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my sense  作者: 桜井 璃衣
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森の中 (2)

なんで、切り株に座っているの???


梨花は、タクシーで資料をチェックしてたはずだ。

視線を、下にずらすと膝の上には資料がのっている。


この姿勢のまま、タクシーから切り株に移動したってこと?

理解できない!!!


ということは、夢に違いない。

古典的だけど、ここはひとつ、ほっぺをつねって・・・・


ほっぺをつねると、ファンデがよれそうなので、手首で。

ちなみに、手の甲は、整形できない部位なので、つねるのはNG。。


つねってみると、ちゃんと痛い。

ってことは、現実?


携帯を確認すると『圏外』。

ただいまの時刻、14:41

ってことは、タクシーに乗ってから10分くらいしかたってない。

奥多摩とか??その辺の森にいるのかしら?


早く帰らないと、社内会に遅れてしまう。

どうしても、提案したい事項があるというのに。



とりあえず、『圏外』は電力消費が激しいというウワサを信じて、

電源OFFにして歩き出す。


森って、すごく冷え込むのね。


初夏の今、半袖カットソーに、長袖膝丈のスーツは、夏素材とはいえ暑かったのに、

今は涼しいというより若干寒く感じる。


しかも、雲行きが怪しいのかなんなのか、夕方?って感じの空模様。


しかも、切り株から立ち上がって歩き出した梨花の目の前は、

ひらけているとはいえ、9センチヒールで歩くのはかなり無理がある。


持ち物は、紙袋に入った新作のファンデとブランドのバックで、

落とすわけにはいかないし、何の役にも立ちそうもない。


歩いても歩いても梨花の視界の中は、森のまま。


だんだん、最初より薄暗くなって腕時計の針も読み辛く、

立ち止まって確認すると、午後4時前。


いつも歩きまわらない足に森歩きは、かなりの負担なのに、

たいした運動ではないのか、立ち止まるとキュっと寒さを感じる。

もう、涼しいとかそういうレベルじゃない。


思わず出てしまうクシャミが、すごく反響する。

よく考えたら、今まで無音というか、『しーん』とした木の音?しかなかった気がする。


森に来たのなんて初めてだから、よくわからないけど、

きっと嫌いな虫がいっぱいいて、その音とか?小動物の動く音とか?しそうなものじゃない??


と思うと、さっきまで強気にアスファルトを目指して歩いてた自分が信じられないくらい、

今、いるこの森が非常に怖い。。


梨花は、もう一歩も進めない気がした。


周りをよく見ると、切り株の周辺のような開けた感じからは程遠く、

けもの道のような道なき道が、前に続くのみ。


この先に、蛇がいたら?蛙がいたら?虫が飛んできたら??


立ちすくんだ梨花に、風の音まで、大きく鮮明に聞こえはじめた。



突然、枯葉を踏むようなガサって音が斜め前から聞こえる。

身体の全身が硬直する。


小さい木のかげから出てきたのは、大型犬ぐらいの大きさの豹。


思わず、息を止めて豹をじっと見る。


身体の大きさは、それほど大きくなくても、

梨花をきっと一撃で仕留めることができる余裕からか、

豹もどきの彼は、しなやかに木陰から現れた距離を保ったまま、

知的な目線で観察している。



最初は、恐怖を与えた豹だったが、攻撃する気配がないので

少し目の前の豹を落ち着いて見てみる。


たぶん、豹って黄色に茶色い斑点がついた動物よね?

今、目の前にいる彼は、濃いグレーの身体に、漆黒の斑点をつけてるのよ。

これが豹なのかどうか不明なんだけと。



もしかしたら、めすかもしれないけど、動物と侮れないぐらいの知的な雰囲気から

『彼』と呼ばせてしまうような豹は、全く攻撃する気配がないの。


しばらくすると、付いて来いという感じで、首をかしげた後、

背を向けて、梨花の進むべき方向へ、ゆっくりと歩き始めた。


この場所で立ち止まって死を待つより、はるかに豹に付いて行くほうが、

生きることに繋がる気がした。

梨花も、黙って彼に従って歩く。


本当に、あたりは暗くなってきた。

もう、夜一歩手前って感じ。


突然、彼が立ち止まると、そこは梨花が一番最初に森で座っていた切り株の前だった。


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