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第一話 「転生」

あたたかい。

暑い……?

いや、違う。まるで柔らかい毛布に体全体が包まれているような感覚だ。


目を開けると、真っ白な光しか見えない。

やがて、ぼやけた視界が少しずつはっきりしていく。


そのとき、穏やかな声が近くで聞こえた。

何かを話しているけど、言葉の意味はわからない。


金色の髪に、澄んだ青い瞳の女性が僕を見つめていた。

彼女の視線には、どこか不思議なぬくもりがあった。

説明できないけれど、胸の奥が静かに温かくなる。


理由もないのに、心が落ち着いていく。

彼女が微笑んだ。


僕は本能的に、彼女に向かって両手を伸ばした。

小さな手が動く。


……これ、僕の手?


まさか……転生したのか?


声を出そうとしたが、ただ小さな音しか出なかった。

「ぶわっ」


女性は嬉しそうに笑い、

隣にいる黒髪で茶色の瞳をした若い男性の方を振り向いた。


彼らが何を言っているのかはわからない。

でも、その笑顔と喜びが伝わってきて——


僕も、思わず笑っていた。


***


僕がこの世界に生まれてから、六か月が経った。


毎日、お父さん上とお母さんの会話に耳を傾けているうちに、

少しずつ、彼らの言葉の意味がわかるようになってきた。


そう——僕は、赤ん坊として転生したのだ。


両親は僕のことを「アード」と呼んでいるけれど、

僕の本当の名前はアーデン・カエリス。


お父さんとお母さんは、昔は冒険者だったらしい。

でも、家族のために、その道をやめたそうだ。


家には一人のメイドがいる。

掃除、洗濯、お母さんの手伝いまで、

ほとんどのことを一人でこなしている。


お母さんの名前はリリエン・カエリス。

お父さんの名前はダリエン・カエリス。

そして、メイドの名前はミラ。


ミラはちょっと疑い深い性格で、僕と目が合うたびに、

まるで僕の中に何か隠しているものを探しているような視線を向けてくる。


でも、本当は優しい人で、

一緒にいると不思議と落ち着くんだ。


今日は、僕は廊下を這い回って、お母さんから隠れている。

一方で、お母さんは必死に僕を探していて、

大きな声で僕の名前を呼んでいる。


……でも、それはあまり意味がないと思う。お母さん。

だって、僕は完璧に隠れているから。


むしろ、もう少しこのままでいたい気分だ。


まるで鬼ごっこのようなもの——

ただ、この場合、いつも隠れているのは僕だけなんだけどね。


僕はお父さん、お母さん、そしてミラの行動や仕草を観察し始めた。

彼らの一つひとつの動き、音——全部が僕にとって新鮮だ。


お父さんが興奮しているとき、お母さんが怒っているとき、ミラが退屈しているときがわかる。

両親の話していることはだいたい理解できるけど、まだわからない言葉も多い。

……まあ、生後六か月の赤ん坊なら当然だ。


もちろん、お父さんやお母さんの言葉を真似しようとしてみたけど——

口から出てくるのは、ただのバラバラな音ばかりだった。


でも、ひとつだけ、予想していなかったことがあった。

……ミラのことだ。


まさか、彼女が僕を見ているとは思わなかった。

僕が彼女を見返すと、ミラはいつも通り、少し疑わしそうな目をしていた。


でも、ミラに僕が転生したことを知られるわけにはいかない。

だから、もっと気をつけなきゃ。


彼女に悪意があるわけじゃないけど、あの視線は……どうにも落ち着かない。

とりあえず、今は深く考えないでおこう。

もしかしたら、僕の気のせいかもしれないし。


翌日。

僕は這いながら、家の中の家具や窓、壁に刻まれた模様を観察していた。


そして、あることに気づいた。

いくつかのシンボルが、かすかに光っている。

なのに、誰もそれに気づいていないようだった。


……あれはいったい何なんだ?


僕は転ばないように注意しながら、ゆっくりと木製の椅子によじ登った。

もっと近くで見ようとした、そのとき——


「アード! そこに登っちゃダメ! 危ないわよ!」


お母さんの声が飛んできた。


危ない?

何が?

シンボルのこと?


