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第30話 初夜

※実際の初夜は年齢制限にかかるので事後です。


 俺は毎朝のゴッドゴーギャンフルヘルスキャノンの砲声で目を覚ます。

 ここはいつものゼロスの私室。ベッドの上。

 その上は綺麗だ。俺達使徒の体液は体から離れれば消えてなくなる。

 つまり、シーツを汚す事はない。

「クフフ、クフフフ・・・」

 その綺麗なシーツを撫でながら俺は笑う。

 特に何でもない。何もない日常だ。

 それがとても愛おしい。


「起きたのかシコル?」

 ゼロスだ。普通にボクサーパンツ。俺もその系統の緩い下着の上下を身に着けている。やった後の全裸は危険だと判断して、二人でキチンと着込んで寝た。

「クフフ」

「それは笑い声なのか?」

「ああ。なんか漏れてくる。シーツが綺麗ってだけで、なんか、クフッ、笑えてくるんだ」

 俺は起き上がるとゼロスの体に抱き着く。

「はぁ。落ち着く。こうしてると笑いも出てこないな」

「体に問題は無い様だな」

「ああ。中で出しても問題ないな。ただ、なんかくすぐったいな」

「残ってるのか?」

「わからねぇ。気持ちの問題かもな。ゼロスの方はどうだ?」

「こっちはいつもと変わらねぇだろ」

 いつも通り立っている。この夜の為に調整してたが、朝は触らないと二人で決めている。朝まで鍛えているとEDに逆戻りだというゼロスの意見を採用だ。

 そしてもう一つ。

 俺はゼロスとキスをする。そこでは舌を使わない。舌を使うときは下に入れた時だけ。人前での淫行を避けるためだ。

 俺達は俺達のルールを守れている。結婚しているとはいえ、どこで何がトリガーになるかわからない。使徒の結婚は魔物堕ちが相場。天罰に行く前に落ちるという事だろう。その対策だ。

「ゼロスは、舌入れなくても良いのか?」

「特にこだわりはねぇぞ。なんだ? 入れたいのか?」

「駄目だ。入れるときは、下、下を入れて・・・、下を入れてからだ!」

 俺が下ネタの冗談を言おうとしたが、顔が赤らんで尻すぼみになる。

「おいおいシコル先生。恥ずかしいなら言うな。朝からやらねぇぞ。俺じゃなくてお前が暴走してどうする。性欲じゃねぇんだろ?」

「そうだけどよ。やっぱTSは女とは違うのかもしれねぇな。性欲よりも安心感だ。安心感が凄く気持ちいい。お前を試してでも安心感が欲しい」

「わかるぜ。発情じゃねぇよな。性の同一性か? 抱きしめられる感覚はどうだ?」

 ゼロスが俺を抱きしめる。

「ああ。こういう方向性だぜ。くすぐったいのが消えていく。もっときつく抱きしめて、愛の、っ囁き。が、欲しい」

 最後の台詞がどもってしまう。俺の顔が赤い。

「いいぜ。シコル。お前を愛している。もう離さねぇぞ。これからずっと俺の女だ。逃げようとしても逃がさねぇ。俺の腕の中だけがお前の居場所だシコル・ギウス」

 駄目だ。体が火照ってうまく動けない。

 だが俺の体に流れるのは性欲じゃない。

 なにか心地良いものが流れている。

「俺のダンナ様は意地悪だな」

「散々虐められたからな。その仕返しだ。やり返すなら夜にしろ。・・・まったくな。お前の笑顔で『俺のダンナ様』は軽く俺のトラウマだぜシコル。どうしてくれる」

「そうはいってもだな。俺だって同じなんだぜ? お前を止めるのに必死で笑って止めたんだぞ。心で泣きながら俺のダンナ様とか言ってみろよ。どれだけ怖かったと思ってる」

 睨みつける俺の顔にゼロスの顔が重なる。

「知ってる。全て知ってたさ。だから逃げ出した。あの泣きながらの笑顔を俺に受け止められるのか。それが、俺も怖かったぜ。後にも先にもあんなに恐ろしい女を見たのはお前が最初で最後だろうなシコル・ギウス」

「もう、逃げねぇよなゼロス?」

「逃げられるのか?」

「もう、追いかけたくねぇぞ」

「その心配はねぇよ。俺のシコル・ギウス。次は俺が追いかける番だ」

「俺は逃げねぇけどな。それじゃあ戻るか。俺達の日常に」

 

ーーー


「マタニティ機能ですか?」

 話を聞いて開口一番はアレスだった。

 俺達はいつもの4人でギルドハウスに来ていた。

「ああ。文字通りの、文字通りだろうな」

 俺は口にした後、もう一度心の中で呟く。

「それ自体は素晴らしいですが、生まれてくる子供とは、なんです?」

 アレスですら言葉を選んでいるな。

 つまりこのマタニティ機能で生まれてくる子供とは人間なのか?

