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第19話 ギルドフォネティック

「何かおかしいですね」

 運転するアレスの隣に座っていた俺は確かにおかしな軌跡をみて頷いた。

 アレグシオンの軌跡だ。

 地上航行用の地中潜航部分の軌跡が乱れている。

 行ってしまえばアレグシオンという船の喫水線の跡だ。

 この世界には道は少ない。それで代わりに船が陸上を航行している。喫水線より下が地面との境界線で波を立て、その痕跡が道の代わりになる。

 やろうと思えば森でさえ船底でならしながら航行できる。

 だが明らかにその軌跡はおかしかった。


「崖下か」

 俺の言葉通り。降りたというよりも落ちたという形だ。道を逸れて森に突撃、崖に気付かず転落か。ギルドカーで追える道筋じゃない。

 次の目的地よりもアレグシオンの行方だな。


 だが俺達が迷う必要はなかった。

 突如崖下からアレグシオンが飛び出してきた。どう見ても航行状態じゃない。崖下から投げ飛ばされたかのようだ。喫水線下の地上潜航部分は機能しておらず、森に横倒しになる。

 アレグシオンの機能は停止している。明かに外部の力で押し出されたものだ。


ーーー


「助かったぜシコル!」

 そこは既に地獄の様相を呈していた。

 アレグシオンから出てきたのは二つ。

 一つはこの黒光り事ゴルフ。いま俺に話しかけて来た奴だ。その他も072で見た顔だ。続いてフォックス、エコー、デルタ、チャーリー、ブラヴォ。総勢6名。ギルドフォネティックのメンバーだ。

 もう一つは見覚えのある虫型魔物。そいつらが銃火器を持っている。召喚魔法じゃない。この世界の技術で作られた武器だ。

「MP切れで死ぬかと思ったぜ」

 ゴルフの言う通りギリギリの状態だったらしい。アレグシオンが機能停止してから結構な時間、戦闘は続いていたのだろう。今はギルドカーを中心にアレスがウォールを展開している。MP切れのフォネティックの面々を最奥にして俺達第072冒険者ギルドが前に出ている。

 しかし不味いな。この戦力じゃ虫ボスを倒せねぇぞ。今は見えないが敵の回復が来たらギルドカーを捨ててでも離脱する必要が出てくるだろう。

「アレス。大天使は出せるか?」

「出せますが厳しいですね。あれは大規模戦闘用です。味方が100人くらいは居ないと真価は出せません。トドメの剣戟もボスの耐久を減らせていないとただの自爆技です」

「そりゃ駄目だな」

「はい。普通に戦う方が良いですね。勝つというのは難しいですが」

 そうだな。完全に逃げ時の見計らいだな。


 そしてボスが出てくる。だが、あの回復してくる虫ボスじゃない。

 ツインテールの飛行型大型虫ボス。それが崖下から上がってくる。大勢の小型飛行型虫も一緒だ。

「レディ。やられちまったか」

 ゴルフの呟きが聞こえてくる。

「あれが聖女レディじゃないのか?」

「あれはアリアだ。レディは俺達を助けるために短期形態進化を使ってアレグシオンを崖上に放り投げた。多分だが、決着は付いちまったな」

 あれがアリア? 今回はボスなのか? 一体どうなってる?

「奴は回復できるのか?」

 ゼロスがそれを聞いてこっちにやってくる。

「回復はねぇ。だが小型を排出してきやがる。アレの切りがねぇ」

 見ていると飛行型は全てアレグシオンに向かっている。今がチャンスと見るか。行くにしても引くにしてもだ。

「これは逃げるって選択肢は出来なさそうだな」

 これはゼロスの言葉だ。

 俺も同意見だな。銃持ちに飛行型だ。どうにもならねぇ。

「シコル。俺がオーガで敵を片付ける。お前とギンガで飛行型を片付けてくれ。アレス、二人を頼む。ゴルフ、フォネティックはギルドカーを頼めるか?」

 ゼロスの言葉に全員が頷く。


 ゼロスオーガが対地対戦車ガトリングを呼び出すと森の中へ消えていく。

 俺は超重量バッテリーパックを出すとヘカトンケイルで宙に持ち上げる。大容量バッテリー12個を繋げたとんでもない代物だ。

「ギンガ。これを使ってくれ。移動は俺達と同じになっちまうが構わねぇか?」

「飛行型を狙えばいいのね?」

「ああ。俺じゃ当てられない。俺はゼロスの援護だ。アレス、付いてきてくれ」

「わかりました。二人を守ればいいですね?」

「ああ。ゼロスの援護は俺だけでいい。行くぜ!」


ーーー


 ギルド『フォネティック』

「ゼロスの野郎消えちまいやがった! どこに行ったんだ? アイツがタンク役じゃねぇのか?」

「いや森の中だぜ。ガトリングで狙撃してねぇかアイツ?」

「銃声が響いてねぇ。虫野郎どもも弾を撃ってねぇぞ。どういうことだ?」

「あそこだ。敵の中央を駆け巡ってやがる。敵が撃てねぇわけだ」

「敵の数の減りも速ぇ。あの巨体が戦場で姿を消せるのか?」

「あれが、エンディングデトネイター。終焉の起爆装置。奴がそうなのか」

「なんだそれは?」

「噂で聞く、戦場を終わらせる起爆装置って意味だ。そいつが来ると爆炎も上がらないのに敵が消えていく。誰が敵を倒したか誰も知らない。その怪奇現象の事だったんだが、それがゼロスだったって事だ」

「それにしても不気味だぜ。オーガがガトリングを持ってるのにこんなに静かで把握できない戦場なんて初めて見たぜ」

「シコルもヤベェな。爆撃しながらゼロスに合わせてやがる。誤射しねぇのもそうだが奴の動きが見えてるのか?」

「ここからでも見えねぇのに森の中で把握してるのかよ!?」

「そうとしか思えねぇ動きだ。俺達じゃ着いていけねぇぞ」

「着いていく必要はねぇ。俺達はギルドカーの死守だ。コイツがやられたら生き残るのも難しいぞ」

「そうだな。ギンガの狙撃もスゲェナ。飛行型が半分は落ちてるだろ」

「これが惑星ファンタジーナンバーワンギルド第072冒険者ギルドか」

「こりゃアレス・カリバーンが光臨するわけだぜ」

「ギンガが短期形態進化するみたいだぜ。あの銀の竜は・・・」

「ガーディアンロード。守護君主リントヴルム」

「・・・俺達死ぬ前に夢見てるんじゃねぇよな?」


ーーー


 それは突然だった。ぶつぶつと独り言のトリップ状態だったギンガが銃を捨てて立ち上がる。

 その姿のまま髪をかき上げるとその姿が銀色の竜に変わる。そして一瞬にして上空へと飛び立つ。

 そして上空からレーザーの嵐。小形は全滅し、大型の飛行型虫ボスの羽を焼く。

 そして俺達が取り付く。ゼロスは二丁ガトリング。俺はヘカトンでアサルトを撃ちながらライフリングレーザー二丁で焼いていく。

 これがアリアなのか?

 なんでだ? なんでそっちに逝っちまうんだ? それがお前の姿なのか?

 俺はいら立ちをトリガーに変える。

 俺の感じていた信頼は何だったんだ?

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