第十三話 食のアドバイザーを救え
亮は友理奈と屋上にいた。
「いつも、ここだね、二人が会うの」
「ここがいいんだろ」
「たまには、私もバーとか」
「夜のバイトで、客と飽きるほど」
「仕事じゃなくて」
「勝手にしてくれ」
「投げやり」
亮は遠くを見ている。
「それで、その料理評論家の女性に口説かれちゃったと」
「違う、ただ、俺の内に秘めた野心に勘が働いたとさ」
「なんか隠してそうだもの」
「うるさい、はやく仕事しろ」
「優しさの欠片もない言葉……」
友理奈は透明な瞳を亮に向けていた。
二週間が過ぎ、二店舗の宣伝は集客につながっていく。
客数も増え、さらなるメニュー作りを急ぐことになった。
事業推進室ではミーティングの予定だったが、
「雨海さん、打ち合わせを欠席すると」
小泉和香に連絡が入ったらしい。
「なにか、あったの?」
藤沢千奈美が訊ねた。
「病院に」
「病気?」
「妹さんが緊急入院したとか」
「妹……」
亮は、佳代を思い出した。
「石清水さん、知っているんですか?」
「いえ、ちょっとだけ……あとで、様子を見に行ってきます」
雨海東子は、深見沢総合病院にいた。
病室では、妹の佳代が点滴をうちながら眠っている。
頬はこけ、痩せ衰えている。
心配そうな東子。
亮が姿をみせた。
「なにがあったんですか?」
「拒食症らしい。急に物を口にしなくなって」
「理由は? この前会った時はあんなに元気そうだったのに」
「不安で、物を食べるのが怖くなったってメールがあってからすぐ、倒れてしまって」
「不安で 食べられない?」
「衰弱が激しくて、命の危険も」
「やはり、仕事でなにか問題を抱えたのか」
亮は、眠っている佳代を見た。
「代理店との関係があるかもと思って、アドフラムに話を訊きに行こうと思う」
「僕も一緒に」
「いえ、これは私たちの問題だから、奥田商事さんに頼るわけには……それより、お店のほうをお願いします」
フード業界に不穏な空気。
(やはり、なにかある?)
亮は、ミストボックスに調査を依頼した。
オフィスに行くと、エージェントのメイコが資料を用意して待っていた。
広告代理店・アドフラムはただの代理店ではなかった。。業界に影響力のある食通をピックアップして、店に都合のいい情報を発信させる。
結果、有名な雑誌、ライター、評論家の声で評判となり店の客は増える。
代理店は店から金を受け取る。
資料には金の流れも詳細に記載されていた。
資料を読みながら、亮は疑問に思う。
「そんな詐欺みたいなこと、みんなが加担するとは思えないけど」
「でも、悪質な手口でこのシステムが成り立ってしまった。先の資料を読んでみて」
亮が資料のページをめくると、評論家たちを言う通りにさせる悪質な手口がわかる。
もし、言うことを聞かなければ、薬を使って、味覚障害にさせると脅していた。
フード業界で仕事とする人にとって、味覚は命。
それを奪うと脅迫する
相手は闇に隠れ組織的に動くため、どの食品に薬物を混入させるかわからないうえ、犯罪の実証が難しい。
「知らぬ間に味覚障害になってしまうと」
「実際に被害者がでたら、みんな恐ろしくなるでしょうね」
「それで、失踪したり」
「薬の混入が怖くて、食事ができず拒食症になるとか」
「結局、罠にはまって廃業か、不安になって言う通りにするしかない」
「汚い奴らだ」
「店舗の数から考えると、全国的に行えば、かなりの収益になる」
亮は、資料に記載のない質問をした。
「そんなこと、社員10人程度の代理店でできるのか?」
「他にも数社……束ねているのは、Gガ―ネットという集団……背後に大きな組織はなさそうだから、簡単に潰せるでしょう」
「他人事のように言うな」
メイコは少しだけ笑ってみせた。




