かおり 20歳
10時15分。また今朝も起きられなかった。
浪人をしてまでこぎつけた都内の大学生活はもう2回目の6月を迎える。
ここのところ、講義にはほとんど出られていない。
割のいい夜間帯の居酒屋バイトをはじめて早半年。酔っぱらいのいなし方がうまくなった一方で、大学生活にはとことん悪影響を及ぼしていた。本末転倒も甚だしい。
こんなことなら実家から通うんだった。片道1時間15分かかろうとも、そっちの方が時間もお金も余裕が持てただろう。
さすがに今日こそは午後からでも大学に行かないとな。
だらだらとベッドから起き上がって顔を洗いに洗面台に向かう。
不意に左手に握っていたスマホの画面が光る。
『今日直帰になるから午後さぼれそー!家行くわ!』
付き合って2か月が経つ男からの連絡。
大学生なんだから彼氏が欲しかった。できれば年上の社会人。それだけの理由で付き合った男。
『おっけー待ってるね』
いつ別れてもいいような男に対してでも、私は断ることができない。
誰かに嫌われることが怖いから。
今日も結局大学に行けないな。明日こそは行こう。
そう思う傍ら、どうせ明日も似たようなことで行けっこないとも考える。
こんな日々を断ち切るべきだと頭ではわかっている。
でも何かを変えるのは怖い。切り出す勇気が私にはない。
未来のことを考えると何かをしないといけなくなりそうだから、できるだけ思考を止められるように私は日々を過ごしていく。
子供から大人になる狭間、希望に溢れた人だけではないですよね。
漠然とした不安感で将来のことを考えられず、惰性で日々を過ごすかおりのような方々もいるのではないでしょうか。
みなさんが楽しい日々を送れますように。