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第三話 「リリエンの最後の任務」

※今回はややエロい描写があります。

R15の範疇に収まるように気をつけたつもりですが、ギリギリアウトかもしれませんので、苦手な人はご注意ください。

リリエンは、仲間たちと待ち合わせているはずのギルドに到着した。

彼女は15歳になって数か月、このパーティーにはもう二年所属している。

役割は、仲間を支えるサポート系の魔法使い。

そして——彼女は有名人だった。

ヴァリーンの街にいる女性たちは皆、悩みや相談をしに彼女のもとを訪れる。

だからこそ、彼女はあまり長く街中を歩くことができない。

仲間たちを見つけると、リリエンはそのテーブルに向かって歩き、静かに腰を下ろした。

彼らはすでに酒を飲んでいた。

酒と焼き肉の匂いが、カップがぶつかり合う音と、冒険者たちの笑い声と混ざり合っている。

ダリエンは、すでに出来上がった顔で彼女を見て、にやりと笑った。


「おやおや、誰かと思えば——ヴァリーンで有名な『あのおばさん』のご登場だ」


その瞬間、リリエンの目が鋭く細められた。

怒りを宿した視線でダリエンをにらみ、その細い手でテーブルをバンッと叩いて立ち上がる。

残りのメンバーは、ごくりと喉を鳴らし、思わず一歩、二歩と距離を取った。

彼らは「ヴァリーン最強のパーティー」として恐れられていた。

構成は、剣士、タンク、魔法使い、暗殺者、そして戦士。

それぞれの名前は、ダリエン・カエリス、ブラウメル・カエン、リリエン・ヴァルメール、カエル・ヴァリス、ソーリン・ブラグミア。


当のダリエンは、自分がどれだけ面倒な地雷を踏んだかも気づかず、上機嫌で踊りながら、さらに酒をあおり続けていた。

リリエンは、ふらつく彼のそばに近づくと、その耳を容赦なくつまみ上げる。

ダリエンは情けない悲鳴を上げながら引きずられ、二人はそのままギルドの外へと連れ出された。


ダリエンは、なおも空気を読まず、リリエンのお尻をさわろうと手を伸ばした——が、運が悪かった。

その瞬間、リリエンは彼の腕を取って前に投げ飛ばし、そのまま掌に魔力を集中させる。


「静寂が支配するところには、流れが応える。

 清らかな水が野を洗い、混沌を押し流しますように——

 『ウォーター・ボール』」


彼女の手のひらの上で、水が球となって激しく回転し、抑え込まれた怒りに呼応するかのように、周囲の空気さえ震わせた。

水球はダリエンに直撃し、その勢いで地面に叩きつけられた彼は、転がりながらびしょ濡れになった。

その衝撃で、彼の酔いは一気に吹き飛んだようだった。

状況が飲み込めず、目を白黒させるダリエン。

だが、怒りに染まったリリエンの顔を見た瞬間——

自分が「やってはいけないこと」をしたのだと理解し、慌ててひざまずいて頭を下げた。


「ご、ごめん、リリエン、本当に悪かった!」


リリエンはぷいと顔をそらし、鼻を鳴らして言う。


「ふん」

「罰として、三日間は別々の部屋で寝るからね!」

「そ、それは……勘弁してくれ……!」


ダリエンは必死に懇願した。

ちょうどその頃、他のメンバーたちが心配そうに二人のもとへやって来た。


「みんな! リリエンに言ってくれよ! 別の部屋で寝るのだけはやめてくれって!」


ダリエンは半泣きで訴える。

しかし、他のメンバーは口をそろえて、「いや、それはお前が悪い」と、きっぱり断言した。


ダリエンは自分の味方が一人もいないことに震え上がり、「俺、そんなにやばいこと言ったか……?」と、逆に不安になっていた。


そのとき、ソーリンが話題を切り替えるように口を開いた。


「リリエン、ダリエン。その話はひとまず置いとけ。グランドマスターが俺たちを呼んでる」


リリエンはダリエンに背を向け、表情を整えながら、再びギルドの中へ戻っていった。

ダリエンは、なおも「行かないで」と手を伸ばしたが、その手はあっさり空を切った。


***


五人はグランドマスターの部屋に呼ばれ、中へ入った。

そこにいたのは、五十代後半ほどの、がっしりとした体格の男。

短く刈り込まれた白髪、顔の半分を横切る深い古傷——

それだけで、歴戦の冒険者たちですら黙らせる迫力があった。

彼こそが、ヴァリーンギルドのグランドマスター、ウルリック・ドレーナーである。


「到着しました、ギルドマスター、ウルリック・ドレーナー殿」

「うむ……座ってくれ。楽にしていい」


五人は部屋に並ぶソファに腰を下ろした。

ほとんど休む間もないまま、空気が張り詰める。

ウルリックは、一度深く息を吸い込んでから口を開いた。

普段は力強いその声には、今日はどこか疲れと重さが滲んでいた。


「単刀直入に言おう。状況はよくない。

 数日前、ゴードナイド遺跡の迷宮に新たな階層と守護者が出現したという報告を受け、偵察隊を派遣した。

 しかし……奴らは戻ってこない。おそらく、もうこの世にはいないだろう。

 本来ならば、俺自身が行きたいところだが、今はここで対処すべき重大な案件が山積みで、席を外せん」


ウルリックは、視線を一人ひとりに向ける。


「君たちは、ヴァリーンでもっとも強力なパーティーだ。

 この任務はSランクとして扱われ、報酬は5千ゴールドになる……

 俺の代わりに、この依頼を受けてきてはくれないか?」


部屋の空気が、一瞬で重くなった。

誰もが驚いたのは、偵察隊が戻らなかったことそのものではない。

迷宮の危険性は、冒険者なら誰でも知っている。

だが——問題は、その場所が「ゴードナイド遺跡の迷宮」だということだった。

ヴァリーン最強の彼らでさえ、この迷宮が「世界でもっとも危険な場所のひとつ」であることを知っていた。


「ゴードナイド遺跡の迷宮って、アウンドラ市の近くにあるんじゃないか?」


ダリエンが確認するように尋ねる。


「ああ、その通りだ」


ウルリックはうなずいた。


「俺の記憶が正しければ、ダリエン。あそこは、そもそも辿り着くこと自体が難しい地域だ」

「ええ、わかっています。俺たちも一度だけ行きましたからね。

 ……正直、二度と行きたくない場所ですが——」


ダリエンは一瞬だけ視線を落とし、すぐに持ち上げ、強がるように笑った。


「でも、ウルリック、あなたの依頼なら、断る理由はありません。俺たちが行きましょう」


強さを見せようとするその声には、かすかに不安が混じっていた。


ウルリックは、彼らと自分の間にある机に両手をつき、そのまま深く頭を下げた。


