領主の家 (2)
ローレンの馬に乗せてもらい、後ろにローレンが跨ると馬はトロトロと歩き始めた。
「今から『かいもの』にいこうと思うから、何が欲しいか考えとけ。」
かいもの?かいもの?買い物!!
「えっ。買い物?」
「ああ、買い物。この町に一つだけある商店だ。」
「うそ?すごいうれしい!!」
思えば日本にいるときは、通勤途中にコンビニやカフェにより、お昼はランチに出かけ、小腹がすいたらコンビニに走り・・・・
と、買い物をしない日など無かったのに、ココに来てから一度も財布を出してない・・・・
「あっ、私お金もってないよ。」
ビックリして後ろのローレンを見上げながら梨花がいうと、
「誰がおまえに金をださせると思うのだ。おまえの国とは違う貨幣を使ってるだろう。」
という意味に絶対違いない。。(正確にはまだ聞き取れないのよっ)
分からない単語を織り交ぜながら馬鹿にしたようにローレンが答えた。
何日前かにお金について教えてもらったのは、ココへ繋がるのね。
そうですよね。
見ず知らずの道に落ちていた女を拾って(拾ったのは別人だけどさ)、今のところ養って頂いてますもんね。
でもさ、ローレンって明らかに自分だけに命令形で話すようなのだが気のせいなのか?
メイドさんやアンジと話すときは絶対丁寧語で喋ってる気がすると梨花は思う。
やっぱりただ飯食いだから?きっとそうだよね。
そして、今日は梨花に買い物を教えるためにお金まで直接渡さなきゃいけないし、やってられないよね。
「ありがとう。ローレン。」
ローレンに誠意を込めて、馬上だから控えめにお辞儀をすると、いまさらだという感じで頭に手をポンとされた。
この人、梨花が背が低いからって何歳だと思ってる?
そういえば、クラウドは?
ローレンの家に連れられて着てから一度も見ていない。
やっぱり、あの山の中に住んでいるから見ないのか?
ちょっとは話せるようになった今、拾ってくれたことをちゃんとお礼言いたいなと思う。
このまま、お礼も言わずに日本に帰るのは忍びない。
「ローレン、クラウドは?」
一瞬間があき、「この町にはいない。」とローレンは言った。
あのさ、自分と違って君は語学習得中ではないよね?
そんなに短い返答じゃなくて、もっと分かりやすく話そうぜと梨花は思った。
きっと、クラウドのことは聞くなということなのだろう。
でなければ、2週間もの間、アンジやローレンから何かしらの話があるはずだ。
この2週間の間でクラウドについて聞いたことは、メイドさんからだけだ。
彼女たちも初めてみたらしく、「素敵な方でしたね。」と目をハートにさせていて、
逆に梨花に「あの方はどういう方なんですか?」と質問をしたぐらいだ。
まぁいい。クラウドのことは置いといて、これからいく買い物のことを考えなきゃ。
なんだろう?何屋さんだろう?
買いたいものを考えとけというぐらいだから、食材とかを売ってる店ではないだろう?
「どんな商品を売ってるの?」
「いろいろだ。この町に一つしかない商店だから、町の人が必要だと思う物があると思うけど。」
ローレンの回答からすると、コンビニみたいな感じかしら?
まぁ、この町の生活を見る限り、日本のようにキラキラと電灯がついていたりはしないだろうけどね。
「ローレンは、何、買った?」
「買い物をしたことは無い。まぁ、あまり期待するな。」
はぁ???
この町に一つしか無い商店で買い物したことないの?
ローレンってどういう生活しているの?
メイドのロゼッタがこの町にはあまり来ないって言ってたからってことなのかしら。
「着いたぞ。」
ローレンに言われて前を見ると、そこは普通の家っぽい感じの建物だった。