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第六話 「村の助っ人」

あの日から一年が経った。

お母さんは体調が良くなったものの、ときどきまだ再発する。

村の医者いわく、それはお母さんが患ったうつ病の後遺症らしい。

治るには……きっと長い時間がかかるだろう。


その間、僕は村で仕事をするようになった。

お父さんほど力にはなれないけれど、できる限りのことはしている。

今日はフィリッパさんのところへ向かう予定だ。

赤い巻き毛に、少しシワのある顔、そしてオレンジ色の瞳をした女性。

料理に使う食材を集めるのを手伝ってほしいと頼まれていた。


僕はまだ、お母さんのようなスタッフを持っていない。

本当は欲しいけど……

お母さんは「まだ早い」と言っている。

でも、それが嘘だということはわかっていた。

本当は僕に冒険者になってほしくないのだろう。


村で仕事をする、と言ったときも、お母さんは「子どもだから」と叱った。

けれど……結局は折れてくれた。

お母さんは、僕には口で勝てないから。


それに、去年——

お母さんは僕のマナの量を見て心から驚いていた。

最初の訓練のあと、「こんなに大量のマナを持つ人は初めて見た」と言ったほどだ。


つまり、僕には治癒魔法を「習得するための生まれつきのスキル」がなかったんだ。

この一年で、僕は水・氷・光の魔法に親和性があることを知った。

光魔法はマナ消費がとても多いので、一日に5回以上使うのは禁止されている。

お母さんはこの一年で、僕にこの三種類の魔法をみっちり叩き込んだ。

……お母さんはとても厳しい。

最初の訓練と比べれば、もう10倍は厳しい。


僕は、自分が『悪役』にならないとお母さんに理解させる必要があった。

お母さんは、僕のマナは『至高』か『破滅』レベルに達していると信じている。

正直……少し大げさだと思う。


僕は僕だ。

リリエンとダリエンの息子。

とはいえ、お母さんが怖がるのもわかる。

自分でも、これほど多くの魔法に親和性があるとは思っていなかったのだから。


この一年、僕はずっと考えていた。


——無詠唱魔法は可能なのだろうか?


試してみたいけど……今はその時じゃない。

ジャケットを着て、出かける準備をする。

クローゼットを閉める音を聞きつけて、お母さんが声をあげた。

「アード!マフラー忘れないでね!ジャケットもしっかり締めるのよ!」

「はい、ママ!」


階段を降りてドアを開けると、お母さんが急いで近づいてきた。


「遅れちゃダメよ……今日はすごく寒いから!道も滑りやすいの、気をつけてね!」


……お母さんは、相変わらず完璧だ。


「うん、ママ!」

本当に心配性だと思うけど……

それでも、僕はお母さんが大好きだ。


これまでお母さんがしてくれたことの全てに、僕は一生かけても恩返しできない。

家を出ると、庭でお父さんが剣の訓練をしているのが見えた。

お父さんは毎日欠かさず剣を振っている。

暑い日でも、寒い日でも。


「おはよう、お父さん!」


訓練を止め、お父さんは大きな手で汗を拭いた。


「おはよう、アード。村に行くのか?」

「ええ」


お父さんは剣を置き、鞄から羊皮紙を取り出した。


「アード、これをルイーズ夫人に渡してくれるか?」


中身が気になり、僕はつい聞いてしまった。

「お父さん、この羊皮紙には何が書いてあるの?」


お父さんは首を横に振った。

「気にしなくていい。渡せるかどうかだけでいい」


気になるけど……

僕は頷いた。


障壁だろうか?

強力な魔法?

もしかして召喚……?


ああ、気になる!

こういう『隠し事』、本当に嫌だ。


羊皮紙を鞄にしまい、村へと向かった。


***


村へ向かう途中、マットさんに出会った。

ほとんど髪のない白髪混じりの老人で、背中は曲がり、スタッフを頼りに歩いている。

重そうな薪を、背中いっぱいに背負っていた。


苦しそうだったので、僕は近づいた。


「おはようございます、マットさん!」


立ち止まった彼は、少し驚いたように僕を見た。


「おお……アーデンか。おはよう」

「運ぶの、手伝いましょうか?」

「そうだな……助けてくれるなら、この薪を家まで運んでくれんか?」


僕はうなずいた。

マットさんは村で一番の高齢者だ。

子どもたちは皆エルドヴァっ越してしまい、今はひとり暮らし。

商売がうまくいっていないらしく、頻繁には帰ってこられないという。


僕は薪を持った。

腕が小さいから、たくさんは運べない。

でも、誰かを助けたいという気持ちが大切なんだ、とお母さんとお父さんは教えてくれた。


年配の人に重いものを一人で運ばせるなんてできない。


家は村の入口から左、一番手前の家だ。

暖炉のそばに薪を置くと、マットさんが僕の手を握った。


「ありがとう、アーデン!礼だ」


銅貨を二枚、僕の手に乗せてくれた。

「どういたしまして、マットさん。手伝えてよかったです」


一礼し、僕はまた自分の仕事に戻った。

だけど、まずは整理だ。

今日は——

①フィリッパ夫人の食材集めの手伝い

②ルイーズ夫人へお父さんの羊皮紙を届ける


人々に挨拶しながら歩くと、皆、同じように挨拶を返してくれた。

両親が教えてくれた通りだ。

フィリッパさんの家は村の端――そう思っていた。


だが、最近、彼女の家よりさらに先にもう一軒家があり、誰が住んでいるのか誰も知らないという噂を聞いた。


調べたい。

……けど、今は仕事中だ。


***


フィリッパさんの家に着いた。

振り返ると……本当に遠い。

もしここが『村の端』なら、そのさらに奥にあるという家は、一体どれほど遠いのだろう。

あとで、少しだけ調べてみたい。


僕はドアをノックした。


……反応がない。


庭にいるのだろうか?