「……感謝する」


その瞬間、部屋にいた全員が息を呑んだ。

ヴァリーンの「強さの象徴」である男が、彼らの前で頭を垂れている——。

グランドマスターから直接依頼を受けること自体は、珍しくない。

しかし、ウルリックがここまで頭を下げるのは、異例中の異例だった。

しばらくして、リリエン以外のメンバーは部屋を出ていった。

ウルリックが、彼女にだけ残るよう合図したからだ。

リリエンは、少し戸惑いながらも、再びソファに腰を下ろした。

心臓が早鐘を打つのを感じつつも、彼の言葉を待つ。

ウルリックは腕を組み、眉間に皺を寄せた。

その厳しい表情の裏には、まるでお父さん親のような心配が隠されていた。


「リリエン。ダリエンは、お前のことをちゃんと大切にしているか?」


穏やかな口調でそう尋ねたかと思うと、突然声を荒げる。


「もし、そうでないなら——あいつを殴り飛ばしてやる‼」


リリエンは慌てて両手を振り、苦笑しながら答えた。


「だ、大丈夫よ。ちゃんと守ってくれているわ。心配いらない」


ウルリックは、ふうっと息を吐き、肩の力を抜いた。

リリエンもつられて、緊張の混じった笑いをもらす。


その笑い方を見て、ウルリックは目を細めた。


「……今の笑い方は、昔のことを思い出しているときの顔だな」


そう言うと、ウルリックは立ち上がり、ダリエンの名を大声で呼びながら、ギルド全体に響く勢いでドアに向かって行こうとした。

リリエンは慌てて彼の腕をつかみ、止めに入る。


「ま、待って! 本当に大丈夫だから!

 今のは、ただいい思い出を思い出しただけよ!」


彼女は両手をテーブルの上について頭を下げ、そのまま額を木の天板にコツンとぶつけた。


「ウルリック……今まで私のためにしてくれたこと、全部に感謝してるわ。

 あなたがいなかったら、私はきっと、とっくに飢え死にしてたと思う。

 あなたは――これからもずっと、私にとってお父さん親みたいな存在よ。

 絶対に忘れない。……ありがとう、おお父さん様」


一瞬、時間が止まったように部屋が静まり返った。

次の瞬間、ウルリックの目からは大粒の涙がこぼれていた。

彼女はどうしていいかわからず、ゆっくりと立ち上がると、ウルリックの隣に腰を下ろし、その肩に自分の頭をそっと預けた。


「……少しだけ、このままでいてもいい?」


ウルリックは何も言わず、ただ彼女をやさしく抱きしめた。

血のつながりはなくても——そこには、まるで本当の親子のような温もりがあった。


***


その頃、残りのメンバーはギルドの入口近くでリリエンを待っていた。


「なぁ、ダリエン。戻ってきたら、ぱーっと盛大に祝おうぜ!」


カエルが上機嫌で言う。


ダリエンは笑いながらうなずいた。


「そうだな……」


しかし、その言葉は、ちょうど戻ってきたリリエンのひと言で遮られる。


「——何を『そうだな』って?」


彼女は、じっとりとした視線でダリエンを見上げた。


「……やっぱり何もやめよう、みんな。何もしてないしな……」


ダリエンは、さっきまでの勢いが嘘のように、しょんぼりと肩を落とした。

ギルドが旅の準備を整え終えると、五人はすぐに出発した。

目的地までは、数週間に及ぶ長い旅になる。

夜になり、一行は野原に馬車を停め、

ダリエンが切り出した薪で焚き火を起こし、テントを張った。


見張りは交代制で行うことに決まり、最初の番はリリエンとダリエンの二人が担当することになった。

二人は焚き火のそばに並んで座り、これまでこのパーティーで過ごしてきた日々の思い出を語り合っていた。

楽しかった依頼、危なかった戦い、みんなで笑い合った夜。

やがて、リリエンは少し緊張した面持ちで、しかしどこか決意を秘めた目でダリエンの方を向いた。


「ねえ……ダリエン」

「ん?」

「この任務が終わったら——冒険者をやめて、私たちだけの家族を作らない?」


串に刺した肉を口に運んでいたダリエンは、その言葉を聞いた瞬間、盛大にむせた。


「げほっ、げほっ……! な、なんだよ、急に⁉ 

 いきなりそんなこと言うなって……!」


「……嫌なの?」


リリエンの顔から、ふっと色が消えた。まるで、長年見ていた夢が粉々に砕け散ったかのような表情だった。


「ち、違う! 違うよ! 嫌じゃない! 全然嫌じゃない! 泣くなって……!

 ただ、その、心の準備がまったくできてなかっただけで……!」


ダリエンが慌てて弁解すると、リリエンは押し黙り、胸に手を当てて鼓動を確かめるように息を整えた。


——待つ。

——まだかな。

——まだ言ってくれないの?


彼女はずっと待っていた。

だが、ダリエンは、彼女が「プロポーズの言葉」を待っていることに、まるで気づいていなかった。

どれだけ待っても沈黙は破られず、リリエンの我慢はついに限界に達した。


「ダ・リ・エ・ン! いつまで私を待たせるつもり⁉」

「えっ!? な、何が? どうしたんだ、リリエン⁉ 

 どこか具合でも悪いのか?」


ダリエンは、本気で状況が理解できていない顔をしていた。

リリエンは怒りを抑えきれず、立ち上がって近くの小さな森の方へ足早に歩いて行ってしまった。

その様子を見ていたカエルは、深くため息をつきながら、ダリエンに向かって首を左右に振った。


「お前、本当にバカだな」

「なんでだよ⁉ どこがバカなんだよ俺⁉」


ダリエンが抗議すると、カエルはパンをひとかじりしてから、呆れたように言った。


「……あの子が望んでるのは『お前自身』なんだよ。まだわからねえのか?」

「俺が……何だって?」


ダリエンは、ようやく言葉の意味を追いかけ始める。

カエルはさらにため息をつき、「はぁ……ほんと、どうしようもねえな……」と、空を見上げた。

それでも、しばらくして——

ついにダリエンの頭の中で、すべての点と点が線につながった。


「カエル! わかった! 俺、行ってくる‼」

「おう。行ってこい。これ以上、あいつを待たせんなよ」


ダリエンは森の中へ駆け込んでいった。

しばらくすると、小さな丸太に腰掛け、光の玉に囲まれながら歌っているリリエンの姿が見えた。

彼は木陰に隠れるように立ち止まり、彼女の声に耳を傾けた。


「どうして、あの人は私の望みをわかってくれないの……?

 私がこんなに誠実で、真剣に向き合っているのに……

 どうして知らないふりをするの……?

 どうして『結婚してくれませんか?』って、私に言ってくれないの……?

