第2話 私の可愛い駒
広間に響くナイフとフォークの音が、
やけに大きく感じる朝。
私はゆったりと紅茶を口にしながら、
向かいのリリアをじっと眺めていた。
「そんなに見つめられると、
恥ずかしいです…お姉様」
怯えた声。可愛い。守りたい。"壊したい"
(全部、私のものなんだから)
「可愛い妹を見ているだけよ。
私が見てはいけない理由でも?」
にっこりと微笑むとリリアは困った顔をした。
泣き出しそうな子を追い詰めるのは、
なぜこんなに心が躍るのかしら。
アレクの名前を思い浮かべただけで、
胸の奥が熱くなる。独占欲というより、本能。
私の婚約者。私の。
私の。
「近いうちにアレクと三人でお茶会をしましょう?」
「……アレク様と、ですか?」
震える声。
“何か”を悟った顔。
遅いわよ、リリア。
私はずっと前から知っている。
あの視線。
彼はあなたを見ていた。
あなたも――返していた。
(私を、笑わせないで)
「妹を紹介したいの。いいでしょ?」
「……はい。お姉様が……そうおっしゃるなら」
その返事。従順なふり。
本当は、私に刃を向け始めているくせに。
ずっと、私だけを見て泣き笑いしていた
昔のリリアは、どこへ行ったのかしら。
「アレク様は、とても優しい方ですから」
その言葉、聞き捨てならない。
どうしてそんな顔で言うの。
(ねぇ、リリア。奪われる痛みを知りたいの?)
紅茶に映る私は、笑っているのに――
底のない闇のような瞳をしていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
次回もぜひ、私の狂った妄想にお付き合いください。




