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異世界配信惑星ファンタジーライブマスター衆神環視惑星  作者: 中級中破微小提督
囚神監視惑星 過去編 ライドライダー
42/44

第五ステージ アバターライドライダー

「死にたくない!」

 俺は自分の喉から出た声に驚いた。

 俺じゃない。

 アバターが喋り出した。


ーーー


 この前のジャングルの訓練は何事もなく終わって今回は砂漠だ。

 砂漠用の広域&砂塵対策の頑丈で隙間のないライドライダー。

 この前の降下用とは違ってコンパクトに折りたたみなどはない。

 純粋にどこから撃たれれても大丈夫なように装甲が盛られている。

 

 そして砂塵対策ではないが、バリアーのような仕様がある。

 ばりあーが『えいきゅうきかん』からはっせいする。

 もうその永久機関の万能設定止めない? ワンパターンやて。

 そのバリアーは機体全体を覆うものでははなく、搭乗者を覆う形だ。

 どちらかと言えば新装備だ。

 リアルとは一体?


 そしてタイヤに乗り込もうとしたら冒頭の「死にたくない」だ。

 アバターが自発的に喋り出した。

 男のアバターだ。ヘルメットをしているから顔はわからない。

 声の感じからして現地人を模しているのか?

 俺は特にキャラクリはせずにデフォルトのままだ。その土地に合ったアバターになっているんだろう。


「ミネギシサン。今度は何の仕様だよ。バグにしてもおかしいだろ」

「ちょっと・・・、待つにゃ。調べるにゃ」

 俺はコントロールの戻ったアバターを動かす。声は出せるな。

 ミネギシサンはこの前の出撃でリアル系は無理と言って俺の専属オペレーターだ。

 この人は別にライドラが上手いわけじゃなかったからな。

「タイガ・・。どうもアバターにAIが導入されるらしい・・・にゃん」

 ミネギシサンの声が硬い。

「どゆこと?」

「アバターにプレイヤーの挙動を教育するみたいニャン。それで人格が付与てるみたいニャンね。タイガ・・・は嫌にゃん?」

 どうりでミネギシサンの言動がおかしいわけだ。

「俺は良いすけど。勝手に動く方が問題すね。なんで人格?」

「ただのAIじゃライドラは無理ニャンね。人間の模倣じゃなくて人間を再現しようっていう・・・、また金のかかった仕様にゃん。有用なテストプレイヤーに無断でやってるぽいニャンね」

「いや言えばやるでしょ。なんのためのテストプレイヤーだよ」

「・・・これ、ボクにも知らされてないにゃん。タイガ、これは気付かなかった事には出来ないニャン? ただのバグだったにゃん。AIアバターなんてあるわけないニャン。モーションが暴発しただけニャン」

「あ、ハイ。んで対処法はどうなんす?」

 俺はミネギシサンの意図をくみ取って同意する。

「取り合えずお話ししてあげて欲しいニャン。タイガの言葉をディスプレイに表示出来るニャン。それで安心しそうな言葉を、

 ・・・自分が安心しそうなおまじないニャン! ゲン担ぎの文言を表示するニャン! タイガもビビり過ぎにゃんね! 死にたくないなんて冗談が過ぎるニャン!」

 ミネギシサンの様子がおかしい。誰かが後ろに居るのか?