 私の方が、何か間違っているの……?」


リリエンは、憂鬱な表情で、宙に浮かぶ光の玉のひとつにそっと触れた。

まるで友達に愚痴をこぼすように、静かに問いかけ続ける。

しばらく彼女は、一人で気持ちを吐き出し続けていた。

やがて、木々の間から足音が聞こえてくる。


「リリエン……」


ダリエンの声だった。


「愚かなことをして、本当にごめん。

 君の誠実さを無視した、どうしようもない男でごめん……

 君を悲しませて、本当にすみません。

 君を幸せにしたいだけなのに——君の言いたいことを、ちゃんと受け止められなかった俺が悪い。

 本当に……ごめん……ごめんな……」


リリエンは、そこで彼の言葉を遮った。


「『ごめんなさい』とか『すみません』とか、もう聞き飽きたわ……

 私の望みが、そんなにわかりにくい?」

「いや……正直、さっきの質問があまりにも急でさ。

 まだ頭の中で整理しきれてないんだ……

 でも――ちゃんと伝えたいことがある。

 その前に……隣、座ってもいいか?」


リリエンは、ふっと息を吐き、少しだけ右に体をずらして、彼が座れるスペースを空けた。

ダリエンは、彼女の隣に腰を下ろし、真っ直ぐにその横顔を見つめる。

リリエンは、その視線に気づき、思わず息を呑んだ。

モンスターと戦うとき以外で、ここまで真剣な表情のダリエンを見るのは初めてだった。


「リリエン——」


ダリエンは彼女の両手を、しっかりと握り締めた。


「俺と、結婚してくれないか?」


一瞬、世界が静まり返った。

続いて、驚きと戸惑い、そして込み上げる喜びが、リリエンの顔に一気にあふれ出した。

青い瞳が潤み、頬は真っ赤に染まる。

片手で口元を押さえながら、彼女は笑顔を咲かせた。


「……はい‼」


リリエンは勢いよく彼に飛びついた。

その拍子に、彼女の柔らかい太ももがダリエンの息子に触れてしまい、彼の呼吸は一気に乱れる。

触れた感触は、甘く、柔らかく、ふわりとしたものだった。

彼女の脚は、小さな綿雲のように優しく、ダリエンの息子はその喜びを隠せないように、ますます主の顔を真っ赤にさせた。


リリエンも顔を真っ赤にしながら、両腕で彼の首に回し抱きつく。

胸を彼の胸に押し当てると、二人はゆっくりと顔を近づけ、深く口づけを交わした。

絡み合う指先は、これから始まる『新しい人生の一歩』を確かめ合うようだった。

その輝かしい夜——

この素晴らしい光景を見守っていたのは、静かに空に浮かぶ月だけだった。


翌朝。

ゆっくりと昇る朝日を背に、二人は急いで他のメンバーのもとへ戻った。

他の三人は、リリエンの様子をちらりと見たが、彼女がダリエンと交わした、あの照れくさそうな視線には、あえて気づかないふりをした。


***


二週間の厳しい旅を経て、ようやく彼らはアウンドラの街が見える場所まで辿り着いた。

岩山の上に築かれた、灰色の街。

古びた城壁は、山肌の岩と一体化したようにそびえ立ち、山を吹き抜ける冷たい風は、石と鉄と、冒険者たちが残していった血と汗の匂いを運んでくる。


この街は、あえてアクセスの悪い場所に建設されていた。

この地域には高レベルのモンスターが頻繁に出没し、複雑な地形が天然の防御壁となっていたからだ。

アウンドラは、今回の最終目的地である「ゴードナイド遺跡の迷宮」から、キャラバンで二日ほどの距離に位置している。

疲労困憊の一行は、ここで一度休息を取り、物資を補給してから迷宮へ向かうことにした。


それぞれが、短い自由時間を思い思いに過ごし始める。

リリエンは、商人たちがアクセサリーや色とりどりの布地を売っている木製の屋台が並ぶ通りへ向かった。

ダリエンは、数々の戦いで傷ついた剣を修理するため、地元の鍛冶屋へ向かう。

カエルは、気配を消すように静かに街路へと姿を消した。


彼がどこへ行ったのか、誰も詳しくは知らない。

一方、ブラウメルとソーリンは真っ先に地元のギルドへ向かい、そのまま夜まで酒を飲み続けるつもりでいた。

リリエンは、ふと目についたアクセサリーの店先で足を止めた。

棚には、宝石があしらわれた指輪やネックレス、そして耳飾りが美しく並べられている。


中でも、淡いライラック色のクリスタルで作られたイヤリングが、彼女の目を引いた。

月明かりのように繊細で、上品な輝きを放っている。

値札を見た瞬間、リリエンの顔がぴしっと固まった。


「……高っ‼」


心の中で憤慨しつつも、彼女は小さくため息を吐いた。

それでも、すぐに自分に言い聞かせるように微笑む。


「……ダリエンなら、もしかして買ってくれるかも。

 まずは彼を見つけないとね」


リリエンは街中を何時間も歩き回り、ついに遠くの方で、鍛冶屋から出てくるダリエンの姿を見つけた。

新しく研ぎ直された剣が、夕日の光を反射してきらりと光る。


「おーい、リリエン!」


ダリエンは笑顔で手を振った。

しかし、彼女は何も言わず、その腕を掴んでそのままイヤリングの店までずるずると引きずっていった。


「ねえ、ダリエン。このイヤリング、買って!」


彼女は、さっき見ていたライラックのイヤリングを指さしながら、期待に満ちた声で言う。

ダリエンは値札を見て、先ほどのリリエンとまったく同じ表情になった。


「……高っ‼」

「本当にこれが欲しいのか?」


彼は、自分の財布を見ながら、おそるおそる尋ねる。

リリエンは、いたずらを企んでいる子どものような笑みを浮かべ、彼の腕をぐいぐい引っ張った。

その目は、「断らせない」という決意でキラキラしている。

ダリエンは深いため息をつき、観念したように二枚の金貨を取り出して店主に渡した。


それは、剣の修理代を差し引いた残りのすべてだった。

財布がほぼ空になってしまったのを見て、ダリエンの胸は少し痛んだ。

それでも、イヤリングを耳につけて嬉しそうに笑うリリエンを見ていると——

その痛みも、悪くないと思えた。

その後、全員が合流し、宿屋へ向かった。

ブラウメル、カエル、ソーリンはイヤリングを見て口々に褒め、ダリエンが「パーティーで一番きれいな魔女にいいように転がされてる」と冷やかした。


宿の近くの居酒屋では、笑い声とワインのカップがぶつかり合う音が夜更けまで響いていた。

月が空高く昇る頃、それぞれが自分の部屋へと戻っていく。

明日、彼らはついに「ゴードナイド遺跡の迷宮」へ向かうのだ。


どれだけ経験を積んだ彼らであっても、その顔には隠しきれない緊張が浮かんでいた。


***


道中で、ランクAのモンスターたちとの激しい戦闘を何度も乗り越え、ついに彼らは迷宮の前へと辿り着いた。

ゴードナイド遺跡——

忘れ去られ、見捨てられ、今もなお静かに口を開ける古い石造りの巨構造物。


冷たく、陰鬱な石の壁の間から、巨大な門が軋む音を立ててゆっくりと開き始める。

先頭を歩くのは、ダリエンとブラウメル。

そのすぐ後ろに、ソーリン、リリエン、そしてカエルが続く。

通路を進むにつれ、壁に刻まれた古代のルーン文字が、青白い光を帯びて淡く輝き出した。


ダリエンは腰の剣の柄を、無意識のうちにいつもより強く握りしめる。

カエルは、袖の中に隠した骨の短剣の位置を確かめながら、じっと周囲をうかがっていた。


「本当に……ここで合ってるのか?」


カエルが低い声で問いかける。

ダリエンは黙ってうなずいた。

ただでさえ空気は重かった。

それに加え、この空間には尋常ではない量のマナが滞留している。

息を吸うだけで、胸の奥がじりじりと焼けるような感覚があった。


「……何か、おかしい」


リリエンは、肌を刺すような違和感に眉をひそめた。

迷宮の最奥から伝わってくる不気味な『振動』——それはマナの流れそのものだった。

その震えの強さに、彼女は思わず身震いする。

彼女の『内なる静脈(インナー・ヴェイン)』が、この場所を貫く『永遠の静脈(エターナル・ヴェイン)』と共鳴しているのだ。


「ここは本当に危険よ、みんな。気を抜かないで。

 永遠の静脈(エターナル・ヴェイン)が、この遺跡そのものとつながっている……」

「どういう意味だ、リリエン?」


ダリエンが、背後を振り返りながら問う。


「マナを使いすぎると、この遺跡そのものが崩れて——

 私たちも一緒に押し潰されるかもしれないってこと」


リリエンは、パーティーの人数が限られていることを思い出しながら、不安そうに続けた。


「つまり、火力を出したくても、好き勝手には暴れられないってわけか……」


ダリエンがそう言いかけたとき——


「みんな、武器を構えろ。何か来る!」


ブラウメルの声が通路に響いた。

ブラウメルが盾を地面に突き立てると、その金属音が石造りの廊下に反響する。

前方の影の中で、三組の青い目がゆっくりと光り始めた。

低い位置でうごめくその光は、猫科の獣のように円を描くように歩き回っている。

石をひっかく爪の音が、カツカツと近づいてくる。


「……黒曜石のケルベロスだ」


カエルが厳しい表情で呟いた。

やがて、闇の中からそれらの姿が現れた。

三つの頭を持ち、黒い岩で彫り上げられたような体躯。

全身を走る青い筋は、まるでマナを血のように巡らせているかのように脈動していた。

ダリエンは剣を抜き、すっと構えを取る。


「ブラウメル、左のやつを頼む! ソーリンは俺と一緒に真ん中!

 カエルはリリエンの護衛だ!」


三体の怪物が同時に咆哮し、地面が震えた。

一体目が、爪を光らせながらブラウメルに向かって突進する。


「盾を固めろ!」


衝撃で盾ごと後ろへと押し出され、土煙と火花が散った。

二体目のケルベロスは、ジグザグの軌道でダリエンとソーリンに突っ込んでくる。

ダリエンは横に跳びのきながら叫んだ。


「ソーリン、左だ!」


ソーリンはその声に合わせて斧を振り下ろし、ケルベロスの前脚の一本を斬り飛ばした。

黒曜石の破片が飛び散るが、獣はただ一歩後退しただけだった。


「痛覚がほとんどないのか……」


ソーリンが低く唸る。

リリエンは二歩ほど後ろへ下がり、深く息を吸い、聖樹製のスタッフを掲げた。

スタッフの先端に埋め込まれた水晶が、純粋な青い光を帯びて輝き出す。

彼女は目を閉じ、静かに詠唱を始めた。


「大地の胎内に眠る水よ、私の呼び声に耳を傾けよ!

