第32話 天使
072~♪ 何回やっても落とせない~♪
最終、兵器~♪ 投下したけど意味がない~♪
だから奥の手だけは最後まで持っておく~♪
072~♪ 全然イベント進まない~♪
色々試そうとするけど♪ 目の前ゴドゴギャン♪
だから奥の手だけはここで使って舞う~♪
だから♪ 許して~シコシコル・ギルス♪
なんでもするから許して~♪
だから奥の手だけはあなたにつかってもいい~♪
うるせぇ。だったら一兆G寄越せ。
俺はおかしな幻聴に悪態をつく。
呼吸が荒い。何かの投擲で頭から血も流れてる。汗か血かわからねぇな。
改めて、ソルジャーでタンクは無理だろ。
動かないソルジャー弱すぎ案件。
辛うじてサイボーグハンマー腕で凌いでいるが、屋外では微妙だ。屋内では無敵に見えたがこの広さでブンブン腕振ってもな。敵が減らねぇ。
ヘカトンの方も自分の身が危険だと操れない。超巨大ヘカトンアームも自分が安全圏に居ないと使えないな。
敵の中型はキツイな。ミノタウロスは近接も強い。中距離斧投げは相手が動き回るソルジャーだからだな。止まっていれば的だ。
そして遂にMPが切れる。
サイボーグ直結MP消費は流石の俺でも長時間は無理だ。
生身の手足に戻る。
出せるのはハンドガンくらいか。撃ち抜けるのは自分の頭ぐらいだな。
だったら全裸淫行BANでもいいか。あの時の彼女の気持ちがわかる。
だが、俺の方は相方も息子も生きてるからな。
俺は手を合わせると神に祈る。
そして出て来た水を飲み、白パンを齧る。
「美味しそうですねシコルさん」
その言葉に振り返るとアレスが居る。アレシスも担いだままだ。
これは、どっちだ?
「流石に逃げ切れませんでした。だからここに。泣き言を言いに来ました」
「だったら最後に粗鎮鎮をシコリ倒すか?」
「いえ、その前に、邪魔だ」
アレスがドームを展開する。その先にサンクチュアリを同時展開して魔物を吹き飛ばす。
「僕は羨ましかった。アレシスが。シコルさんの愛を一身に受ける彼が。僕もそれを受けたかった。それが多分、この体なんでしょう。無力で一途なショタ。邪心があってはオネショタではありませんからね」
「やろうとしてもお前が拒否していたらな」
「ええ。僕ならそうでしょう。実現しないから夢にまで見た。無力で純真な僕。でもそれは僕じゃない。僕ならどうするか。シコルさんはわかりますか?」
「力で全てをねじ伏せる」
アッハハハと豪快にアレスは笑った。
「その通りですよシコルさん。あなたは本当に僕の事を理解している。こんな展開が許されるはずがない。皆殺しだ。力を持たない僕なんて僕じゃない」
「オネショタは良いのか?」
「僕は真理に辿り着きました。性的な結びつきはオネショタにはいらないんです。それに気づけた今、僕のオネショタは完成しました」
アレスはアレシスを下ろすと空を仰ぐ。
「神よ。その忌まわしき名をもう一度この身に。勇者の名を拝命する。僕は勇者アレス・カリバーンだ」
アレスがそう言うとアレスの後ろ、南に50m級の炎の大天使が現れる。
左手側、西に巨大な水の球体。
右手側、東に天まで届く風の渦。
そしてアレスの前。北、俺達の家の向こう側に大地を割り、溶岩の巨人が現れる。
「短期形態進化ってこんなに出せるのかよ」
「僕の可能性ですからね。神々との戦いでは足りないぐらいですが」
そしてアレスは六対十二枚の翼をはためかせる。
「お前も変わるのかよ!」
「ええ。勇者の力は使徒の強化です」
確かにバフがかかっている。
炎のセラフィムの加護は戦場の使徒を強化し魔物にダメージを与える。俺のケガも治り身体能力も向上している。
水のMPの回復。強化MPの注入だな。この前の魔物MPの使徒版か。行ってしまえばMP無限のエリクサーを使っているようなものだ。MP不足で使えない魔法も今なら使えるだろう。
風の守り。空中を飛べるホバーだ。これの真価は発動硬直のある攻撃でも移動が可能なことだな。本来なら止まっていないと使えない超巨大ヘカトンアームもこの中でなら使いながら移動が出来る。
溶岩巨人は攻撃判定のあるサンクチュアリで軒並み敵を吹き飛ばす。歩くエリア兵器だ。アレに追従しているだけで有利に戦えるだろう。
「確かにスゲェバフだけど使徒の人数が少なすぎるな」
「だから僕の出番ですね」
アレスが天を仰ぎ見ると稲光が集まりだす。そして落雷。その光のカーテンが取り払われるとその場に動くものは無かった。
「圧倒的だな。これで終わりならありがてぇが」
