帰る術 (3)
あまりのありえない行為に、気を失いかけたけど・・・・・
また、気を失ってる場合ではない!!
「ちょっと!!何してるの?離して!!」
いきなり人の指を切って、血液同士をつけるなんて!!
エイズにでもかかってたらどうするつもり?
力ずくで指を剥がそうとするけど、足場の悪いベッドの上では何の効力もなく、クラウドはびくともしない。
「動くな!ケイヤクをしているだけだ。直に終わる。」
「ケイヤク?」
「私がそなたを守るという契約をしている。」
契約!!
なんでいきなり契約しているわけ?
「勝手に契約しないでくれる?だいたい、双方の合意の上で契約するものでしょ。それに守ってくれるっていうけど、頼んだ覚えも無いわ!」
梨花がいくらひどいことを叫んでも、クラウドは指同士をくっつけたまま動じない。
慌てふためいたのは、アンジとローレンである。
「リカ!!デンカになんてことを言うんだ。普通は、契約などして頂けないんだぞ。」
いつもは、冷静で高飛車なローレンとは思えないほどの狼狽っぷりである。
「よし。コレぐらいでいいであろう。
理不尽であったかもしれないが、この契約でそなたを牢に入れたり、粗末に扱うことが無いことを保障した。
この領地は、この国の辺境にあり、少しでも元いた世界に返りたいのであれば、様々な知識が手にはいる都にいたほうがいいと思うがそうではないか?
私の名は、クラウディッシュ・アロ・ライラークという。
わが国ライラークの第5王子である。
その私が誓ったのだ。そなたへの危害を加えぬことを。
ココに留まることが、そなたにとって利があるとは思えぬ。
一緒に王都へ向かって欲しい。」
クラウドがこんなに長く話すなんて!!
梨花は、クラウドの話した内容の半分ぐらいしか分からなかったが、彼の言うとおりだと思った。
日本に帰りたければ、こんなところで隠れていてはいけない。
折角手に入れたPR職でもっと羽ばたかなくては。
そして、クラウドが王子であったとは。
道理で、王子と言う言葉を、アンジが教えてくれたワケだ。
ちなみに、後日知ることになるのだが、アロというのは5番目のという意味に当たるらしい。
クラウドの説得は、なんとなく梨花の胸の中にストンとはまった。
保守的思考なんて、梨花らしくない。
もっと攻めなくては!!