第26話 写真
なんだこりゃ?
俺達はアリアが飛び立った後、下船の解除をしてそれを見守っていたが、俺の中におかしなストレージが入っている。
そのサブストレージとも言うべきものはほとんどが不明で触れるのは一つのみ。
どうやら写真だ。入っているというよりも召喚魔法で呼び出す写真だ。こういう形で保存する方法もあるんだな。
「どうしたシコル?」
俺の様子に気付いたゼロスが声をかけてくる。
「ああ。どうも新しいストレージが出て来たみてぇでな。どうやら写真だぜ。召喚魔法で写真を生み出せるみてぇだ。ストレージにこんな使い方があるんだな」
「おいおい。またかよギリギリサブマスターシコレ女史。中身はわかるのか?」
「こればっかりは出して見ねぇとな。ゲッ。召喚にレーザーライフル10本分かよ」
「どんな写真だそれは。取り合えず出してみろ。今の方が対処がしやすい」
まあ、それはそうだな。厳戒態勢中の港なら何が起きても安心か。
「なら出すぜ」
俺は召喚魔法で写真を呼び出す。
いつもならすぐに出てくるがジリジリと少しずつ出てくる。紙の詰まったコピー機か。
「まるでポラロイドカメラだな」
「なんだそりゃ?」
「写真が出てくるカメラだ。その場で現像できる奴だな」
「お前、たまにそういう未知の超技術品が出てくるよなゼロス。俺の異世界と違うのか?」
「むしろアナログだぞ」
「アナログでの超技術なんて俺は知らねぇよ」
ゼロスは超古代文明の生き残りか?
そんな俺のやり取りとは関係なく、写真が出来上がる。そこに浮かび上がったものに俺達は目を丸くする。
俺だ。
俺がセーラー服を着ている。
前世の俺じゃない。ピンク髪ピンク目のシコル・ギウスだ。
それが異世界のビル街、それも日本だ。こちらに向かって微笑んでいる。
「これは・・・」
流石のゼロスも言葉を失っているようだ。
俺の異世界では人間でピンク髪ピンク目はほぼ存在しない。仮装やコスプレを含めればその限りではないが、日本人でこれはないだろう。少なくとも今の俺のような姿ではない筈だ。俺が調べたわけじゃねぇけどな。
「おまえが作ったのか? シコル」
「いや、内容の指定は流石に出来ないぜ。ただそのまま出しただけだ」
「・・・ここに写ってるのは間違いなくお前だなシコル。心当たりはないのか?」
「いや、流石にな。俺がTSしたのはここに来てからだ。それともこの惑星ファンタジーにこんな場所があるのか? ついでに言っておくが俺はここに来たのは初めての筈だぜ」
「・・・俺にも心当たりがないな。触ってみても良いか?」
ああ、と返事を返して渡すがスリングを掛けるのを忘れてしまう。
だがその写真は何事もなくゼロスの手に渡った。
「・・・これは、永続化か。召喚魔法の永続化付与。俺も初めて見るな」
その後俺達で話し合ってみたが埒が明かない。
それはゼロスに預けるという話になった。
流石に自分の写真を懐には入れたくねぇしな。
ーーー
その数日後、俺はアリアと072を散歩している。
特に何事もなく市街地をぶらぶらだ。
「あんたよくあいつと居られるわね」
開口一番悪口だ。アリアの言うあいつとはアレスの事だ。そういえば最初のアリアもアレスを怖がっていたな。アリアの悪口は続く。
「あんなヤバい奴みたいことないわよ。あんたは平気なのシコル?」
「アレスは変態なだけで特に問題はないぜ。基本いい奴だしな」
「そっか。あんたはTS転生だっけ? 男だから感じないのか。あいつに言いよる女なんて見たこと無いでしょう?」
思い返してみるとギンガは普通だが、アレスが女と絡んでいるのを見たことがない。そもそもここには女性使徒は少ないがな。
「ねぇけど、なんだ?」
「ヤバいわよ、あれ。相当殺してるとみて間違いないわ。あんたも襲われたことない?」
グッ。流石にそれは、ないとは言えない。
そんな俺を見て鬼の首を取ったようにアリアが勝ち誇ってくる。
「ほら見なさい。あんたって危機感がないのよね。恐れ知らずも度を超すと身を滅ぼすわよ」
「だが俺には神速のシコル・ギウスがあるからな。それでアレスはイチコロだぜ」
「それって何度も危ない目に合ってるって事でしょ? あんた、体は女なんだから自分の事、大切になさいな。いくら神の目があるからって魔物堕ちに襲われてちゃ意味ないわよ。あんたが死んだ後に天罰が降ってきても遅いでしょ。自分の身は自分で守る。自分が女だって自覚なさい?」
