第31話 男の子
※妊娠出産関連は極力描かないことに決めました。これはファンタジーであり、文芸ではないので。そのように話を調整します。
俺は生まれたばかりの男の子と外を歩いている。
あれから半年、産むことを決めた俺はマタニティ機能を使い今に至る。
使徒の子供は手引書通り成長が早い。半年で6歳児前後。言葉もつかえ自分で歩き回れる。この惑星ファンタジーではこの年まで急速に育つという仕様も頷ける。
名前はアレシス。金髪に金の目。これはゼロスから受け継いだものだ。流石に野郎二人の夫婦で女の子は無理だからな。性別は男で選べたから俺の要素は極力消してある。かなり父親寄りだな。性交はマタニティ機能に必須なようだな。
名前通り、名付け親はアレスだ。確か冗談めかして男なら『アレシス』、女なら『アレシア』とか言っていたのをゼロスが気に入ったからだ。俺も特に名前に拘りはない。俺の命名センスはシコル・ギウスで証明されているだろう。
唯一難色を示したのはギンガだ。聞くと『ナガレボシ』と名づけたかったらしい。「お前、流れ星て」と突っ込んだのを憶えている。ギンガ曰く、この停滞した惑星ファンタジーで流れ星の様に輝き燃え尽きる人生を歩んで欲しいのだとか。言わんとすることはわかるがあらゆる意味で却下した。
今日も森が騒がしいな。
俺の前を行くアレシスの背景にゴッドゴーギャンの巨体が写る。俺達を無視して北へ。向かう先は7thパレス。いつものお昼の定期砲撃だ。
ここは072の真上、正確かどうかはわからないが真北。072と7thパレスの間の森だ。ここに自宅を構えている。ゴッドゴーギャンの定期砲撃の進路の脇だ。やかましいがある意味一番安全だ。ゴッドゴーギャンが居れば安全で、いなくなれば危険という訳だ。この騒音が無くなったら即座に072に退避だな。
衣食住はGで賄える。本当なら手料理に挑戦といきたいが、使徒に医者はいない。ヒーラーがその手の事に対応できるかどうかも未知数。G産の神の食物に頼っている。この世界には実際に神が居てその恩恵もあるからな。
何よりもアレシスは神の贈り物だ。マタニティ機能で神から授かった命だ。口が裂けても俺だけのモノとは言えな・・・言った覚えもあるが、俺だけの子じゃない。俺達、ひいてはこの世界の子だ。
「なぁ。母ちゃんの言ってた神のいない異世界って本当に存在するのか?」
アレシスはことのほか異世界に興味がある様だ。
「ああ。本当だぜ。食事から家まで全てが手作りだ。神の恩恵がない代わりに自由だ。俺達使徒みたいに戦闘一辺倒じゃねぇ。その分、難易度はベリーハードだぜ」
「やっぱ凄ぇな。そんな世界でサバイバルしてみたいぜ!」
「アレシス。お前は使徒なんだから素直にG使っておけよ。それこそ俺達異世界人が夢にまで見そうな神の仕様だぜ。そうだな、また新しい話を聞かせてやるよ。Gがどれだけありがたいかって話だ」
「えぇー! G使わねぇ方がカッコいいじゃん!」
「アレシス。お前は使徒なんだから取り合えず戦えるようにGを学べ。俺がお前だったら狂喜乱舞して喜ぶぜ? 召喚魔法で銃が出せるなんて凄すぎだろ」
「もう飽きた。戦いなら父ちゃんに教えてもらってるだろ。俺はいつかGに頼らない生き方をしてみたいぜ!」
Gに頼らない生き方か。
「そういえば偽アレグシオンが残っていたな」
「なんだそれ?」
「この世界で技術で作られた船だ。Gを使わずに作られてて誰でも運航できるぜ。ただこいつは魔物側の技術だ。俺達使徒じゃな」
正確には出どころ不明だがな。
魔物もG関連の機能は使ってるみたいだしな。どこかで見つけたか、ぶん捕ったか。・・・それとも魔物とすら手を組む惑星ファンタジーの住人か。
ここもまだわかってないことが山のようにあるな。
ゲームじゃないんだ、全ての仕様を知るって事は無理だろうけどな。
「凄ぇ! 行ってみてぇ!」
オモチャには丁度いいな。ゼロス達と相談して一度見に行くか。
ーーー
問題は意外な所から現れた。
記憶を失った少年アレス。
もうどこから突っ込もうか迷ったが、本当に本人の記憶がない。使徒としての力もない。だが完全に外見はアレスだ。アイツの夢がかなってショタ化か、短期形態進化の一環か、はたまた今更アバターの仕様変更で本来のショタボディに戻ったか。
考えても答えは出ない。
本人だろうという事で、俺達が引き取ってアレシスと共に暮らす事になった。
「お姉ちゃん、ですか?」
俺とアレスとアレシスで食事中だ。
アレスは行儀よく椅子に座り、アレシスは足をブラブラさせながらシチューをすくっている。
