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霧恋エスカレーション  作者: 美飾時矢
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第二話 会社に潜入

 亮は、ミストボックスのオフィスに来ていた。


 メイコと話す亮。目的の第一歩は成功し、チケットは手にした。

 亮の顔は明るかった。


「DNA鑑定の話がでた時は少し焦ったけど」

「この仕事でDNA鑑定なんて想定内」

「舟木弁護士が落ち着いていたわけだ。あの顔を見たら任せるしかないと思った」

「各方面に、つながりをもっているからこそ、このシステムが存在する」

「国の機関も動かせるとか?」

「活動内容に関して、必要以上の詮索はしないこと」


 どこまでも謎の団体であることは間違いない。



 奥寺商事、夕方の風景。

 帰宅する社員。

 同僚同士で食事に向かう風景も見られる。


 日が沈んでいく。

 オフィス街にも明かりが灯る。


 イタリア料理店。

 経理課の平野美月と食事中の梨緒の姿があった。


「ただの経理主任の私が、社長の娘で常務のあなたと食事なんてね」

「そんなこと……私、高校からの親友の美月だけには、言いたいことが言える」

「常務取締役だものね、色々と苦労も」

「ほんと、色々ありすぎて」

「そういえば、食品営業3課の新入社員って、社長の遠い親戚とか?」

 亮の話になった。


「その情報って……?」

 すでに社内で噂になっているのだろうか?

 梨緒は気になった。


「奥寺商事の中央情報局」

 美月は、そこから聞いたらしい。

「清掃の?」

「清掃員の人達って、よく知っているのよね」

「確かに」


 自社ビルの清掃員は総務部の管轄で、社内各方面の情報に詳しく、社員の間でも中央情報局などと言われていた。


(あの秘密も? 隠し子のことはどこまで知られてしまったのか?)


「その人が親戚ってことだけ? 他になにか?」

 梨緒は不安げに訊ねた。

「別に、それだけだけど……梨緒の遠い親戚にあんなイケメンがいたとはね」


(よかった。隠し子のことはバレてない)


 注文した料理が運ばれてきた。



 奥寺家、社長の家らしく庭付き、車庫完備の豪華な家だった。


 日曜日、美和子と梨緒は初めて自宅で亮を迎えた。

 亮は、あの狭く古いアパートを引き払ってきた。


 母娘の住む住居から庭を歩いて離れに別宅がある。

 庭は、植木職人が手入れをしているようだった。

 亮は、別宅に案内された。

「正樹さんが書斎や趣味の場として使っていた部屋よ」


「ここに住んでいいんですか?」

「仕方ないわ。それに私達と同じ屋根の下で暮らすなんてできないでしょ」

 美和子は変わらず冷たい態度を見せている。


 部屋の中に入った。

 ソファーにベッド、冷蔵庫なども完備されているから生活には十分だった。


 棚に登山の本などが置いてあった。


「父さんは、登山が趣味だったとか?」

 亮は、一冊の本を手にした。

「父さんって」


「いいじゃない。お父さんの子供なんだから」

 梨緒は好意的だった。一人っ子の梨緒にとって、やはり弟ができたのは嬉しい。しかも、かなりの美男子とあれば……。


「食事も別々よ」

 と、美和子は背を向け、出て行ってしまう。


 亮と梨緒は、顔を見合わせ困った表情をしていた。



 亮は、人事部との最終調整も終えていた。

 入社日も決まった。


 奥寺家の前、社長専用車が待っている。


 家から美和子と梨緒が出てきた。

 運転手はドアを開けて立っている。

 美和子を見送る未緒。


「いい、くれぐれも社内で噂などたたないように」

 美和子が梨緒の耳元で小声で言う。

「わかってる。弟のことは重要機密」


 梨緒を残し、車は会社に向かった。




 梨緒は、庭を歩き別宅の部屋に向かう。


 亮が玄関から顔を出すと梨緒が立っている。


「おはよう、同伴出勤しようか?」

「同伴って」

 亮は、呆れた顔をした。


「嘘よ、一緒に暮らしていることも秘密にしないと」

「社内では、常務と新入社員の関係で」

「うん、先に行くね。遅刻しないように」

 梨緒は手を振りながら微笑んだ。


 今後もこんな関係が続きそうだ。



 奥寺商事の受付で挨拶をする亮。


「新入社員だって」

「朝の楽しみが増えたわね」

 亮の背中に、小声で呟く受付の二人。



 総務部からでてくる亮と総務部男性社員・坂口。

 坂口に案内され歩き出す亮。


 二人は、社員食堂に来た。


「食券はICカード式の社員証を機械に通して、給与から天引きです」

 メニューも豊富で、評判のよい社員食堂だった。以前、雑誌の記事になったこともある。


 清掃しているパート清掃員・真壁友理奈(まかべゆりな)の姿があった。。



 亮は、食品部営業3課の配属だった。


 奥寺商事主力の食品部門、3課は冷凍食品を担当している。


 課長の谷村が、亮を紹介する。


「中途採用の石清水亮君、この業界は初めてらしいので、よろしく頼む」


 水元真奈美が亮を席に案内した。


「わからないことがあったら、なんでも訊いてくださいね」

 と、かわいらしさを演じている。


 席に座る亮、目の前の中西恵美と目が合い会釈した。ポッとする恵美。


 男性社員の妬みの目があった。


 係長・五十嵐斗真の鋭い視線、部下の清水と視線を合わせる。



 都会の繁華街は、夜の賑わいを見せていた。

 仕事を終え、行き交う人々。


 歓迎会会場に3課の社員が集まっている。


 男性は五十嵐と清水のみで、他は女性社員だった。


「男性社員って、参加少なかったですね」

 真奈美が言う。

「営業は忙しいから……別に来なくてもいいけど」

 と言って、恵美はビールを飲んだ。


「係長みたいに仕事をスマートにこなせたら、仕事に追われて不参加なんてこともないと思いますけど」

「仕事の仕方は、人それぞれ」

 女子社員に、五十嵐が言った。


「五十嵐係長、3課のエースなんですよ。清水さんも優秀で」

 真奈美が隣に座る亮の耳元で伝えた。

「仕事できるんだ」


「石清水君、商品についてわからないことがあれば、なんでも訊いて」

 清水が亮のグラスにビールを注ぐ。

「ありがとうございます」


「困ったことがあったら、言ってくださいね

 と、うっとりする女子社員。


 亮にに興味津々の女子社員が場を盛り上げた。



 歓迎会は無事終わり、五十嵐と清水はタクシーに乗っている。


「新人、女子からの人気高いですね」

「若いイケメンに夢中なる程度の女に興味はない」

 と言いながら、五十嵐は悔しそうに拳を握りしめた。


「でも、これで営業成績でも上げたら、係長の一番人気に陰りが」

「その前につぶしてやるよ。花を咲かせる前に芽を摘み取る」


 日曜日、美和子は家にいなかった。

 梨緒は、亮を家に呼んだ。


 設備の整ったキッチンがあった。

 梨緒は食事の用意をしている。


「こちらの部屋には入るなって」

 テーブルに座って待つ亮。


「お母さん、仕事でホテル住まいが多いの、そんな時は二人で」

 梨緒は嬉しそうだ。


「二人きりで?」

「姉弟だもの、問題ないでしょ」


(無防備な女)

亮は、楽しそうに料理を作る梨緒をみた。


「私ね、ずっと一人っ子だったから、弟ができて嬉しい」


(いつかその微笑みが、涙色に染まる)


亮の澄ました顔の裏にある復讐心など、梨緒は知るはずもなかった。

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