「それはないでしょうね。これは僕の勇者覚醒イベントでしょう。それが072の外で片付いている。あと2、3波は来るでしょうね。それでも十分でしょう。援軍もこちらに来ています。このままバフを維持し続けた方が良いでしょうね」
「それ動けないのか?」
「バフ中は無理ですね。今僕が動けているのはバフを解いたからです。本来ならこの四大天使の加護を僕の力でまとめ上げて最大級の加護をもたらせました。ただ一度攻撃に使うとバフには戻せませんけどね」
さっきの雷は一度だけか。道理で強力なわけだ。
「あれ、アレス・・・?」
「「アレシス!」」
目覚めたアレシスの姿に俺とアレスの声が被る。
「あれ、なんで戻って来てんだ?」
「二人を守るためさ。それ以外に何があるんだよアレシス?」
不思議がるアレシスに訳知り顔で話すアレス。
「うお!? なんじゃこりゃあ!」
アレシスが燃え上がる自分の身を払いながら困惑する。
「もっと凄いことになってるだろ?」
「マジだ。お前がやってるのかアレス?」
「そうさ。借り物の力だけどね。これでGが凄いってわかっただろ?」
「そっか。でも俺の望んだ力とは違うな。俺のはもっとこう・・・」
「これかい?」
アレスが召喚魔法で剣を取り出すとその振り切った剣先から光波が飛び出る。
「「スゲェ!」」
親子でハモっちまったな。
「母ちゃん! 俺もGを目指すぜ!」
現金な奴だなアレシスは。
「ああそりゃよかった。しかしアレス、本当に勇者みたい、じゃなくて勇者なのか」
「はい。ですが名前付きになった以上、神の意思には従わなくてはいけません」
「なんだ名前付きって宮仕えなのか?」
「全員がそうではありませんが、僕には使命が与えられました。しばらく旅に出ることになりそうです」
「それは寂しいな。折角元に戻ったのにな」
「使命が終わればお役御免ですよ。その時は072に戻ってスローライフの続きをしましょう」
その後は応援に駆け付けた使徒たちと共に迎撃掃討作戦が決行された。
「スゲェよ母ちゃん! なんでもできるぜコレ!」
アレシスは嬉しそうだな。かくいう俺も夢中だが。
「この強化MPも凄ぇな。サイボーグの進化系まで出てきやがった。まだまだ先があるじゃねぇか」
「母ちゃん! 俺も勇者を目指すぜ! この無限MPを手に入れれば何でもできる! 力こそパワーだぜ!」
「くっ。俺も上級職を目指すべきか悩んで来たぜ」
「母ちゃんももう俺には遠慮するなよな。俺はもう一人立ちできるぜ!」
「そうだな。早いかもしれねぇが街に戻るか。まずは冒険者ギルドへの登録だな」
「え、冒険者ギルドなんてあるのかよ!」
ニヤリ。
「ああ。そこでお前の適正を見るぜ。ゼロスの適正はSランクだったがお前はどうだろうなアレシス?」
「じゃあ俺はSSSランクだな! 父ちゃんを超えてやるぜ!」
俺の異世界教育の賜物だな。教えてないのにSSSランクとはセンスもいい。
ーーー
ギルド『フォネティック』
「俺達シコルの救助に来たはずだよな?」
「それが空から爆撃しての殲滅戦が始まってるな」
「バフがヤバ過ぎだもんな。MP無限で空飛べて硬直もなくてヒートアップもなくて自己回復して敵を跳ね飛ばすバリアーまで置いてある」
「ガトリングがスライドしながら撃てるの強すぎだろ。しかも銃身がまったく熱くならねぇ。弾は蓄積付与で爆発してるしな。誤爆の心配もねぇ上に強ぇ」
「グレの撃ったら捨てて即召喚のタクティカル撃ちも強いな」
「ただな。いくら使徒って言っても絵面が悪いな。おっさんが空飛びながら銃撃つ姿はどうよ?」
「本来だったら翼の生えた美少女何だろうが、この惑星ファンタジーじゃなぁ」
「飛んでると言えばゼロスオーガがヤベェな。あの対地対戦車ガトリングを飛びながらほぼ無限に撃ち続けてやがる。完全に攻撃機だな」
「これが勇者の力か」
「確かにこれを魔王城でやられたらたまったもんじゃねぇだろうな」
「っつか魔王なんているのかよ。神々の戦いじゃなかったのか?」
「俺達はあまりにも知らなさ過ぎたな。俺も本腰入れるかな」
「おいやめろよ。俺達が一緒に居るのは惑星ファンタジーナンバーワンギルドだぜ。欲かくなって」
「だな。適材適所、身の丈を知らねぇとな」
「俺達一般ソルジャーはソルジャーを極めればいい。お伽噺は名前付きに譲ろうぜ」
「まあ、俺には隠された短期形態進化が残ってるけどな」
「秘めておけよ。神の目に留まったらコレに巻き込まれるんだからな」




