第十四話 次なる野望へ
オフィスを出て歩きながら亮は、東子のことが気になった。
佳代の病気と関係があるのか? 話をするため、アドフラムに行くと言っていた。
危険だった。
亮は、研吾に電話をした。研吾は、こういう時に助けになるよき友だった。
すでに、東子は黒い水面に足を沈めつつあった。
東子は、アドフラムで数人の男たちに囲まれていた。
島崎と社長の葛原は東子の話を聞き、佳代との関係を否定した。
が、様子から東子はなにかに気づいた。
「警察に話して捜査してもらいます。このことは世の中に公開しますから」
「めんどくせいな」
葛原の表情が変わる。闇商人の顔になった。
「俺たちに任せな」
別室にいたGガ―ネットの男がでてきた。
「なに、あなたたち!!」
「どうします?」
島崎が訊く。
「本部に連れていきますか」
男は、東子に迫った。
「こ、こないで……イヤ」
その頃、亮は研吾に会っていた。
「評論家の先生、自宅にも病院にもいなかった」
と、研吾。
「電話もつながらないとすると、捕まったか」
「どこに?」
「アドフラムか……いや、たぶん、Gガ―ネットのアジトだろうな」
「助けにいくなら俺も」
と、研吾が拳を見せた。
「ん?」
「たまには手伝わせてくれよ。連戦連勝のおまえほどじゃないけど、俺だって、地下闘技場・Z up A の特訓を受けたことがあるんだ」
「すぐに挫折したけどな」
「それを言うなって」
亮はメイコに電話をし、Gガ―ネットの本部を確認した。
赤煉瓦の古い建物。
中から声がする。
Gガ―ネットのメンバーが揃っている。
ボスは、グラナダジョー、日本人だが偽名を使っている。
「これが、味覚障害にさせる薬だ」
葛原は、顆粒を水に溶かした。
「それで、同業者を脅したのね」
東子は縄で縛られ、椅子に座らされていた。
「先生も味見してみますか?」
「飲むわけないでしょ」
「だったら、別の薬もありますよ」
男が、注射器を見せる。
「味覚だけでなく、意識を失いますが」
島崎が言った。
その時、亮と研吾が駆け込む。
「なんだてめえら」
「間に合ったか」
「石清水さん」
東子は驚いた顔をしている。
「こいつ、奥田商事の社員ですよ」
島崎が葛原に言った。
「サラリーマンが何の用だ」
グラナダジョーの鋭い視線。
「潰しに来た」
「潰すだと」
「そう、この組織は、今この瞬間から消滅する」
男たちは笑っている。
「たった二人でか? ただの商社マンが何言ってる」
「試してみるか?」
「ここから帰さねえぞ」
背後から男が殴りかかってくるが、回し蹴り、一撃必殺。
次々に男が襲ってくる
乱闘の開始だった。
「あまり活躍するなよ。俺が目立たねえ」
と、研吾も応戦する。
研吾は、東子を抑えている男を蹴り倒し、
「向こうで見てな」
と、縄を解き助ける。
打撃技の連続で男たちは気絶していく。
葛原と島崎の膝がガクガクと震え出した。
「後がねえぞ」
と、研吾はグラナダジョーの向かっていくが、隠し持っていたヌンチャクで弾き飛ばされる。
口から出血している研吾。
「こいつだけ別もんだな」
研吾は血を手で拭った。
にらみ合う亮とグラナダジョー。
「懐かしいな、そのおもちゃ」
亮は思い出を復元した。
亮は、Z up Aの訓練場で、三人のヌンチャク使いと同時に戦ったことがあった。
もちろん素手で、三人を倒した。
「おもちゃかどうか試してみるか」
ヌンチャクが風を切る。
「俺は負けたことがねえ」
と、グラナダジョー、ヌンチャクがかなりのスピードで回転し、亮との距離を詰めていく。
「亮、油断するな」
と、研吾。
ヌンチャクの攻撃を紙一重でかわすが、服が千切れている。
「今度は、肉を切る」
ブンブンと音をたて回転するヌンチャク。
「地に落ちな」
距離間がなくなり、グラナダジョーの一撃。
「ん!!」
ヌンチャクを鷲づかみにしている亮。
「ば、ばかな!! 俺の攻撃を……」
「ここまでだ」
グラナダジョーの顔面にジャブを3発、
「最後にストレート」
グラナダジョーは吹っ飛ばされた。
腰を抜かしている葛原と島崎。
「た、助けて」
「おまえ達は、組織にとって邪魔な存在だ」
「組織?」
「霧獣会<ミストビースト>だ」
研吾が叫んだ。
「ミストビースト……す、すみませんでした」
「消えろ。今度同じことをしたら闇の勢力が始末する」
ヒェェーー
島崎と葛原は、土下座をした。
事業推進室のメンバーが揃い、業務の達成を確認し合っていた。
「新店舗の売上・集客も目標を達成できそうです。みなさん、よくがんばりました」
室長の田辺靖代が笑顔で言った。
メンバーも喜んでいた。
夜、亮は梨緒と部屋にいた。
いつもの姉と弟、そして取締役とただの社員の会話が聞こえる。
ノートパソコンを見る二人の顔は近い。
梨緒はドキドキを隠せない。
「独立採算を目的に、社内カンパニー制を導入して、店舗事業グループを編成してみたら?」
亮の提案だった。
パソコンの画面に企画書が映る。
飲食店の管理をしている店舗事業部なら収益も大きく、自由に活動することで、より業務の幅を広げ、業績アップにつながると考えた。
通常の部署と切り離すことで、自主性も向上する。
グループの中に、新店舗の運営、商品開発、人材管理育成、事業推進などのセクションを設けるというアイデアだった。
「うん、それいいかも」
梨緒は嬉しそうに亮の顔を見つめている。
「役員会で調整してみるね」
(また一歩、野望に近づく)
亮の優しそうな横顔の裏で、様々な感情が生まれていた。