 前進し、我々の前に立ちはだかる敵を打ち砕け――『ウォーター・ジェット』」


地面から、螺旋を描くように水柱が噴き上がり、ダリエンを襲っていたケルベロスの脇腹を、凄まじい圧力でえぐり飛ばした。

その一撃で怪物は壁に叩きつけられ、石が砕け散る。


「ナイスだ、リリエン!」


ダリエンはその隙を逃さず走り込み、地面を割りながら横薙ぎに剣を振るった。

刃は怪物の関節を貫き、その衝撃で青い火花が散る。

カエルは、骨の短剣を両手に握り、静かに側面から接近する。

魔法で濡れた床を滑るように踏み込み、跳躍した瞬間——

二本の短剣を、ケルベロスの首の根元へと突き刺した。


「今だ!」


ダリエンは身体を回転させながら、とどめの一太刀を振り抜く。

中央のケルベロスの頭部が、パキッと音を立てて割れ、その体はガラスのように砕けて崩れ落ちた。

反対側では、ブラウメルが咆哮と共に盾を全力で押し出していた。


「ソーリン! 入れ替わるぞ!」


ソーリンはその上を踏み台にするように飛び越え、斧を振り下ろした。


「オラァッ‼」


渾身の一撃が、左側のケルベロスの頭蓋を粉砕し、黒曜石の破片が黒い雨のように辺りへ降り注いだ。

残る一体は一歩後退し、全身に刻まれたルーン文字が激しく輝き始める。


「マナをチャージしてる!」


リリエンが叫んだ。

地面が低く唸りを上げる。

リリエンは素早くスタッフを掲げ、力強く声を放った。


「清らかな水よ、流れ、我々を包む盾を形成せよ。

 揺るぎない流れで衝撃を吸収せよ——『ウォーター・バリア』」


濃く、半透明の水の壁が、彼らの前にどんと立ち上がる。

ケルベロスの咆哮と共に放たれた爆発的な衝撃波は、その水の障壁にぶつかり、圧力と熱は、瞬く間に蒸気へと変わって霧散した。

熱を帯びた水滴が、青い雨のように彼らの上へと降り注ぐ。

音が止んだとき、怪物はひくひくと痙攣しながら、その場に崩れ落ちていた。


「ダリエン、とどめを!」


ダリエンはまっすぐ駆け出し、跳び上がると、剣を怪物の首元へと突き立て、そのまま心臓めがけて貫いた。

ルーンの光がゆっくりと消えていき、通路には再び静寂が戻る。

皆が一斉に深呼吸をした。

カエルは短剣についた欠片を布で拭い、ソーリンは斧を肩に担ぎながら、苦笑まじりに言った。


「一階からランクA級が三体か……

 これが一階ってことは、次は一体何が出てくるんだ?」


リリエンは額の汗をぬぐった。

彼女のスタッフは、まだ残留マナの振動でかすかに震えている。


「このペースを保てれば……まだ、勝ち目はある」


ダリエンはさらに奥を見据える。

通路は、螺旋状に下へと続いていた。


「行くぞ。まだ始まったばかりだ」


彼らは階段を降り始めた。

通路の終わりに辿り着いたとき、目の前には巨大な部屋が広がっていた。

天井は高く、壁は古びたルーン文字でびっしりと覆われ、奥の方からは、息苦しいほどの熱気が立ち上っている。

遠く——マグマと灰の裂け目の向こう側に、巨大な影がゆっくりと姿を現した。


巨像。

その肌は灼熱の岩と、生きた灰の静脈で構成されている。

一歩踏み出すたびに、床が震え、空気そのものが震動した。


「灰の守護者……⁉」


誰かが息を呑む。

そのような存在は、とっくに絶滅したとされていたはずだった。

ブラウメルは盾を掲げ、歯を食いしばる。


「こんなの、長く受け止め続けたら盾が溶けちまう!」

「リリエン、すぐにバリアを張ってくれ!」


ダリエンが叫ぶ。

リリエンは深く息を吸い込み、スタッフを握る手に力を込めた。

マナが全身を駆け巡り、スタッフに刻まれたルーンに集中していく。

空気は湿り気を帯び、重くなった。

宙には、水滴がふわりと浮かび上がる。


「清らかな水よ、流れ、我々を包む盾を形成せよ。

 揺るぎない流れで衝撃を吸収せよ――『ウォーター・バリア』」


透明で波打つ液体の壁が、彼らの前に立ち上がった。

守護者の最初の攻撃――灼熱した岩の塊が爆発を伴って飛来し、真正面から障壁に直撃する。

衝撃とともに白い蒸気が立ち込めたが、水の壁は辛うじて形を保っていた。


「ブラウメル、頼む、持ちこたえてくれ!」

「任せろ!」


巨大な黒鋼の盾が地面に深く突き刺さり、石床に亀裂が走る。

その背後で、ソーリンは斧を肩に担いだまま、いつでも飛び出せるように身構えていた。

ダリエンは前へ進み出る。

焼けつくような熱気が顔を襲うが、彼は一歩も引かなかった。


「——水のスタイル、『流れる水流』」


青いルーン文字が刃に浮かび、流体のようなオーラが剣を包み込む。

それは魔法ではない。

ダリエン自身のマナが剣を通って流れ出し、

空気を『水のような質感』に変えているのだ。

その動きは、川の流れのようにしなやかで、よどみなく、正確だった。

振るうたびに、水流が描くような軌跡を残し、刃が空を裂く音は、まるで川が岩を削る音のように響く。


彼は守護者の攻撃を紙一重で受け流しながら、関節部を狙って斬り込んでいく。

一撃ごとに、守護者の鎧にはひびが走り、噴き出した蒸気が灼熱の熱気と入り混じって霧になった。

守護者は咆哮し、巨大な腕を振り上げる。

赤熱した岩の拳が、ダリエンめがけて振り下ろされた。


ダリエンは身をひねってその一撃をかわし、青い光を帯びた剣で、その腕を真っ二つに叩き斬る——

裂け目から、マグマがどろりと溢れ出した。


「今だ、リリエン!」

「水の冷たい精霊よ、汝の息吹を刃に変えよ。

 大地を貫く槍のように刺し貫け——『アイス・ランス』」


三本の青い氷槍が現れ、一直線に守護者の胸へ飛来した。

突き刺さった地点から、爆発的な蒸気が吹き出し、その熱衝撃で岩の甲殻が割れていく。

カエルは、その一瞬の隙を逃さなかった。

後ろへ跳び退きながら、その露出した亀裂目がけて短剣を突き立てる。

巨人はうめき声をあげ、膝をついた。


「ダリエン、決めろ!」


ダリエンは跳躍し、頭上で剣を大きく振りかぶる。


「水流のスタイル——『流れの斬撃・終焉の一閃』!」


刃は鮮やかな青に燃え立ち、凝縮されたエネルギーが一気に解放される。

一撃――速く、連続的で、避ける隙を与えない斬撃。

川が長い年月をかけて岩を削り落とす、その瞬間だけを切り取って凝縮したような音が響いた。