 取り合えず俺は話を合わせる。先の死にたくない発言は俺が言った事にしよう。

「そっすね。死にたくない発言でフラグを立ててみたす。取り合えず文言はこれで」

 俺は言語をヘルメットのディスプレイに表示する。

『俺の名はシコル・ギウス! 俺と一緒なら必ず生きて帰って来れるぜ!』

 心なしか体が軽くなったような。

「さあ遅れるニャン。ボクはちょっと忙しくなるニャン。タイガ。冗談もほどほどにして欲しいニャン」

「うっす」

 冗談じゃないのはこっちなんだが。


ーーー


「あんたは誰? あたし達の要望は聞き届けられたの?」

 砂塵のライドライダーを終えた俺は新たな戦場に来ていた。

 そして開口一番アバターが勝手に喋り出す。

 俺はそれに文字で答える。本名ではなくハンドルネームのシコル・ギウスだ。

『俺はシコル・ギウス! 歴戦のライドラ乗りだぜ!』

 ヘルメットに文字を表示。

 それでアバターは満足したのか、アバターのコントロールが戻り、俺の意思で体が動かせるようになる。

 今度のアバターは女の子か。乗っているのは前にも見た折り畳み式軍用ライドラだ。

 そして周りを見渡すと平原。湿った平原に舗装されてない道路。

 東南アジアか?

 

「ミネギシサン。ウッ」

 なんだ? 声が可愛い。

「タイガァ。ようやく目覚めたニャンね?」

「ち、違うんだからね! あたしはただ体に合わせているだけなんだからね!」

 俺はさっきのアバターの真似をしてテンプレツンデレで返す。

「深くは追及しないニャン。それにしても喋るアバターが増えてきたニャンね。これ本当に隠す気あるニャン?」

「あ、あたしが知るわけないでしょ! くっ。ある筈のものがない。これ動きにくい」

 俺がモジモジしていると体のコントロールが奪われる。

「あんた。本当にシコル・ギウス?」

 これはアバターが喋っている。だいぶ安定したAIだな。

『東南アリア』

 あ。打ち間違えた。先の東南アジアか? がそのまま表示されてしまった。

「アリアって誰よ! シコル・ギウスじゃないの!?」

『シコル・ギウスだ! 女性体は初めてなんだよ!』

「本当でしょうね? あたしは死にたくない。あんたが無様ならあたしがやるからサポートしなさい」

『すぐに慣れる。お前よりは動けるさアリア』

「だからアリアって誰よ! そう呼びたければ呼べばいいわシコル・ギウス。それが伊達じゃなければね」

 そしてアバターのコントロールが戻る。

 随分生意気なAIだな。

 俺はアリアの真似に戻る。

「あー。ミネギシサン。あたしの声はどう? これはアバターのアリアに聞こえているの?」

「アバターにはボクたちの会話は聞こえないニャ。そういう契約にゃ」

「どういう契約よ。これをタイガが言っているなんて無理があると思わない?」

「一応安全策にゃ。無駄と思ってもやっておかニャイとスケープゴートで大当たりにゃん」

「だったらしばらくこのキャラ続けるわよ。ミネギシサンはそれでいい?」

「おっけーにゃ。タイガも楽しくなってきたニャンね?」

「これで次、男アバターだったらどうするのよ。・・・ミネギシサン。今スクショってできる?」

「残念にゃけどここでは無理ニャンね。記録残すのがまず無理にゃん」

 クッ、初の女性アバターの思い出は無しか。


ーーー


 俺達は遊撃で味方の援護だ。

 味方はライドラじゃないのか。

 軽装甲車両3両。兵士、いや武装一般人? が10人以上。

 敵は小型のジャイアント。リアル仕様のジャイアントだ。

 4mでだいぶ細身だ。武装は単発ライフルを両手に二丁。マガジンの交換は背面で行うようだ。

 ただ技術はこちらと同じ。永久機関だ。これに関しては同性能。ライドラがタイヤに使うのに対してジャイアントは内蔵して動力に使っている。

 1機のジャイアントが味方のロケットに対してブーストダッシュで高速機動。その機体周りの暗い球体は永久機関の遮断を使っているのだろう。重力を遮断して自重を軽量化。そしてバーニアで加速。ジャイロもあるだろう事を考えればバーニアでの飛行も可能だろう。

