第十五話 再会
亮の社内改革案を梨緒は役員会に提案した。
社長の美和子は、亮が隠し子であることを悟られないよう、広くアイデアを募集し、亮のアイデアを採用した形にした。
試験的ではあるが、社内カンパニー制度の実現に動き出した。
店舗事業グループは、独自で利益を追求していくことになる。
各部門で業務内容は様々だが、統括は執行役員の野上誠也。梨緒も常務取締役として部門のプロジェクトに参加することになった。
亮は、田辺靖代を部長とする事業推進部に残り、所属は二課。
二課の社員は、前推進室のメンバーがそのまま残り、ほぼ変わっていない。
さっそく二課では、新店舗の推進業務が始まった。
新しい店舗は創作料理の店。しかも、有機野菜など、無農薬や天然、新鮮な食材、産地直送やとれたてといったこだわりの品々でメニューを作ることになる。
価格は高くなるが、健康志向や本物志向など、食を奥深く追及して創作する料理を特徴としていく。
亮は友理奈と屋上にいた。
「最近どうだ?」
「別に、昼も夜も働いて」
「おまえのことじゃない」
「会社のこと?」
「社内でなにか変わったことは?」
「どこまでも私を利用するつもりなのね」
「山頂を目指すためだ」
「調理器具を扱う四課の課長が退職したわ。内部告発」
「収賄か?」
「特定の業者から接待を受けて発注を繰り返していったって」
「懲戒じゃなくて、自己都合で退職とは甘い会社だ」
「金本専務の派閥にいたっていうから、その関係の処置かも」
「金本専務か……正樹社長と同期で、社長の座を争ったとか」
「結局、奥寺家の長男、正樹氏が社長に」
「快く思ってはいないでしょうね、専務は……」
「さすが詳しいな、中央情報局」
「役に立ちたいな」
「ん?」
「誰かのために、もっと役に立ちたい」
二人の会話は途切れた。
見つめ合ったかと思うと、視線を外し、景色を眺めた。
男と女の駆け引きのようだった。
夜、裏通りは賑わっていた。
ラーメンからやきとり、様々な屋台が並んでいる。
店で、研吾と日本酒を飲む亮がいた。
「遅いな」
と、研吾は時計を見る。
「誰か来るのか?」
「会わせたい人が」
「ん?」
「待たせたな」
その男の顔を見て亮は驚いた。そして、懐かしさがこみ上げる。
黒木勝也だった。
少年院で亮を助け 地下闘技場に導いた恩人だった。
「どうして?」
「久しぶりに会いたくなってな」
「俺が知らせたんだ。今の状況を知らせたくて」
と、研吾は黒木に酒を注いだ。
「でっかいこと、やろうとしてるんだって」
「そんな、まだどうなるか」
「変わってねえな」
「え?」
「その面構え……鬼にも仏にもなれる顔だ」
「よくわかりませんね、その表現」
一同、笑っていた。
「この後、遊びに行くか?」
と、勝也。
「面白いところ、連れて行ってやる」
そこは、忍者屋敷だった。
といっても、アトラクションのような遊び場だった。
外国人観光客を相手に、忍者体験ができる施設だった。
飲食もできる忍者カフェになっている。
おにぎりやみそ汁、惣菜といった日本の食事に外国人観光客は興味をもっている。
プレイルームでは、忍者の装備で、手裏剣投げや塀登りなどが体験できる。
「子供から大人まで楽しめそうですね」
亮は、背後に気配を感じた。
振り返ると、忍者が立っている。
「天明じゃないか?」
館長の句会堂天明。
地下闘技場で戦った相手だった。
天明は正真正銘、忍者の末裔。
Z up Aでは、素早い動きで亮を苦しめたが、接近戦から寝技に持ち込み、アナコンダプレスという、手足で相手を締め付ける技で亮が勝利した。
その時から二人は友となった。
「久しぶりだな、亮」
「忍者の末裔とはいえ、こういう仕事をしているとは」
「色々あってな、おまえと同じで」
「うん」
天明は、黒木、研吾にもあいさつし、カフェでの食事を提供した。
その日は、昔話で盛り上がり、満足して解散した。