守護者は粉々に砕け散り、その光も消えていく。

部屋は静まり返り、壁に滴る水の音だけが、ひんやりとした残響を残した。

砕け散った残骸の向こう側で、魔法陣が青く輝き始める。


「次の階層へ転移する魔法陣だ……」


リリエンが小さく呟いた。

一行は深く息を吐く。

カエルは額の汗を拭い、ソーリンは「もう二度と熱い石とは戦いたくない」とぼやいた。

ダリエンは、焦げた布で剣を拭きながら言う。


「ここが崩れる前に進むぞ」


その時、リリエンの身体がふらりと揺れた。

スタッフが指から滑り落ち、カランと乾いた音を立てて床を転がった。


「リリエン⁉」


皆が一斉に振り返る。

ダリエンが慌てて駆け寄った。


「大丈夫か⁉」


リリエンは、かすかに笑みを浮かべながら、スタッフを拾い上げるために身をかがめた。


「……ええ。ちょっと、疲れただけよ」


他のメンバーが再び魔法陣に意識を向けた瞬間、リリエンは空いた片手をそっと自分のお腹に当てた。

唇に、緊張を含んだごく小さな笑みが浮かぶ。

ほんの一瞬のことだった——すぐに表情を消し、黙って皆の後を追う。

リリエンは、生理が来ていないことを、ずっと気にしていた。


そして今——その疑いは、確信へと変わった。

——彼女は、妊娠していた。


***


熱は消えていた。

今度は、刺すような冷気がその場を支配していた。

天井一面に刻まれた青白いルーン文字が、まるで氷の心臓の鼓動のように、ゆっくりと淡い明滅を繰り返している。


「迷宮自体が、意図的に『気候』を変えているようだな……」


カエルが身を縮めながら言う。


「気をつけて。この静けさは、普通じゃない」


リリエンは警戒を強めた。

甲高い音が響き、床や壁に、結晶のような蜘蛛の糸が走った。


「危ない! 触らないで!」


リリエンが叫ぶ。

次の瞬間、天井から「何か重いもの」が落ちてくる音がした。

上方から降りてきたのは、巨大な蜘蛛だった。

アラクノ・フルクロ――その多関節の脚は、冷たいガラスのようにぎらりと輝き、半透明の腹部には、凍りついたマナの川がゆっくりと流れているのが見えた。


「水晶の蜘蛛……!」


ソーリンが低く唸り、斧を構える。


「他にもいる!」


カエルが叫び、横へ跳んで結晶の糸を避けた。

小さな個体たちが、壁の割れ目から次々と這い出てきては、ものの数秒で固まる蜘蛛の巣を張り巡らせていく。


「ブラウメル、左側を頼む!」

「了解だ!」


ダリエンは剣を握り直し、小さく息を吐いた。


「——水のスタイル、『流れる水流』」


青いルーンが刃に走り、剣が水のような滑らかさで軌跡を描く。

固まりかけた糸を切り裂きながら、身動きを封じられないように、先へ先へと道を作る。

冷たい空気は重く、吐息は白い靄となってすぐに凍りつきそうだった。

リリエンはスタッフを高く掲げる。


「水の冷たい精霊よ、汝の息吹を刃に変えよ。

 大地を貫く槍のように刺し貫け——『アイス・ランス』」


放たれた氷槍は蜘蛛の巣を切り裂き、小さな蜘蛛を二体まとめて貫いた。

砕け散ったそれらは、氷の破片となって床へ散らばる。

だが、そのとき——

最大の個体が、天井から音もなく姿を現した。

全身がきらめくガラスのような外殻に覆われ、その一本一本の棘は鋭く尖っている。

その巨大な蜘蛛こそ、この階層の主——ガラスの女王だった。


「こいつ……普通の個体じゃないな」


ブラウメルが、盾の裏からぼそりと呟く。


「ボスだ」


ダリエンは、剣の柄を強く握り締めた。

女王は甲高い咆哮をあげ、口から光る糸を吐き出した。

糸は空中で一瞬にして固まり、鋭利な結晶の壁へと変化する。

ブラウメルは盾を掲げ、その前に立ちはだかった。

触れた糸は盾に絡みつき、瞬く間に固まって結晶の層を作る。


「自分の糸を、そのまま水晶にしてやがる!」

「リリエン、その糸が完全に固まる前に、断ち切って!」


魔女は奥歯を噛みしめ、寒さと集中で震える身体を無理やり抑え込んだ。


「清らかな水よ、光と融合し、力となれ。

 流れ、輝き、あらゆる不純物を洗い流せ——『ウォーター・ライト』」


水と光が融合した波が、前方へ広がっていく。

それは結晶化した糸を溶かし、凍りついた空気にほんのわずかな暖かさを取り戻させた。

女王は後退し、光の衝撃で棘がいくつか砕け散る。

ダリエンは、その隙を狙って駆け出した。

青く輝く刃が、暗い空間で彗星のような軌跡を描く。


「——流れの奔流・最終斬り!」


剣は女王の腹部を深々と切り裂き、内部の脆い結晶を粉々に砕いた。

青い光の閃光が部屋を満たし、その体はきらめく破片となって四散する。

静寂が訪れる。

凍りついた壁に、ぽた、ぽた、と溶けた水滴が落ちる音だけが響いた。

部屋の奥では、次の階層へとつながる魔法陣が、琥珀色の光を放っていた。


一行は互いの顔を見合わせる。

その表情には、疲労と安堵、そしてまだ続く戦いへの覚悟が混ざり合っていた。


「……凍え死ぬ前に、さっさと行こう」


カエルが、無理に笑顔を作りながら言った。

誰も冗談を返せなかったが、全員がうなずき、無言のまま魔法陣の上へと歩を進めた。

本当は、三階に着いたら休むつもりだった。

——だが、迷宮はそれを許してくれなかった。


三階に転移した直後、一行はすぐに『鉄の番人』たちのペアに襲われた。

それらは、大気と稲妻のようなエネルギーでつながれた、自律型の鎧——

互いの動きを補完し合う双子のセンチネルだった。

連携された攻撃は強力かつ正確で、ブラウメルとソーリンは前衛の陣形を維持するだけで精一杯。

リリエンは浄化の光を放ち、一瞬でも敵の視界と魔力の流れを乱さなければならなかった。


カエルは素早く戦場を観察し、「各ペアは『繋がっているから強い』」こと、

そして「その連結を断ち切れば弱体化する」ことを見抜いた。

綿密な連携と戦術により、彼らは最初の番人たちを何とか撃破した。

しかし、その代償として、疲労は確実に蓄積していく。


次の通路では、さらに多くの番人が待ち構えていた。

しかもそこは、逃げ場の少ない狭い空間。

リリエンは、床を一面凍らせることで番人たちの足元を不安定にし、ソーリンがその隙に突っ込んで叩き割り、カエルが彼らの攻撃を増幅しているエーテルケーブルを切断していく。