 そして永久機関の遮断でステルスはもとよりミサイルも使えない。この巨体で暴れられるのには理由があるという事だ。


 ある意味軍用ライドラよりも動けているな。

 トリックの使えるライドラ乗りは少ない。

 ジャイアントでムーブを使った方が誰でも使える現実の兵器としては有能なんだろう。

 それにしても1対3か。

 この開けた場所でしかも昼間。曇ってはいるが逆に雨が降りそうだ。永久機関の関係上、足のジャイアントの方が有利。ライドラのタイヤで挙動を上回るの厳しいだろう。

「ビビってんのあんた?」

 アバターAIのアリアが煮え切らない俺の動きに口を挟む。

 いまある武装はダブルマシンガンが上下に系四丁。前面装甲以外ならジャイアントの装甲は抜けるだろうが、弾薬的に2機が限度だ。

『何か考えは?』

 俺は超優秀AIのアリア様に伺いを立てる。

「味方が居るでしょ。皆を信じれば大丈夫!」

 ウッソダロ高性能AIアリア様。

 俺は上半身を起こすとダブルマシンガンを手に持たせる。

 味方を盾にしようにもジャイアントと離れすぎている。まずはこちらに誘き出すか。


ーーー


 結果的に言えば超絶高性能AIアリア様のいう事は本当だった。

 躍り出た俺に追従する軽装甲車両。

 俺はトリックを極めながらマシンガンを当てていく。前面に効果はないがこちらに目を向けさせるためだ。

 ジャイアント3機のトライアングルの合間を抜ける。

 そして上空から至近距離で最後尾ジャイアントの弾倉交換装置を破壊する。

 そいつを背にしてマガジン交換。最後の1機の射線を遮る。

 手前のジャイアントは軽装甲車両を狙っている。そいつの背面にワンマガを入れる。ダメージだけだ。破壊は出来ていない。

 そのまま最後尾ジャイアントの周りを回りながら再度マガジン交換。

 次の得物を、と思った瞬間3機のジャイアントが申し合わせたようにブーストダッシュ。固まるのではなく離れる様に動く。3機のトライアングルが広がる。

 拙いな。

 さっきの様に敵機体を盾にする戦い方は無理か。

 俺は無傷のジャイアントに肉薄する。1機は軽装甲車両を狙っている、もう1機は弾倉交換が不能。ならばこの1機を狙う。

 俺はトリックを派手にかましながら無傷ジャイアントをボロボロにしていく。

「痛ツッ」

 アリアの声だ。アバターのコントロールが一瞬奪われる。不味いな。俺に痛みはないが確かに小柄な女性アバターでこのトリックはキツイか。

 平原だからな。どうしても派手に動かざるを得ない。

 俺はゴリ押し気味に無傷ジャイアントを撃破すると赤熱したダブルマシンガンを入れ替える。そして文字表示でアリアと話す。

『アリア。アバターの修復は出来ないのか?』

「無茶言わないで。あんたたちとは違うのよシコル・ギウス」

 VRじゃねぇのかよ。めんどくさい仕様だな。

『ならもう少し耐えてくれ』

「言われなくても耐えるわよ! あたしよりもあいつ等よ!」

 確かに。

 俺の目線では弾倉交換装置が破壊されたジャイアントが手動で、人の手でマガジンを交換しているのが見て取れる。

 リアルすぎだろ。何でもありだな。

 だったらこっちもだ。

 給弾で身動きが取れないであろうジャイアントにタイヤで体当たりすると首元からゼロ距離ダブルマシンガンを食らわせる。ワンマガで内部まで到達しているだろう。


 最後の1機が1両の軽装甲車両を撃破すると次の軽装甲車両に向かってブーストダイブを掛ける。バーニアで上昇しそのまま落下だ。何トンあるかは知らないが、戦車ですらこの落下攻撃はキツいだろう。

 俺はトリックで空中のジャイアントに張り付くと、永久機関の遮断を最大にまで上げてジャイアントを巻き込む。互いの永久機関の遮断が干渉し、相殺され、遮断機能が停止する。そして重力遮断が消えた俺達はそのまま落下。ジャイアントは自重と俺のライドラの重みで崩れ落ちる。

 だがその衝撃でアバターが放り出されてしまった。


『アリア!』

 俺は割れたヘルメットのディスプレイに表示する。体が動かない。アバターコントロールはこっちにある。目線を動かすと割れたヘルメットの間から黒髪ツインテールが。俺はそれに手を伸ばす。