「いや、俺はTSだから・・・」
「シャーラップ! あんたがどうかじゃない。あんたがどう思われるか。女がここで安全なんてことないんだからね。そこは理解する」
「いや、ギンガは・・・」
「あれは例外。それ以上に男に気を許してないでしょ。それこそあんたに甘々なのはTSだからでしょう」
「いや、ぐっ、裁判官! 猶予をください!」
「有罪! 死刑執行人に囲まれてるのを理解しなさいシコル・ギウス死刑囚!」
「お慈悲を!」
「だから今かけているんでしょ。あたしの言葉はきちんと聞いておきなさい。シコル・ギウス被告人。あんたは有罪。片足突っ込んでるの。理解しなさい」
「そんなに危険か俺は?」
「そうよ。あの第072冒険者ギルドで一番まともなのはあんたよシコル・ギウス」
「それは褒め過ぎじゃねぇか?」
「褒めてないわよ! ほんとにあんたは危なっかしいんだから!」
俺が一番まともかどうかは置いておいて、アリアの危機感も少しはわかる。
そこにギンガがやってきた。
「何を騒いでいるの?」
「ギンガ。あんたも言ってやってよ。シコルってば危機感が足りなすぎ。アレスにも襲われてるみたいじゃない」
「アレスは問題ない。彼は安全。シコルの為なら世界を敵に回せる」
その言葉にアリアの態度が変わる。先ほどまでとは打って変わって冷たい表情を見せる。俺達と会う前の様だ。
「あんたも同じなのギンガ?」
「同じ。シコルの為なら神も世界も敵に回してみせる」
「「・・・」」
睨み合う二人。先に口を開いたのはアリアだった。
「シコル。あんたやっぱりあたしの船に来なさい。あんたなら大歓迎よ。楽しくやっていけそうだし」
その言葉は確かに俺に向けられたものだが、アリアの視線はギンガを捉えている。
「シコルは渡さない。私の敵になるのアリア? 私はなにも恐れない」
「ちょっと待てよお前ら!」
俺は二人の間に割って入る。
「悪ぃなアリア。勧誘は断るようにしてんだ。ギンガもだ。俺がお前達と離れる訳ねぇだろ。俺はいつまでも第072冒険者ギルドの一員だ。それは変わらねぇ。アリアも警戒しすぎだぜ。アレスにしたって対処範囲内だ。俺なら大丈夫だ。神速のシコル・ギウスもあるしな」
俺はにぎにぎと右手を握って見せる。
それでどうやら収まったようだ。
「そう。あんたが安全ならあたしは文句はないけどね。何かあったらあたしを頼りなさいシコル。あんたのための門はいつでも開いてるから。それであんたはどうなのギンガ?」
「私も同意。シコルの味方は私の敵じゃない。それが増えるのなら私は関与しない。ただ引き抜きだけは許せない」
「わかったわ。あたしも引き抜きじゃない。シコルが危険だと思ったからだしね」
二人の緊張が抜ける。
「お前ら今のは何だったんだよ。俺に俺の知らない危険があるってのか?」
「そういう事よシコル・ギウス死刑確定犯。取りあえず保留にしとくわ。ただ憶えておいて! 困ったらいつでもあたしの所に来ること! あんたはあたしの命の恩人なんだからありがたく恩着せがましくしなさい!」
おいおい、この前と言ってることが違うじゃねぇか。
「ああ。その時は頼むぜ。ただこれが最後ってのは無しだぜアリア。いつでもまた会えるってのが条件だ」
「良いわよ。ホントにあんたは他人の心配してる場合じゃないんだけどね。それじゃ」
そう言ってアリアは去った。
アレグシオンも出航。
目的を聞いても「口の軽いあんたじゃ無理」という事でギルドマスターのゼロスにのみ伝えていった。
まあ、俺の口の軽さじゃ機密は無理だわな。
ーーー
そんな俺にファンメールが届いてきた。俺の合宿の自室にだ。
誰かが持ってきたのか?
あて先はシコレ・ギース。差出人は書いてないな。
おいおい。俺はシコレ・ギルスと名乗ったが聞き間違いが居たらしい。
そして少し厚めの封筒を開封すると何かの書類が出てくる。
『キャリオンクローラー計画』
パラパラと見ていると見知った顔写真が現れる。
これはあの時の半身巨人の二人だ。
そしてアリア。
これは、魔物球体の被害者リスト?
・・・いや、違う。俺の知らない顔もある。これはなんだ!?
「あっちぃ!!!」
俺が詳しく調べようとすると読み終える前に資料が燃え上がる。
これはあれか、機密資料の手順を踏まないと自動焼却みたいなやつか。
駄目だ。消そうとしても消えない。そして俺の想像通り燃えカス一つ残らない。
残ったのは俺の中にある不気味さだけだった。




