表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霧恋エスカレーション  作者: 美飾時矢
6/31

第六話 罠の代償

 季節は、少しずつ姿を変えて移ろいゆく。

 そよ風が気持ちいい。

 友理奈は、会社の屋上で手作り弁当を食べていた。


 亮の足音。


「うまそうだな」

「休憩中は、お静かに」

「家庭的な面もあるんだ」

「食費の節約になるから」


 景色を眺める亮のショートヘアーが風に揺れた。

「あいつら、裏の顔があった」

「調べたの?」

「ああ、上層部に知られたら、懲戒だろう」

「色々、悪いことしてたんだ」

「どこにでもあるのかな。人の中に棲む闇ってやつが」

「あなたが言わないで」

「どういう意味だよ」

「別に……それで、どうするの?」

「証拠はつかんだ」

「復讐が果たせるね」


 友理奈は、どうでもいいという顔で、ウインナーを口にする。


「それだけじゃない。この会社の奥へ一歩踏み込むことができる」


「楽しみね。どこまでのぼれるのか」


 友理奈、卵焼きをつまみ、

「食べてみる?」

 と、呑気な顔。

「だから、俺とどうなりたいんだか、言ってからにしろ」

 翻弄され、ムキになる亮だった。


 友理奈は気にせず卵焼きをパクリと食べた。




 夜、亮は梨緒を部屋に呼んだ。


(亮と二人きり……胸が……少しだけ)


 そんな気持ちを振り払う梨緒。


 亮は、梨緒の胸の鼓動を感じることなく、すぐに仕事の話を始めた。


「これは!」

 資料を見て驚く梨緒。


「横領の証拠」


 不正の発覚に、梨緒は愕然とする。


 その横顔を、すました顔で亮は見ていた。


「社内でこんなことが……」

「人って、わからないものだね、隠れたところで、こんなこと……」

 梨緒は何ページもの資料を読んだ。


「よく調べたわね」

「会社のためだから……僕の大切な会社の信用にかかわる問題だと思って」


「ありがとう」


 二人に瞳が重なる。亮と梨緒、それぞれの違った思いも重なる。


「それと、大切な、ねえさんの」

「ん?」


「いや」


 見つめる梨緒、視線を外す亮。


「今なんて……大切な?」


「なんでもない」


 梨緒は、亮の態度に惑わされつつあった。


(だめ、ここにいるのは、血のつながった弟)

 気持ちを抑えながら、

「社長と相談するわ」

 と、梨緒は資料を封筒にしまい込んだ。



 奥田商事の会議室。

 取締役が集まる会議で、社員の不正が議題となる。


 そして、担当者の処分が下された。


 社員の横領は、所属の営業部を中心に広まった。


「解雇だって」

「そんなことする人には見えなかったのに」

 噂が飛び交った。



 晴れた日の屋上に、亮と友理奈がいた。

 二人に手には、カップのコーヒーが握られている。


「係長に昇格?」

 友理奈がコーヒーを口にして言った。

「主任に」


「エレベーターに乗って、スイスイと上にはいかないのね」

「社長は、俺のこと認めてないからな」


 友理奈は、亮の横顔を見ている。


 亮は、遠くの景色を見ていた。


「いいさ 時間はたっぷりある」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