ダリエンは、全身に走る電撃を受けながらも、その「流れ」を読むようにして斬り払い、辛うじて戦況を保っていた。

満身創痍になりながらも、彼らはなんとか三階を突破し、最後の部屋へと辿り着く。


ボスの間に現れたのは、二体の巨大な存在だった。

一体は『土のゴーレム』、もう一体は『雷のゴーレム』。

二体は、ルーンによって連結され、交互に攻撃パターンを切り替えながら襲いかかってきた。


土のゴーレムは、圧倒的な質量を伴う打撃と衝撃波を撒き散らし、雷のゴーレムは、高速で動き回りながら稲妻の槍を放ってくる。

ブラウメルが土のゴーレムの攻撃を盾で受け止め。

ダリエンが雷のゴーレムと斬り結び。


リリエンが、水と光と氷のバリアと攻撃魔法で、仲間たちの命をなんとか繋ぎ止める。

カエルは、決定的な瞬間を待ち続けた。

そして、ゴーレムたちの背後——二体を繋ぐ重要なルーンを見つけ出し、その結節を斬り伏せる。


同期が崩れたことで、二体の巨体は互いの動きに追いつけなくなり、隙だらけになった。

ダリエンは「電流の流れ」を剣に纏わせ、雷のゴーレムの胸部に決定的な亀裂を刻む。


ソーリンは渾身の一撃で、土のゴーレムの膝を砕き、倒れたところを叩き割った。

リリエンは氷の槍で露出した関節を凍らせて砕き、カエルがその隙を逃さずコアへ短剣を突き立てる。

二体のクリーチャーは崩壊し、アリーナに刻まれていたルーンが四階への魔法陣を起動させた。


疲れ果てた一行だったが、まだ終わりではない。

決意を新たに、彼らはゴードナイド迷宮の最上階へと進んだ。


***


魔法陣が白い光を放ち、一行の姿を包み込む。

光が収まった時、前の階層にあった暑さも寒さも、跡形もなく消えていた。

そこに満ちていたのは――「何もない空気」だった。

風は吹かない。

音もしない。

ただ、胸の奥を締め付けるような、重く深い沈黙だけがある。

階の中心へと続く廊下には、何かを引きずったような跡がいくつも残っていた。

数メートルほど進んだところで、ブラウメルがぴたりと足を止める。


「みんな……見ろ」


その声に導かれるように視線を向けた先に——それはあった。

リリエンは思わず口元を押さえた。

カエルは短剣を強く握りしめ、ソーリンは斧の柄を軋ませるほど握り込む。

床には、三つの死体が転がっていた。

行方不明になっていた偵察隊のメンバーたち。

頭部はどこにもない。


首の断面は焼け焦げ、綺麗に焼灼されていた。

血は、ほとんど流れていない。

まるで、一撃で極度の熱を加えられ、その瞬間に全てを蒸発させられたかのようだった。


「……これは、普通じゃない」


ダリエンが、かすれた声で呟いた。

冒険者になって以来、初めて彼の声が震えていた。

リリエンは、震える指でスタッフを強く握りしめる。

カエルは、ほとんど囁き声のような低さで言った。


「正直に言うと……俺は、これをやった“何か”とは戦いたくない」


ブラウメルは、深く息を吸い込むと、静かに言った。


「それでも、彼らのバッジだけはウルリックに届けなきゃならん。

 何も持たずに帰るわけにはいかない」


ソーリンも頷き、短く言葉を添えた。


「ここで諦めたら、あいつらの死は本当に無駄になる」


ダリエンは目を閉じ、深く息を吐き出してから、短く告げた。


「……行こう。だけど、絶対に隊列を崩すな。単独行動は禁止だ」


彼らは再び前へ歩き始めた。

辿り着いた部屋は、巨大な円形だった。

床一面には焼け焦げたルーン文字が刻まれ、天井まで伸びていたはずの柱は、何かに押し潰されたようにへし折れている。


その中心には――ぼんやりとした光が浮かんでいた。

彼らが近づいていくと、床が低く震えた。

足元のルーンが光り、螺旋状の紋様を描き始める。

そして、それは立ち上がった。


守護者。

ゴードナイド遺跡の真なる番人。

三・五メートルはあろうかという巨体。

黒い岩で形作られた身体を、純粋な稲妻が走る光の筋が縦横に走っている。

腕は四本。

二重構造の石の鎧。

肋骨の隙間からは、黄色い光を放つ「心臓」が脈を打つように明滅していた。


その異形が彼らを視界に捉えた瞬間——

空気そのものが、バチバチと音を立て始めた。

まるで、目の前で雷が生まれているかのようだった。

カエルは思わず一歩後退する。


「これ……完全に“Sランク”だ……」


リリエンは、自分の内なる静脈(インナー・ヴェイン)が、あの核に向かって引き寄せられているような感覚を覚えた。


「気をつけて……あいつ、私たちのマナを『読んでる』……」


守護者が一歩、前へ踏み出す。

地面が、ガラスのような音を立ててひび割れた。


「防御ラインを敷け!」


ダリエンが叫ぶ。

ブラウメルは盾を前に構え、ソーリンはすぐ後ろに位置取った。

カエルは側面へと走り、姿を隠すように移動する。

リリエンは、二メートルほど下がって詠唱の距離を確保した。

守護者は四本の腕を高く掲げる。


肩のルーンが強く輝き、空気がびりびりと震えた。

そして——

凄まじい雷撃が、床を水平に走った。


「伏せろ!」


ブラウメルは盾を前方に投げ出すように突き立て、全員がその背後へ滑り込む。

稲妻は途方もない衝撃とともに盾を直撃し、黒鋼の表面が真っ赤に焼けた。


「こんなの、何度も受けられるもんじゃねえ!」


ブラウメルが歯を食いしばりながら叫ぶ。


「リリエン! バリアだ!」


リリエンは震える指でスタッフを握りしめ、それでも声だけは揺らさずに詠唱した。


「清らかな水よ、流れ、我々を包む盾を形成せよ。

 揺るぎない流れで衝撃を吸収せよ——『ウォーター・バリア』」


液体の壁が、再び立ち上がる。

守護者の連続する雷撃が、壁を叩き続けた。

一度目、二度目はなんとか耐える。