裏側を見に行ったが、誰もいなかった。

家の前に戻ると――


「アーデン……?ここで何をしているの?」


壁の横から声がした。

「おはようございます、フィリッパさん!今日は食材を集める約束だったので、来ました」


彼女の表情が固まった。

緊張している……何か隠しているようだ。


「何かあったんですか?」

「あっ、その……ね……あなたが来ないと思って……僕ひとりで行ってしまったの……」


……え?

一人で?

僕、こんなに楽しみにして来たのに……。


「そう……でしたか。知りませんでした。では、失礼します」


横を通り過ぎようとすると、彼女が慌てて呼び止めた。


「アーデン!せっかく来てくれたんだから……何か飲んでいかない?」


僕は迷ったけれど、断る理由もなかったので頷いた。

それから数分――ほんの10分ほどで家を出た。

もう、彼女の顔を見るのがつらくて。

あれほど楽しみにしていたのに、置いて行かれたなんて……。


……まあいい。

次は、ルイーズ夫人に羊皮紙を届けよう。


ああ…あの魔法、いったい何ができるんだろう…

お父さん、教えてくれればよかったのに…


巻物には2種類ある。

①青いリボンと印章 → 魔法陣の巻物

②赤いリボンと印章 → メッセージの巻物

メッセージの巻物は、ギルドが家まで届けるか、家にいなければ最寄りのギルドに預けられる。


僕は昔、この仕組みにとても悩んだ。


――冒険に出ているとき、どうやって僕の居場所がわかるんだ? と。


実際は簡単で、ギルド同士が繋がっていて、巻物は宛先のギルドへ回されていくらしい。

一方で、魔法陣の巻物については、お母さんと一緒に何度か実験した。


結果――

巻物に描かれた魔法であれば、親和性や実力に関係なく発動できる。

呪文を唱える必要もなく、魔法名を言うだけで発動する。


ただし、一回きり。


つまり『ヒーリング』を何度も使う必要があるなら、その回数分だけ『ヒーリング』の魔法陣が描かれた巻物をいくつも買わなければならない。

便利だけれど、高くつく。


……なんにせよ、まずは届けに行こう。

ルイーズさんの家に着いた。


彼女は五十代の女性だけど、三十代に見えるほど若々しい。

茶色い髪をポニーテールに結んでいて、体型も普通。

お母さんが言うには、こういう人は珍しいけど、たまにいるらしい。


僕はドアをノックした。

中から女性の声がした。


「はーい、今行きます!」


扉が開くと、キッチンからいい香りが漂ってきた。


「あら、アーデン!今日はどうしたの?」


どうやら料理中らしいが……何を作っているのか匂いだけではよくわからない。

つい覗き込んでしまったが、見てもやっぱりわからなかった。


「アーデン、何か用?」


ぼんやりしていた僕に、彼女がもう一度聞いてきた。


「いえ、その……お父さんから頼まれた羊皮紙を届けに来ました」

「あぁ、そう!ありがとうね、アーデン。少し待ってて」


彼女は家の中から二つの物を持ってきた。

・銅貨が二枚

・食べ物がたくさん入った大きな鍋


「これ持てる?重くないかしら?」


僕は大丈夫だと首を振った。


……しかし、どうしても気になる。

この羊皮紙には何が書いてあったのか。


僕は思い切って尋ねてみた。


「ルイーズさん……ひとつ、聞いてもいいですか?」

「ええ、アーデン。何かしら?」

「この羊皮紙……中には何が書かれているんですか?」


すると、彼女は僕の目を見つめ、ふっと笑った。


「あら、おお父さんは教えてくれなかったのね?」

「いえ……」

「たいしたものじゃないけれど……見てみたい?」

「見ていいんですか!?」


嬉しすぎて、少し声が上ずった。

ずっと気になっていたのだ。


障壁?

攻撃魔法?

強力な結界?


何でもいい、ただ知りたかった。


「もちろんよ。入ってらっしゃい」


僕は彼女の家に上がった。


中は、とてもシンプルで、必要な物だけが置かれていた。

派手さがなく、けれど綺麗に整っている――そんな家だった。

彼女は巻物の封をゆっくり剥がした。


そして、広げて――

「クリーニング!」


瞬間、家の中が一気に輝くほど綺麗になった。


「………。」


僕は完全に固まった。


まさか……

ただの清掃魔法の魔法陣だったなんて。


障壁でもなく、攻撃魔法でもなく……部屋掃除。

がっかりした。

本当に、ものすごくがっかりした。


しかも、これは一回きりの巻物。

それを無駄に使わせてしまった罪悪感が押し寄せる。


「ルイーズさん……その……すみません……」

「どうして謝るの?」

「だって……一度しか使えない巻物を……」


彼女は優しく笑って、僕の目線までしゃがみこんだ。

「アーデン、いいのよ。どうせそのうち使うつもりだったし。気にしないで?」


そう言って、僕をそっと抱きしめてくれた。

僕は頷き、大きな鍋を抱えて、ゆっくりと家に向かって歩き出した。


日本語は完璧ではありませんが、一生懸命書いています。

間違いを見つけたら、コメントで教えてください。

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