森の中 (5)
扉から中を覗くと、小屋の広さは6畳ほどだった。
家具はほとんど無く、簡易なベットが一つと暖炉がひとつ、テーブル代わりに使えそうな箱の上にランプが一つ置かれているだけだった。
先に入った男が暖炉に火を点けたのか、暖炉の中の木は少しずつ燃え始めていて
寒かった梨花は、一目散に暖炉の前に座り込んだ。
暖かい!!
雨・風が凌げるっていうのは、すごいことなのね。
と、今まで当たり前に思っていたことをつくづく実感していると、肩になにやら毛布のような物がかけられた。
毛布には留具のようなものが付いており、どうやらマントのようである!!
「マント????」
マントなんて見たことないから思わず叫ぶと、男が梨花の前に来て顔を覗き込み
「×××××?」
何かを梨花に聞くけど、やはり聞いたこと無い言語なので首を傾げる。
すると、また男がまた何かを話す。
何度か繰り返した後、男は疲れたのか諦めたのか口を閉ざして少し離れた位置に座った。
見知らぬ男と一晩小屋で過ごすのは気が進まなかったが、今更一度ぐらい惜しむほどの体でもないし、
それに小屋の外に出て不安に駆られるより、男と共にベットにいたほうがマシな気がした。
それに、これほど非現実的なことがあったのだから、極上の男に抱かれて、
それも今日一日の思い出に加えるのもいいかもしれない。
男なら、今までの彼たちと違って、力強く抱いてくれるに違いない。
そう考えていると、男は立ち上がって梨花の肩を軽く叩き、指でベットのほうを指差した。
部屋も暖まってきたし、そろそろということかしら?
それにしても、もう少しムードとか考えないのかしら?
と思いながら、立ち上がってマントを引きずりながらベットへ向かい始めると男は安心したように、
暖炉近く壁にもたれながら床に座った。
どうやら、殺されることもなければ、抱かれることもないらしい。
ここまで、読んで頂いてありがとうございます。
一応主役が結構場数を踏んでそうですので、R指定をつけさせて頂くことにしました。