だが――三度目の一撃で、障壁は限界を迎えた。

ガラスが砕けるような音とともに、壁は粉々に割れ、蒸気と光の霧になって消えた。


「……強すぎる……!」


リリエンは息を切らしながら呟く。


「ソーリン! 道を開けろ!」

「任せろ!」


ソーリンは咆哮とともに突進し、斧を振りかぶって守護者の腕へ叩きつけた。

手応えはほとんどなかった。

浅い傷すらつけられない。

ダリエンは、その横をすり抜けるように走り抜け、速度をさらに上げた。


「——水のスタイル、『流れの奔流』!」


彼は守護者の脚部めがけて斬りつける。

今度は、刃が深い裂け目を刻み込んだ。

それは、この戦いで初めて「明確なダメージ」と呼べる傷だった。

リリエンは即座に、それを見逃さなかった。


「ダリエン! 関節を狙って! あそこだけが弱点よ!」


カエルが、背後から稲妻のような光の線を斬りつける。

エネルギーの筋が切れて火花が散り、守護者の動きが一瞬だけ鈍った。


「よし! 『静脈』を絶てば不安定になる!」


カエルが叫ぶ。

しかし、守護者は四本の腕すべてを高く掲げた。


「……やば」


カエルが短く呟く。

直後、部屋全体を揺るがす衝撃波が放たれた。

全員が後ろへ吹き飛ばされる。

ブラウメルは壁に叩きつけられ、ソーリンは床を何度も転がり、ダリエンは滑りながら頭を打ちつけた。


リリエンもまた、柱に放り投げられ、スタッフが手から滑り落ちる。

しかしその瞬間——

本能が、彼女の身体を先に動かした。


「光よ、私の本能に応え、私を守ってくれ——『ライト・シールド』」


柔らかな光が、彼女の胸と腹部を包み込む。

衝撃が、まるで泡にぶつかったかのように和らげられた。

膝から崩れ落ちそうになりながらも、リリエンはなんとか立ち上がる。

息を整えながら、そっと自分のお腹に手を当てた。


「リリエン! 大丈夫か⁉」


ダリエンが叫ぶ。

彼女は慌てて笑顔を作り、スタッフを拾い上げた。


「だ、大丈夫……平気よ。続けて!」


皆が再び守護者の方へ向き直った瞬間、リリエンは一瞬だけ、もう一度お腹に手のひらを当てた。

誰にも見られていないその間だけ、彼女は緊張に満ちた微笑みを浮かべる。

守護者は、胸部のルーンを展開し、内部の核を露出させた。


「今だ!」


リリエンが叫ぶ。


「総攻撃をかけるわよ!」


彼女はスタッフを掲げ、深く息を吸い込んで詠唱に入る。


「水の冷たい精霊よ、汝の息吹を刃に変えよ。

大地を貫く槍のように刺し貫け——『アイス・ランス』」


五本の槍が生まれ、一斉に守護者の胸部へと飛んだ。

守護者は両腕を交差させ、一部を弾き飛ばしたが、完全には防ぎきれない。

その一瞬——隙が生まれた。


「ダリエン!」


ソーリンが叫ぶ。

ダリエンは前へ飛び出し、剣に刻まれたルーンが、これまでとは比べ物にならないほど強く輝いた。


「——流れの奔流・終焉の斬撃‼」


彼は跳び、回転し、全身の力とマナを込めた一撃を、守護者のコアへ叩き込んだ。

青い爆発がアリーナ全体を揺るがす。

守護者は咆哮し、残った腕でダリエンを押し潰そうとする——


しかし、その前にカエルが背後から飛び出し、最後に残っていたエネルギーの筋を切断した。

守護者はその場で硬直し、心臓部の光が明滅を繰り返したのち、ゆっくりと消えていった。


巨体は膝をつき——

やがて、死にゆく山のように、重い音を立てて床へと倒れ込んだ。

静寂。

荒い息遣いだけが、いつまでも部屋の中に残っていた。


ソーリンは、その場に座り込む。

ブラウメルは、煙を上げる盾を手放し、壁にもたれかかった。

カエルは冷たい床に仰向けに倒れ、荒く息を吐く。

ダリエンの呼吸も乱れ、手にした剣は、熱にやられて今にも崩れそうだった。


リリエンは、スタッフに体重を預けながら、その場に膝をつく。

視線は、無意識のうちに自分のお腹へと向かう——が、

すぐに顔を上げ、何事もないように誤魔化した。


「……終わったわね」


床に寝転んでいたカエルが、苦笑混じりに返す。


「終わったっていうか……『死なずに済んだ』ってだけだろ、これ」


部屋の中央で、魔法陣が光り始めた。

その上には、壊れた偵察隊のバッジがいくつか転がっている。

ダリエンは立ち上がり、それらを一つひとつ拾い上げた。


「……ウルリックに届けよう」


彼は、ボロボロになった仲間たちを見回し、短く言った。


「本当に、終わりだ」


***


ヴァリーンに戻るまで、さらに二週間を要した。

帰還した一行は、街の人々から熱狂的な歓声で迎えられた。

民衆の多くは、リリエンを「ヴァリーンの有名な魔女」と呼び、口々に彼女を称賛した。


彼女の青い瞳に魅了された女性たちは、憧れと羨望の眼差しを向け、その様子を見た一部の夫たちは、わずかに嫉妬で顔を引きつらせていた。

この二週間の旅のあいだ、一行はひとつの妙な変化に気づいていた。

——リリエンが、やたらとよく食べるのだ。


以前の三倍は食べているように見えた。

最初は誰も何も言わなかったが、数日見ているうちに、さすがに「おかしい」と思い始める。

特にダリエンは、道中で何度も「大丈夫か?」と彼女に尋ねていた。

仲間たちからのしつこい質問に、リリエンはもう誤魔化せないと悟り——

妊娠していることを打ち明けた。

重く、長い沈黙が落ちる。

それを最初に破ったのは、やはりダリエンだった。


「……なんで早く言わなかったんだよ、このバカ……!」


その声は、怒り半分、不安と恐怖が半分、そして何よりも、心の底からの心配で震えていた。

リリエンは、そんな彼の耳をひっぱり上げながら、「二度と私のことをバカって呼ばないで。それに、迷宮の中で気づいたのよ。体力が限界で、生理が来ていないことに気がついて……」と、状況を説明した。