お母さん、それ、たぶん無害だと思うけど……


でも、お母さんの顔を見た瞬間に理解した。

——お母さんは、シンボルが怖かったわけじゃなくて、僕が椅子に登ったことを心配してたんだ。


結局、あのシンボルが何なのかはわからないままだった。


こうして、新しい生活の中で日々が過ぎていった。


その頃、お父さんとお母さんが寝る前に物語を読んでくれるのを、僕はいつもベビーベッドの中で聞いていた。

そのおかげで、少しずつ文字の一部を理解できるようになったんだ。


両親が読み上げる言葉と、ページに書かれた文字を照らし合わせながら、

何とか結びつけようと頑張っていた。


けれど、その文字はとても奇妙で、

僕が知っているどんな文字とも違っていた。


お母さんは一日中、何度も僕にお乳を飲ませてくれ、

ミラと一緒に家の仕事をこなしていた。


——本当に、素晴らしい人だと思う。


僕はベビーベッドの中で、二人のそばにいる時間が多かったけど、

家の中を這い回って遊ぶこともよくあった。


ただ、外に出ることはできなかった。

危険だから、お母さんはいつも僕のそばにいてくれたんだ。


退屈になった僕は、二人のそばに座り、

彼女たちの会話を眺めていた。

そして——そのとき、僕は初めて言葉を口にした。


「み、じゅ……」


ミラたちが水を汲んでいるのを見て、つい、その言葉を真似してしまったんだ。


二人は目を見開き、同時に僕を見つめた。

キッチンには、一瞬、重たい沈黙が流れた。


すると、お母さんが笑顔になり、嬉しさのあまりヒステリックに飛び跳ねながらお父さんを呼んだ。


お父さんは何が起きたのかわからず、心配そうに駆け寄ってきた。


「リリエン、どうした? 何かあったのか?」


お母さんは興奮気味に答える。

「ねえ、聞いて! アードが初めて言葉を話したのよ!」


お父さんは一瞬きょとんとしたが、すぐにその意味を理解した。

「……なんだって? 最初の言葉は?」


お母さんは僕の方を見て、抑えきれない笑顔を浮かべた。


——ああ、わかったよ、お母さん。


「……み、じゅ……」


少しぎこちなく、もう一度その言葉を口にした。

それだけで、十分だった。


お父さんはそれを聞いた瞬間、少し残念そうな顔をした。

たぶん、僕の最初の言葉が「パパ」だと思っていたんだろう。


うん……お父さん、ちょっと落ち込んでた。

どうやら、僕の最初の言葉が「パパ」じゃなかったのが、

少しショックだったみたいだ。


お母さんは、幸せと活気に満ちた笑顔で僕を抱き上げ、

そのままくるくると回った。


止まったあとも、僕はお母さんの膝の上に座ったまま。

そのとき、ミラがお母さんに言った。


——「アードは普通の子どもとは違う。オーラがまるで別物です」


けれど、お母さんは微笑んで、軽く首を振った。

「気のせいよ、ミラ。あなたの想像だわ」


でも、お母さん……ミラは正しい。

僕は、みんなとは違うんだ。


けど、今はこのままでいい。

これ以上、怖がらせる必要はない。


やがて、お母さんは僕を腕に抱えて、家の外へ連れ出した。

その瞬間、僕の目に広がったのは、

見たこともないほど広大な世界だった。


空が高くて、風が柔らかくて、

胸の奥がわくわくでいっぱいになった。


お母さんは僕の目の輝きに気づいて、優しく笑った。


「その日が来たら、あなたは地平線の向こうへ旅立つでしょう……

でも、私のことを忘れないでね、アード」


その言葉の意味も、意図も、僕にはわからなかった。

ただ、お母さんに笑い返すと、彼女はそっと僕を抱きしめた。

まるで、壊れものを扱うみたいに優しく。


夜。

お母さんが僕の「初めての言葉」を祝う小さなパーティーの準備を終えたころ、

僕はだんだんと眠くなってきた。


僕がうとうとし始めると、お母さんはもう一度僕を抱き上げ、寝室へ連れて行った。


お母さんと二人きりになるのは、おそらく初めてだった。

普段はいつもお父さんが一緒にいたから。


ベッドに横になったお母さんは、本を手に取ったけれど、開かなかった。

代わりに、片方の手を僕の頭にそっと置き、

もう片方の手を前に伸ばした。


そして、微笑みながら言った。


「アード、これを見て。

そよ風に舞う優しき光よ——視線を導き、魂を癒やせ。『スピリチュアルライト』」


その言葉と同時に、

お母さんの手の周りに、小さな緑色の光の球がいくつもふわりと現れた。

それらはゆっくりと上昇し、まるで呼吸をしているかのように、空中でゆらめいていた。


部屋の中は、暗闇の中で舞う無数の蛍のような、

柔らかくて温かい光で満たされていった。


僕の目は、その幻想的な光景に釘付けになった。

まるで夢を見ているみたいで、思わず笑顔がこぼれた。


——これは……


(まだ信じられない)


……魔法だ!


そうだ、僕は今——

魔法と剣が存在する世界にいるんだ。


日本語は完璧ではありませんが、一生懸命書いています。

間違いを見つけたら、コメントで教えてください。

応援してくれると嬉しいです!

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