…あ、でも、何とも思っていない訳じゃないわよ?アタシにとって、お兄ちゃんも友達も大好きで大切な人だってことは変わらないもの」


シオンは笑って言う。


「………その、お兄ちゃんのことって嫌いじゃなかったのか?」


ハルは言いにくそうに聞く。


アスカに聞いた話では、変態で気持ち悪いを強調していたように思えた。


「大好きだったわよ。ただ、ちょっと…いや、かなり気持ち悪くて……変態だっただけで。でも、よくよく考えるとわざとだったのかも知れないわ。いや、でもアレは真性の変態か?」


シオンは言い考え込んでしまう。


「……気持ち悪い変態って」


ハルは顔をひきつらせる。


大好きだと言うわりに酷いことばかり言っている。


「お兄ちゃんはね、すっごく格好良かったのよ。ムッツリ艦長とかセクハラ親父とかも、結構イケメンだと思うんだけど更に上をいくイケメンなのよ!なのに、何でかしら、すっごい気持ち悪い変態行為ばかりしてたのよ」


シオンは力説する。


「……イケメン?」


「美形の男のことよ。イケてる面とかメンズの意味だわよ。つーかさ、何かハゲル達の星って美形率が高くない?」


シオンは思ったことを聞く。


「……ハゲルって呼ぶな。艦長も副官も確かにアリアクロスの中じゃ、かなり美形だよ。でも、艦長たちの上をいく美形って…ものすごい綺麗なんじゃないか?」


「……アタシさ、最初見た時、女の人だと思ったのよ。なんつーの?絶世の美女?男だって聞いたとき、たまげたわよ」


「……でも、変態なんだろ?」


「そうなのよ。五歳のアタシに一目惚れしたから結婚しようとか抜かすのよ?本物のロリコンだと思ったわ」


「……ロリコン?」


「幼児愛好家のことよ。でも、実際はいかがわしいことはされなかったし、きっと冗談だったのよね。怪我した時に、ベロベロ舐められたり、部屋に鍵閉めて寝てるのに朝起きると素っ裸で添い寝されてたり、風呂に勝手に入ってきたり、ただいまのチュウとか強要されたけど、まあ、そのくらいなら害はないわ」


ハルは驚いてシオンを見る。


充分、害はあるのではないだろうか。


「……子供の頃はそれが普通の家庭だとか言われてて、ちょっと大人になって、さすがにおかしいと思って詰め寄ったら、バレたか、てへっ☆とか言うわけよ。頭にきてさ、ぶん殴ったら、シオンに殴られるのもいいとか言い出すし……何か、本当に色々残念な人だったわ」


シオンは言い、遠い目をする。


「……ぶん殴ったんだ」


「だって、本当に気持ち悪かったんだもん」


「…でも、大好きだったのか?」


「…あの人がいたから、アタシは生きてこれたの。あの人がアタシを養子にしてくれなかったら、アタシは生きてても死んだのと同じだったと思うわ」


シオンは言うと柔らかい笑顔を浮かべる。


ハルは思わず赤くなる。


「……何だよ、それ?」


目を逸らしてハルは聞く。


「……アタシさ、良い子にしてないと殴られるとか捨てられるってずっと思っていたのよ。居たのが結構、酷い孤児院でさ、ちょっと言うことを聞かないと殴る蹴る、食事なしは当たり前のとこだったから」


シオンはポツリと話し始める。


「だから、貰われた時もお兄ちゃんに嫌われないように良い子にしてたのよ。でも、お兄ちゃん、良い子にしなくていいんだよって言ってくれたの、どんなアタシでも絶対に嫌いにならないからって。本当に嬉しかったわ」


「……話だけだといい人だな」


「実際いい人よ。ただ、家では宅配の人が来ようが回覧が来ようが友達が来ようが常に全裸で、しかも、見られて喜ぶような人だから……誰も遊びに来なくなったし、回覧はアタシがいる時しか来なくなったのよね。せめてパンツくらい穿けと言ったんだけど、俺のマグナムを隠す必要はないでしょとか訳の解んないことを言う人だったのよ」


「……」


シオンの言葉にハルは顔を引きつらせる。


「……挙げ句の果てに、アタシにも裸を強要するわけよ。勿論、拒否したけどさ。そしたらスク水とかを出すわけさ」


「スク水ってのがよくわからないけど……お前の父さんは顔が良くていい人だけど変態で気持ち悪いってのは……よく分かった」


ハルは言う。


「そう。超イケメンなのに勿体無さすぎるキモさだったのよ」


シオンはため息混じりに残念そうに言う。


―――プシュー


機械音が聞こえ、カツカツと二つの足音が響く。


艦長と副官だ。


医療班の人間達は彼らに軽く頭を下げる。


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