 

 この機能は誰にでも使えるようなものではないようだ。これを知る人間、使った事のある人間も見つからない。ここでいう人間とは使徒と住人だ。

 これに必要な機材や手引書はギルド、宿舎、該当者である俺とゼロスの個人ストレージからも呼び出す事が出来る。

 そして生まれてくるのは使徒。性別は選べる。ジョブは子供。察するにここから派生だろう。

 成長はかなり早い様だ。最初は人間の一年を一か月。半年で六歳前後。ここからは緩やかになる様だ。この惑星ファンタジーではこれぐらいでないと生き延びられないのだろう。

 ここまではいい。

 問題はこの子供の魂は何かという事だ。

 完全に新しい魂なのか、異世界転生者なのか、それともただの子供の形をした何かなのか。

 俺達でも答えは出ない。

 そして何より、

「シコル。お前はこれを使いたいのか?」

 そう。ゼロスの言葉通り。このマタニティ機能は自分で選べる。自分で望み、選択しなければ妊娠はしない。

 だからこそ、俺は言葉にしたかった。

「俺は、人を愛したい。このTSに意味があるのなら、俺は、ゼロスお前に会うためにここに来たんだと思う。その愛にも意味があるなら、その形の先も俺は知りたい」

 ゼロスの返答は早かった。

「方向性は決まりだな。だがなシコル。先走るなよ。こればっかりはそれこそ人の命だ。選択しないって手も勿論ある。俺は何処までも付き合うぜ。お前のダンナ様だからな」

 少し迷いながらアレスが続く。

「・・・僕の最優先はシコルさんの安全ですね。使徒の体で不備はないでしょう。だからこそ、不備が出た時に僕の選択は最悪を選び取ります。お二人では出来ない選択肢を。この機能も前例があればいいのですが。神の思惑とはイベント。何が起きるか、いえ、何が起きてもおかしくありません。重ねますが、その時の最優先はシコルさんの安全です。シコルさん、ゼロスさん、それを憶えていてください」

 最後にギンガ。

「シコル。今日の夜は二人で話したい。いい?」

 俺はゼロスの確認を取ると頷く。

 するとギンガは柔らかく微笑んだ。

「大丈夫。私はただ知りたいだけ。私はいつでもシコルの味方。ただその理由を知っておきたいだけ」

 そして一度解散という事になった。


ーーー


「それで? どうだったの?」

 ギンガが俺に話を促す。

 ここはギンガの私室。一時期は入り浸っていた場所だ。

 そして今もギンガと俺は添い寝していた。

「だから、その、中で受け止めた時に、凄く、安心できたんだ。性欲じゃなくて、心が満たされた」

「その安心感がシコルの中で弾けたの?」

 ギンガに見つめられて撫でられていると、いつものように全てを話してしまう。

「ああ。幸せが弾けて、全てが受け入れられるようになった。あとはただ、それをずっと感じていたかった。シコルのとはまるで違う。体と心が一つになるみてぇだった」

「そう。これよりも?」

 ギンガが短剣を抜くと俺の肌に刃を滑らせる。

 最初は驚いたが、ギンガの刃は肌を傷つけない。

 掌では大きすぎる。

 その指先でも太すぎる。

 爪先では不潔だ。

 それでこの刃だ。

 この肌すら切り裂く極細の圧力が絶妙な加減で肌の表面をなぞる。

 本来なら恐れを抱く銀の刃がその繊細で高速な動きで愛撫してくる。

 人の指先では得られない。技巧の冴えが俺の感覚を包む。

「これ、みたいだな。あっちは中にあるのに包まれているような。そんな感覚だぜ。これも刃で包まれてるみたいだしな」

 痛みなどはほとんどない。皮膚の鏡面をなぞられて、その神経を通して脳を直接撫でられているような心地よさがある。だからこそ肌を撫でられているのに全身を包まれているような感覚がある。

「そう。これは愛の感触。肌を通して愛おしさを表現する。これと同じなら、それは愛と呼べる感覚。シコルはゼロスが好き?」

「どういう好きを聞いてるんだ?」

「シコルが感じたまま。友情とか、愛情とか、そういうのでもいい。ゼロスが好き? その問いでシコルは何を連想させた?」

「俺は、好きだ。心の中が温かくなって安心する」

「ドキドキはしない?」

「しない。ただつがいの様に一つになりたい。ドキドキは、ギンガの方だな。今でもふとした瞬間に可愛いって感じてる俺が居る。これは不貞かな?」

「ううん。シコルの体は間違いなくゼロスを愛している。ただ心はまだ、シコルのまま。シコルの魂が女になったわけじゃない。シコルはシコルのままゼロスを愛している」

「俺とゼロスは同性愛って事か?」

「・・・違う。シコルはシコルのまま女になってゼロスと愛し合っている。シコルは変わってない。シコルのまま女になった。簡単に言うと、シコルは女の子じゃない。男の子のまま」

「・・・全然わからねぇぞ」

「私がシコルを横取りすることはないって事。私が好きなのは女の子。愛したのはただ一人。そしてシコルは男の子。今まで通り何も変わらない」

「愛した一人ってのは俺の事じゃねぇのか?」

「そう。私は好きは誰にでも預けるけど、愛しているのはただ一人の女性。シコルは始めて好きになった男の子」

 そういうギンガの顔は否定でなく、俺を受け入れてくれた笑顔だ。

「確かに。俺のギンガ分が増えていくぜ。これは不貞じゃないよな?」

「勿論。シコルの男の子は正常。そのままでゼロスを愛せた。そして私とは恋を続けられる。私はこれで満足」

「なんかもっと略奪愛とか来ると思ってたぜ」

「それはシコルが女の子になってたら。私の初恋の男の子との関係はこれからも続いていく」

 ギンガの手が俺の手と重なる。

 ウッ、やっぱりドキドキするな。確かにゼロスにこれは感じない。

 ギンガも同じくドキドキしている。

 これが初恋が続いているって感じなのか。

  俺とギンガは互いのギンガ分とシコル分を補充し合いながら、幸せな一時を過ごした。

 男と結ばれても、恋は終わらない。

 もしかして俺は、TS転生は、俺が考える以上に複雑なのだろうか?

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