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幕間:ヴィオレットの日記#2

6月4日


 先日は少し取り乱してしまった。

 ご心配をおかけしたけれど、もう大丈夫。いつも通りに過ごしている。


 あの人が戻ってきた。怪我をされていたが、日に日に顔色がよくなっている。朝の挨拶の声も、以前と変わらない。丁寧で、少しだけぎこちなくて、あの人らしい声。


 庭のリナリアがまだ咲いている。六月に入ったのに、まだ咲いている。今年は花の持ちがいい。


 紅茶が美味しかった。今朝の茶葉はネリーナが選んでくれたもので、少し香りが強い。


 何も変わらない。何も変わっていない。




 「お上手でいらっしゃいますこと」




            *




 6月11日


 先方とのお話は纏まらなかった。ご縁がなかったのだろう。

 先方はとても礼儀正しい方で、傷物のわたくしなどあなた様にはもったいないと申し上げたところ、大変ご満足のご様子でお帰りになった。ご自身の器量をよくご存知の方というのは、お話がしやすくてよい。


 ところで、東回りの交易路の件。先方のご実家が関わっておいでの陸運組合との契約を見直す時期が来ている。現行の条件では輸送費の割り増しが当家の負担に偏っているため、秋の更改に合わせて条件を整理しておきたい。詳細はネリーナに任せる。


 刺繍を少し進めた。糸の色は決まった。




 「商談の件、手配済みです」

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