彼らはそれを聞き、いつ、どこで彼女が異変に気づき、どんな状態で戦い続けていたのかを想像し——再び言葉を失った。

……ただ一人、ダリエンを除いて。

彼は突然、嬉しさと安堵が混じった涙をぼろぼろとこぼしながら、リリエンのお腹に抱きつき、何度も何度も繰り返した。


「絶対に守る。お前も、この子も……何があっても、俺が守る……!」


そうしているうちに、気がつけば彼らはもうヴァリーンの街の中にいて、人々の歓声を浴びながらギルドへと向かっていた。

ギルドの中は、外の喧騒とは正反対の、重苦しい空気に包まれていた。

誰もが、偵察隊のことを心配しており——


おそらく、もう戻ってこないのではないかと覚悟していた。

そこへ、リリエンたちのパーティーが姿を現した。


「みんな、その顔はどうしたんだ?」


ダリエンが冗談めかして声をかけるが、誰も笑わない。

ギルドの面々は、黙ったまま彼らの姿を見つめていた。

一行は、そのままウルリックのいるテーブルへ向かい、壊れた偵察隊のバッジを静かに置いた。


「……やはり、そうなってしまったか」

「いや、ウルリック。正直、想像していたよりもずっとひどい有様だった」


ダリエンが、不快そうに顔を歪めて言う。

ウルリックは、しばらく何も言わず、ただ深く一礼した。

ギルドは喪に服していた。


誰も、これ以上彼に何かを言おうとはしなかった。

やがて、ダリエン、ソーリン、カエル、ブラウメルは席を外し、ウルリックとリリエンが二人きりで話せるように部屋を出た。

理由は、全員がわかっていた。

だから、誰も余計な質問はしなかった。


「おお父さん様、少し……お話、いいですか?」


リリエンは緊張に喉を鳴らしながら尋ねた。

ウルリックは何も言わず、ただうなずいた。


「おお父さん様、私……妊娠しているの」


それまで部屋中に漂っていた重苦しい空気が、一瞬で変わった。

ウルリックは、一体どんな感情を抱けばいいのか分からず、目を見開く。

驚きか、衝撃か。

それとも――本当の意味での、喜びか。


「な、何だと!? いつ、そんなことに⁉」

「アウンドラに向かう途中よ、おお父さん様……」


リリエンは、手をぎゅっと握りしめながら、不安そうに視線を落とした。


「そ、それで……妊娠したまま迷宮に入ったというのか……⁉」


彼女は、小さくうなずく。

ウルリックは、堪えきれない感情を押し殺しきれず、テーブルを両手で強く叩いた。

その音は、怒りというより、極度の心配からくる叫びだった。


「このバカ娘が……! 子どもを流産させるつもりか……⁉」

「そ、そんなつもりはなかったわ……

 でも、迷宮の中で気づいちゃったの……体力が尽きて、血の気が引いて、生理が来ていないことに気づいたとき……」


リリエンは、ウルリックが本気で怒っているのではなく、心の底から心配してくれているのだと理解していた。


「おお父さん様……この子が生まれたら、『おじいちゃん』になってくれませんか?

 少なくとも、私とダリエン以外にも、家族がいるってことを、この子に教えてあげたいの」


ウルリックは立ち上がり、目に涙を浮かべたまま、リリエンを強く抱きしめた。


「当たり前だろうが、このバカ娘……!」


リリエンも、もう我慢できなかった。

ウルリックの背にそっと手を回し、二人はしばらくの間、何も言わずに泣き続けた。

しばらくしてから、リリエンは他のメンバーのもとへ戻った。

その夜、一行は正式に話し合いの場を設けることにした。

特に、ダリエンとリリエンのこれからを祝福するためでもあった。

盛大な帰還祝いの宴が終わり、全員が集まった場で、ダリエンとリリエンは、二人並んで前に立った。


「私たちから、皆に伝えたいことがあります」


リリエンが言い、目にはすでに涙が滲んでいた。


「……私たちは、このパーティーを脱退します。だから——」

「——今日をもって、このパーティーは解散だ!」


ダリエンが続け、彼もまた涙をこぼした。

カエルが、二人の行き先について尋ねる。

リリエンは、一度小さく息を吸い、答えた。


「……リラベルに行こうと思っているの。前から考えていた場所よ」


カエルはしばらく黙ってから、ゆっくりとうなずいた。

それは、どこか寂しさの滲む沈黙だった。


リラベルまでは、キャラバンで一か月はかかる。

そう頻繁に会いに行ける距離ではない。

夜が明けると、二人はキャラバンに乗り込み、一番奥の席に腰を下ろした。

仲間たちは、見えなくなるまで手を振り続けた。


リリエンは隣に座るダリエンを見つめ、決意に満ちた声で言った。


「私たち、家族を作って——幸せになりましょう」

「ああ。リラベルで結婚して、君もカエリスの一員になってくれ。

 そして……俺たちの間に生まれてくる、この子も——」


***


9か月という長い月日が流れ——

ついに、子どもが生まれる日が来た。

出産は、ある合併症のせいで非常に苦しかった。

子どもが悪い位置にいたため、助産師は自分の持てる技術のすべてを使って、慎重に取り上げなければならなかった。

そのあいだじゅう、リリエンは耐え難い痛みに悲鳴を上げ続けたが——

それでも、決して諦めなかった。


彼女はダリエンの手を両手で握りしめていた。

その力はあまりに強く、ダリエンは本気で「手が折れるかもしれない」と思ったほどだ。

だが——

産声が上がった瞬間、すべての苦しみが、嘘のように遠のいていった。

助産師は、木製の桶に張った水で、赤子の体を丁寧に洗い、柔らかな布で包むと、リリエンの顔のそばへとそっと寝かせた。

お母さん親は、左側に顔を向けていた。


「……アーデン……」


彼女は完全に力を使い果たしていたが、それでも、わずかに口元を緩めて、赤子の名を呼んだ。

ダリエンの方を見て、柔らかな目で「少し休ませて」と視線で訴える。

ダリエンは静かにうなずいた。

助産師は、赤子をリリエンの腕に抱かせると、そっと二人を残して部屋を出ていった。


こうして——

新しい世代が、生まれた。


1日遅れてしまい申し訳ありません。

今回の話は少し時間がかかってしまいました。

楽しんでいただければ嬉しいです!


日本語は完璧ではありませんが、一生懸命書いています。

間違いを見つけたら、コメントで教えてください。

応援してくれると嬉しいです!

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