「シコル・ギウス」

 アリアが気付いたようだ。そのまま言葉が続く。

「ありがと。噂は本当だった。シコル・ギウスがいれば何とかなるって。あたしが足引っ張っちゃったけどね」

 アリアは荒い息をしている。

「ありがとう。シコル・ギウス」

 その、息が、途絶える前に俺はログアウトされた。


ーーー


 俺達は現実の自販機を前にして語り合っていた。

「今のAIは高性能すね」

「そうだな」

 俺の前には白髪の入った初老スーツ姿の男がいる。俺はいつものパーカーとジーンズだ。

「ミネギシサン。彼女はどうなったんすか?」

「同じアバターに当たる事なんてないだろうな」

「AIじゃなくて人間すよね。ここに録音機能なんてないでしょう? 答えてくださいよ」

「じゃあこのVRはなんだというんだタイガ? 現実だとでも言い出すのか?」

「それ以外のなんなんす?」

「・・・彼女は無事だ。手足に損傷を追ったが命に別状はない」

「そうすか」

 俺は安堵の溜め息を吐く。

「良いのか?」

「良いんすよ。やる事は変わらないんでしょ? 次はもっと巧くやる。それだけす」

 俺の答えを聞くとミネギシサンは大きく息を吸ってネクタイを緩めた。

「タイガは前向きだにゃ。なら少しだけ教えてやるにゃ。これは配信らしいにゃん。タイガは配信者で、アバターはゲームの駒。駒と言っても人間だけどニャ」

「よくわからないすね」

「ボクもわかってないニャ。ただあの永久機関に関係してるらしいニャン」

「・・・このVRは異世界にでも繋がっているんすか?」

「残念ながら同じ星の同じ惑星地球にゃん。異世界が・・・浸食してきたニャンね」

「なんすかそれ。その内ダンジョンが生えてきてダンジョン配信でも始まるんすか」

「そうニャンね。異世界配信惑星。この地球はそう呼ばれることになるニャンね」

「宇宙人じゃ駄目なんす?」

「宇宙人なら物理法則が適用されるニャン。本当に過ぎた力は本当の魔法にゃん」

 あの、永久機関とかいう物理法則を捻じ曲げる代物が本当に現実に現存するならそれは確かにありえる。この異常にリアルなVRも魔法だと言われれば確かに頷ける。あれを現実で動かすのは不可能だ。

「異世界に向けた配信すか?」

「鋭いニャンねタイガは。異世界の神々から魔法の力が投げ銭されるニャン」

「・・・それって地球がヤバくないすか?」

「もうこの惑星は魔法無しでは機能しないニャン。そして魔法を集められた国がこの惑星の覇者となるニャン。ボク達がしている事が理解できたかにゃん?」

 俺達は戦争という名のショーを見せつけて魔法という名の投げ銭を異世界からかき集める。アバターに女性が入り始めたという事は、その方が稼げるのだろう。

「俺達軍は魔法を手に入れ、アバターに選ばれた人間には金が入るんすか?」

「嫌になったか?」

 ミネギシサンの口調が元に戻る。俺はそれを正面から見据えて答えた。

「俺は、自分に出来ることをするす。巧くやれば全員ウルトラハッピーなんでしょ?」

「・・・今の世代はわからんニャ。その通りニャンけどニャ」

 ふーっと息を吐くミネギシサン。その姿を見て気付いた。

「ミネギシサン。前回転がってたアバターってやっぱミネギシサンなんすね。もしかしてあの時にこの世から居なくなったかと思ったす」

 俺は半分笑いながら話す。

 不謹慎だが、こんな話笑わずには話せない。

「あれキツイニャンよ! タイガはノーデスにゃんね。デスればわかるニャン。もう二度とやりたくないニャン」

「ブハァ! あらゆる意味でデスは出しませんよ。優良配信者すからね」

 あのアバターが人間なら俺が生きて帰れば無事な筈だ。

 俺なら巧くやれる。

 考えるのはその後だ。

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