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my sense  作者: 桜井 璃衣
8/18

言葉の通じない場所 (1)

この姿勢は厳しすぎる・・・・


「はぁ。。。」


梨花は何度目か数え切れない位のため息をはいた。

最初は、男も気にしていたようであるが、あまりにも梨花が男のほうを見た後にため息をつくので、

男のほうも特に気にせず、不機嫌な面持ちで、淡々と馬を操るのみである。


梨花は、今馬上でマントに包まったまま男の前に横向きで座り、男に腰を抱えられるように座っているのであるが・・・


目の前には、森の景色、左目で捉えるのは馬のたてがみ、右上に見えるのは、男の端整な顔立ちなのである!!


見知らぬ男に腰を抱かれて、キャーキャー言うような羞恥心はもう持ち合わせていないが、

綺麗な男に、丸一日以上化粧直しもしないままの顔を見られることほどつらいことは無い。


Tゾーンのテカリ、目じりの皺によるファンデのよ(・)れ(・)、一晩寝たことによるマスカラの崩れ等々気になって仕方がない。

20代後半になって、スッピンで出歩くことも怖いが、夜メイクが崩れた自分を人に見られることはもっとありえない!!

『若くって遊んでるのね!』では済まされない悲惨な感じが漂うに違いない。


あまりに、小屋や男や森という未知の世界だったために、全く鏡を見ずにいたことに

馬に乗った後、男の顔を見たときにやっと思い出したのだ。


あまりの自分の姿のひどさを想像して、悲鳴を上げそうになったが寸でところでそれを押し留め、

男から見えないように斜め左をうつむいたら、それまで梨花に無関心であった男が

梨花の額を押し上げ、うつむく姿勢から、シャキッと前を直す姿勢に戻したのだ。


何度かそれを繰り返し、どうやら馬上でうつむく姿勢がいけないことらしいと梨花は悟り、

もううつむくことをやめたのであるが、その代わりに数分に一回ぐらいの割合でため息をついているのである。


そんなことをしているうちに、木々しか見えなかった視界が開け、農村のような光景が見えてきた。

畑の向こうに見える家々を見つけたとき、梨花は嬉しくなって、それこそ化粧の崩れた顔は気にならなくなったが、徐々にその嬉しさは消え、だんだんなんともいえない苦い気持ちになってきた。


その山のふもとにあるような集落は、何かがおかしい。

畑の向こうに見える家々は、あまりにも質素なつくりである。

畑の間、間にある道は全て、土の色をしており、梨花の求めていた『アスファルト』の地面はどこにも見えないのだ。


畑の上には耕運機こううんきのような、機械が一つも見当たらないのである!


近づくにつれ、畑で作業している人が見えるが、彼らはくわやらの道具を持って、

自分で畑を耕しているように見える。

水を撒いている人もいるが、使っているのはホースではない!!

たるのような中に入った水を、柄杓ひしゃくのようなもので撒いているのだ。


農作業をしている人々は、帽子をかぶっているから詳細には分からないけど、どう見ても日本の農家と言う感じでもない。


どういうこと??


この馬で助けてくれた他の人も全て、日本人の雰囲気がないなんて・・・・

どうやら、タクシーはものすごいとこに連れてきてくれたみたいだ。


梨花は想像を絶する事態に、だんだん体が小刻みに震えてきた。

腰を抱える男も気づいたようであるが、そのまま馬を進める。


馬は、畑を通り越し、民家を通り越し、この集落で一番立派な洋館の前で停まった。

洋館は『テーマパークにある施設?』と思ってしまうほどの大きさと概観だった。


男はヒョイっと降りると、梨花の脇を持って下に下ろして立たせようとしてくれたが、

小刻みに体が震えているせいか、なれない馬に乗ったせいか、立てなくてヘニョっと崩れてしまった。


男は「チッ」と舌打ちをして、梨花を抱え上げてくれた。

舌打ちをされた割には俗に言うお姫様ダッコで、梨花は過去の経験から落とされるのではと不安になったが、

梨花の歴代彼氏とは違ってたくましいせいかよろける様子も無くそれだけは安心できた。

お姫様ダッコされたおかげか、マントが上にずり上がってきて、

顔が半分ほど隠れたせいか少しは震えも停まった気がする。


梨花が安心して、男に抱えられていると、突然屋敷の中からすごい音をたてて正面玄関が勢いよく開き、

中から、中年の女性と中年の男性が飛び出してきた。


女性は梨花を抱える男に向かって何かをまくし立ててるが、案の定、梨花には耳慣れない言語だった。

男は、とりあえず女性が言いたいことを言わせて、彼女が一息ついているときにやっと何かを女性にいった。


女性はビックリして、慌てて男のそばによってきて、梨花の顔が隠れたマントをガッーっと引き下げ、

口に手を当てて歓喜のような、悲鳴を上げた。


お約束通り、女性の顔も黄色人種のそれとはかけ離れていた。




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