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おっさん、軍神として降臨す  作者: 波 七海


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第79話 ヘルシア出兵

■中央ゴレムス暦1583年4月14日

 アウレア


 ディッサニア大陸の東に突き出た形の半島がある。

 人々はそれをヘルシア半島と呼んだ。

 そこに建国されたのがヘルシアと言う国家だ。

 ヘルシア半島と言う名前から国名がヘルシアになったのか、国名がヘルシアだからヘルシア半島と名付けられたのかは分からない。


 ヘルシアはアウレア大公国が出している貿易船の航路の1つでもあり、その関係も比較的良好であった。


 そのヘルシアの北から北西にかけてアルタイナと言う大国がある。

 特に列強国と言う訳でもないが、古くからヘルシアに強い影響力を持っていた。

 ヘルシアもアルタイナに依存するところもあり、アルタイナが宗主国、ヘルシアがその従属国家と周辺国から見なされていた。


 そんな折、ヘルシア内の反アルタイナ勢力から助けを乞う要請がきたのである。

 聖戦発議などもあり、ヘルシアのことは後回しにされそうになったのだがヘルシアに既得権益を持つ貴族の取り成しでこの件に介入することとなった。


 アウレア大公国も決して余裕がある訳でもないのにこいつら分かってんのかとおっさんは言いたかったが、聖戦の準備に忙殺され特に何も言えずにいた。

 それにホーネットのこともある。

 彼がおっさんのことを目の仇にしているのは理解していたため、言うに言えなかったのであった。一応、反対の意を示してはおいたが、意外と弱気なおっさんである。


 決定に傾きつつあった時にも何度も分が悪いことを説明したが、ホーネットがおっさんの意見を入れることはなかった。


 派兵の理由であるが、話は単純だ。

 アルタイナ皇帝の代替わりで、ヘルシアを始めとした周辺の小国群への影響力を強めるべく圧力を掛けられたと言うことである。直接統治されることを心配したヘルシアの反アルタイナ派が先走ったのだろう。


 おっさんは普通に介入は悪手と考えていた。

 アルタイナは周辺国家を蛮国だと見下す国であると言う。他国が介入すれば大規模な争いに発展する可能性がある。海で隔てられた半島に兵力を送り続けられるかと言われればNOとしか言えない。陸地からはガーランドとアルタイナで分断されているのでヘルシアに直接入ることもできない。


 橋頭堡を築かなければ、大軍をもってしても日本の白村江の戦いのように破れてしまうだろう。


 おっさんが聖戦の準備をする中、レーベ侯爵ラグナロクとニワード伯爵が中心となって軍備を進めていた。

 おっさんは忙しい時間を割いて2人に忠告するのを忘れない。


『ヤバいと思ったら逃げろ』


 である。


 ヘルシアは一枚岩ではない。

 当然、アルタイナに媚びてそちらに付く勢力がいるはずである。

 優位なのは反アルタイナ派だとは聞いているが、それが本当かは疑わしいところである。人は自分の都合の良いように現実を捻じ曲げるのだ。

 おっさんはアルタイナ派が主流だと考えていた。

 となれば、半島の上陸地点は陸の孤島と化してしまう。

 孤立は必至である。


 だいたいそれなりの大国であるアルタイナにせいぜい三○○○を派兵しようとするのが無謀なのである。

 少ないと言うなかれ。これでも船の数はかなりにのぼる。

 漕ぎ手、つまり船員が多いのでどうしてもそうなってしまうのだ。


 結局、おっさんのイルクルス行きを待たずにレーベ侯爵とニワード伯爵は大海原へと漕ぎ出して行ってしまった。




 ―――




■中央ゴレムス暦1583年4月18日

 ヘルシア半島南端 


「ふう……やっと到着したわい」

「比較的近いとは言え、船旅はこたえますね」


 ヘルシア半島の南端に位置する都市ヘルニアンに到着すると、彼らを出迎える男がいた。


「遠路ご苦労様でございます。これでアルタイナに対抗することができましょう。ささっご案内致しますので疲れた体を癒してください(少ないな。これでは勝てぬぞ)」


「これは痛み入る。レーベ卿。兵士たちにも休息を」

「そうですな。おいッ各隊、上陸と支度を終えたら休憩を取れッ」


 ラグナロクとニワードはそう兵士たちに告げると自らは男について何処かへ去って行った。


※※※


「アウレアの餓鬼どもがやってきたそうだな」


 板の間に畳のようなものを敷いただけの寝台に寝そべる女がまるで興味もなさげにそう言った。だらしない格好のままで女は余裕の表情を崩すこともなく、1つの手で頭を支え、もう1つの手で酒を盃に注いでいた。


「イルヒ様、このまま外つ国の連中を国内に入れるとインクム様の勢いが増してしまいますぞ!」

「よい」

「しかしッ!」

「アルタイナが来る」

「なればッ……」

「国内問題にこれ以上、外つ国に干渉されてたまるものか」


 この女は亡きヘルシア王の妃だった者だ。

 インクムは先王の父親であり、現在ヘルシアの政治を取り仕切っている。

 しかし、その政策は貴族にとって決して歓迎できるものではなく、民に配慮したものが多かった。そのため、貴族諸侯はイルヒに取り入り、現在、ヘルシアの権力は二重構造化していた。


 イルヒが言っていることを冷静に考えればアルタイナには干渉されても良いと取れるのだが、都合の悪いことは聞こえないらしい。


 事大主義がここに極まったヘルシアである。


 ホーネットの国際感覚の希薄さによって、ここにまたアウレア大公国は新たな火種を作ることとなるのであった。


 それは取りも直さず側近に佞臣ねいしんが蔓延り始めたことを意味していた。

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