二人とも生傷が絶えない。喧嘩はもとより、張り合い、冒険とやんちゃ盛りだ。止めても無駄なのはわかっている。使徒の力で争う事もない。今の所は魔物堕ちの兆候はないな。
「ああ。前のお前との約束だ。アレスがもし子供に戻ったらオネになるっていう約束だ。シコルお姉ちゃんでも、単純に姉ちゃんでもなんでも良いぜ」
「はい、シコル、お姉ちゃん」
硬いな。これがあのアレスだろうか? 実はただの別人か? それでも放り出す気はないが、とてもじゃないがオネショタを言い出せる雰囲気じゃないな。
「アレスって前はどんなんだったの母ちゃん?」
「凄かったぜ。072の英雄だ。ヒーラーなのに最前線に出て仲間を信じられる。俺達を含めて助けられた使徒は数多いぜ。訳知り顔でなんでも知ってたしな」
「へー。今は何もできないのにな」
「僕だって好きでこうなったわけじゃないさ。すぐに目覚めて元の僕に戻ってやる」
「へー。今のお子ちゃまアレスじゃ無理だけどな。今日だってビビってたし」
「力がないから慎重なんだ! アレシスこそ恵まれた家庭環境のボンボンじゃないか! シコルさんの子供だからって偉そうにするな!」
「俺がいつ母ちゃんのかさを着たよ!」
「今もだよ! 愛されてるのが当然な顔をして!」
「それの何が悪ぃんだよ澄まし野郎! 家族なんだから当然だろうが!」
やれやれ。
流石に俺もこれには口を出せない。喧嘩の内容にはな。
「アレス! アレシス! 零すんじゃねぇぞ!」
「「はーい!」」
俺は中立で口を出さない。コイツラもいうほど頭は悪くないからな。
ーーー
それでもその生活は長くは続かなかった。
ゴッドゴーギャンのローテーションは一機がフルヘルスキャノンになっているから、徐々に足りなくなっていた。補充は可能だがそれこそゴッドゴーギャンの奪取でもされたら目も当てられない。それで二機編成で7thパレスと6thキャッスルを砲撃していた。
その隙を突いて戦力を増やしていたのだろう。二つ同時にスタンピードが発生した。
気付いたときには魔物の群れ。
魔物の海に浮かぶ小島のような俺の家。
ある程度の防衛策はあるが、ここから安全に二人を避難させるのは至難の業だ。
魔物の群れに超巨大ヘカトンアームは相性が悪い。
俺一人なら問題ないが二人の防衛、連れて逃げるとなるとリスクが高い。最善はここでの防衛。助けがくるまで凌ぐことだ。
だが、俺の予感が走れと言ってる。
「ここを突破するぞ二人とも」
俺はヘカトンに銃器を握らせる。アレシスも銃器を。アレスはスリングを繋いでハンドガンを持たせている。それを左手で俺が担ぐ形だ。
「俺がサイボーグ腕で072の進路を開く。アレシス、進路が空いたら家を自爆しろ。それで後はとんずらだ。遅れたら置いてくぜ」
俺は二人が頷くのを確認すると右腕を多連装ホーミングレーザーの猟犬芋虫に変える。コイツの禍々しさがこんなに頼もしいのは初めてだな。
072に向けたレーザーがその進路を開けていく。そのレーザーと視界を同調すると見た目に反して敵の層はそこまで厚くない。
これは楽勝か? と言う所でアレスの悲痛な叫びが聞こえた。
俺が俺の体に意識を戻すと倒れ伏すアレシスが目に写る。アレスがスリングを外して駆け寄っているが、まずいな。
敵が多い。この状態で家を爆破すれば壁が無くなって雪崩れ込まれる。
「アレス。アレシスをおぶって走れ! 出来ないとか泣き言は言うなよ!」
「シコルさんは!?」
「お姉ちゃんだ! シコルお姉ちゃん一人ならどうとでもなる。進路の開いた今がチャンスだ。俺の心配してる場合じゃねぇぞアレス!」
それを聞いてアレスがアレシスを担ぐ。いつぞやのファイヤーマンズキャリーだ。
それでいい。
俺一人なら逃げられた。俺一人だったらな。
「俺は一人じゃねぇもんな」
まあ、そうだよな。
この流れだと、足の止まるデカイ奴は使っても魔物の波に飲み込まれる。引き撃ちは出来ねぇな。ゴッドゴーギャンも超高速形態とかあればいいんだがな。
ソルジャーでタンクは無理ゲーすぎだろ。
後は運を天に任す。
「南無阿弥陀仏!」
俺は胸に手を当て、神に祈る。そして現れたワインをあおる。
「俺の人生に完敗だ!」
投げ捨てたワイングラスが割れて砕ける。
今回ぶちまけられるのは俺の血か。
▽
Tips設定変更の可能性
マタニティ機能の設定変更に伴い妊娠期間が丸々消えていました。
妊娠期間も一月で出産という形で入れていこうと思います。
この辺は後々変更の可能性もあるので今はこのままにします。




