第十八話 陰謀の裏にあるもの
亮は、小泉和香と田向の家を訪ねた。
前回、私も行きたかったと駄々をこねた和香を、今回は連れてきた。
鶏は元気に駆け回っている。
ただ、田向の様子がおかしい。前に訪問した時は、とても明るく気さくだったのに。
田向は、業界の異変を話し始めた。
「変な話を耳に」
「聞かせてください。当社にも関係があるかもしれません」
一同は居間で、お茶を飲みながら会話をした。
「養鶏場経営の仲間からウィルスが流行り始めていると」
「鳥インフルエンザですか?」
「今までとは違う新型という話も」
「怖いですね。感染が拡大すると」
和香の表情も暗くなる。
「一羽感染すると、すべて殺処分ですから」
「養鶏場では死活問題ですね」
「廃業になっているところもありますから」
「どこが感染経路なんですか?」
「それが……」
田向の口が閉じた。
「なにか?」
「原因はわかっているんですか?」
「確証はありません。ただ、ウィルスがまかれたという」
「人為的に?」
「詳しいことは、まったく?」
「それが本当なら犯罪ですよね」
「誰が、なんの目的で……」
(調べてみる必要がありそうだな)
亮は会社に戻り、その後、ミストボックスにコンタクトした。
ミストボックスのオフィスはいつも静かだ。
正体不明の集団だけあって、人の姿がなく、物音もしない。
まるで透明人間が社員でいるような。
そんな場所で、亮はメイコと話している。
「調査結果は?」
「裏では、バロン集団が動いているみたい」
「バロン?」
「裏社会では三流程度だけど、今まで相手にした集団に比べたら」
「そこそこ大きい?」
「特定の政治家とのつながりもあるみたい」
「その政治家とは?」
「そこまではまだ」
「ぬるい調査だな」
「ミストボックスを、魔法のランプや打ち出の小槌と勘違いしていない?」
「そう簡単に欲しいもが手に入れば苦労はないか」
そう言って亮は立ち上がった。
「引き続き、調査をよろしく」
亮は屋上で友理奈とも話した。手元にはいつものカップコーヒー。
友理奈も貴重な情報源だ。亮の中に宿る野心は、利用できるものはすべて利用するのだと囁きかける。
「政治家なら私も探れるかも?」
「無理すんなよ。相手は裏社会だ」
「心配してくれるの?」
「別に、まだまだ利用しただけ」
「そうよね、あなたは私を利用したくて、ここにいる」
「それだけじゃない」
「ん?」
「さぼって、コーヒーを飲むため」
(そんな冗談言える人なんだ)
友理奈はクスッと笑った。
夜の華やかな都会の景色。
派手に着飾り行き交う男女。
一夜の夢を追いかけ、闇に消えていく人の影。
歩道橋から景色を見つめる友理奈がいた。
昼間とは違う服装とメイク。夜の女に変身していた。
真下に高級車が停車し歩き出す。
高級バー。
友理奈は、政治家との語らいに目を細める。
政治家も嬉しそうな友理奈の顔を見て、微笑みを返す。
政治家から渡された化粧箱には、高級時計が入っていた。
が、友理奈は、『いただけません』と返した。
体は売らない、高額品は貰わない。それが、彼女自身が定めた仕事のルールでもあった。
大学の費用を稼ぐためとはいえ、なぜ、デートクラブに? 謎の多い女であった。
夜の友理奈は、ミステリアスで美しく、会話も上手い。そんな友理奈を指名する政治家は多かった。
こうして、友理奈はバロン集団と癒着する政治家の情報を仕入れていった。
そして、元農林水産大臣・小山内弘之介の後を継ぎ国会議員となった息子の小山内伸二にたどり着く。




