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おっさん、軍神として降臨す  作者: 波 七海


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第70話 衝撃、走る

■中央ゴレムス暦1582年12月22日

 バルト王国 王都ベイルトン


 その日王都は騒がしい1日となった。

 サースバードの戦いの結果がもたらされたからだ。


 しかも敗報である。


「馬鹿なッ! 何故だ……何故負けるッ!?」


 国王トゥルンは玉座の間にて今後のアウレア大公国への対応を話し合っていた。

 その苛立った怒鳴り声に家臣たちは身を縮こまらせる。


「ブレイン将軍だぞ。あの狂人ブレインだッ!」


「陛下、虚報やも知れませんぞ」

「しかし、相手は烈将アルデなのだろう?」

「おい、貴様、本当のことなのだろうな?」


 疑われた伝令は心外だと言った表情で再度、サースバードの戦いのことを告げた。


「真にございます。2日前サースバードの地にてアウレア軍と激突。残存兵は北のコバルト城へ撤退しました!」


「ブレイン将軍はどうなったのだ?」

「将軍は自ら殿しんがりを引き受け残られました。それ故、多くの兵が撤退できたのです」


 それに驚いた軍務卿のカイラスが思わず伝令を怒鳴りつける。

 が、伝令は肝が据わっているようであからさまに不機嫌な顔をして言い返した。


「総大将が殿しんがりだと!? そんなたわけた話があるかッ!」

「そうおっしゃられましても事実としか言い様がありません」

「そんなことを言い争っている場合ではない。それが事実ならアウレア軍が王都へ向けて進軍して参りますぞ! 早急に防備を固めねば……」


 流石に宰相のカルケーヌは冷静だったようで不毛な言い争いに発展しそうだった場を治める。


「そうだ。直ちにコバルト城へ援軍を!」

「無事な兵力は如何ほどだ?」

「私が出立した時には五○○○はいたかと。それに離散した兵士たちが次々とコバルト城へやってきておりました」


「損害はそれほどでもないのか……? デルタ城は無事なのか?」

「それは不明でございます」


 ずっと話を聞いていたトゥルン王は親指の爪を噛んでいる。

 明らかに苛立っている様子だ。


「おのれ……よりにもよってガーレ帝國の動きが怪しい時に……」


 ガーレ帝國は軍を動かしていた。

 もっとも狙いはガーランドであってバルト王国ではないのだが、トゥルンたちはそんなことは知る由もない。


 その後、ブレインがサースバード以南の割譲で和議を成立させたとの報が入り、またまた王都は騒然とするのだが、それはおおむねやむを得ないと判断され事態は沈静化した。それでもアウレア如きに敗北したと言う事実に対アウレア強硬派は烈火の如く怒り狂い、更に勢いづくのであった。




 ―――




■中央ゴレムス暦1582年12月25日

 ラグナリオン王国 王都ラグナ


「陛下、またアウレア大公国が勝ったと聞いたのですが真ですか?」


 戦闘執事バトラーのバンディッシュが執務室に入るなり、国王クロームに問い掛けた。

 クロームは特段気にした様子もなく、こともなげにそれに答える。


「ああ、どうやら本当らしい。しかも大勝利でサースバード以南を得たって言う話さ」

「しかし解せませんな。大勝したのならそのままバルトを滅ぼせば良いのでは」


 疑問を呈したのは軍部のバーナード・アベニュー中将だ。

 既に執務室にいて話を聞いていたようである。

 彼としてはおっさんが和議を結んだのが気になるようだ。


「確かにそうだよねぇ。でもRECの分析では国内問題の解決を優先する考えではないかと言うことだよ。そうだよね?」

「はい。サースバード会戦ではアウレアのジィーダバ侯爵が討ち死にしたとの報告もあります。エストレア事変から完全に立ち直った訳でもない中での、古参の死でございます。アウレア国内は更に混乱するでしょう」


 REC長官のアルフ・ホランドがクロームに補足する。


「ジィーダバとアルデ将軍は対立してるって話だけど援軍に行ったってことは雪融けしたのかな?」

「分かりかねますが、どちらにしてもアウレア国内で増々、アルデ将軍の発言力が高まったのは確かですな」


 一向にバルト王国とアウレア大公国の話を止めないクロームとホランドの会話を遮ったのはアベニュー中将であった。


「アウレアの話は良いでしょう。これでバルト王国との均衡が崩れれば我々も列強国に専念できると言うものです」

「ヴァルムド帝國が兵の配置転換を行っているようです。恐らくは我が国を狙ってのことでしょう」


 すぐに話題――頭を切り替えられる辺り流石はREC長官である。


「しかしニールバーグとも戦争してるんだろ? 海外進出して陸でも二正面作戦なんて取るのか?」

「ラグナリオン王国を侮っているのです」


 アベニュー中将は机をドンと両手で叩き不快感を露わにしている。

 その顔は憎々し気だ。

 彼は愛国者であったが、反面、排他的な考えを持つ人間であった。

 そして彼もまたレーベテインに夢を見る男の1人であった。


「南には脅威はない。列強相手でも我が国が負けないことを証明してやろう」


 国王であるクロームが力強い口調でそう言うと、場の雰囲気は一気に引き締まった。そして話は対ヴァルムド帝國に切り替わっていった。




 ―――




■中央ゴレムス暦1582年12月28日

 ガーレ帝國 帝都ガレ


「東の果てでそんなことがあったのか」


 自国の帝都を世界の中心と信じて疑わないこのガーレ帝國皇帝にとってアウレア大公国とバルト王国が争っている話など最果ての国が何やらドンパチやっている程度の認識でしかない。


「皇帝陛下、現在ガーランド遠征に向けて準備が行われおりますが、アウレアを舐めてはなりませぬぞ!」

「分かっておる……そうだッ! あのアウレアだ。忘れもせぬ!」

「そうです。〈狂騒戦争〉で敗戦国となった()()アウレア大公国でござります」


 本当に覚えてんのか?と思ったかどうかは知らないが、帝國丞相ヴァレンチン・フォン・アロゾフは大真面目な表情で言った。言葉には力が籠っている。


「そのアウレア大公国がバルト王国の南を割譲させたと言う話です」

「何……彼の国がまた台頭してきておると申すのか……?」

「あの国は危険でございます。〈狂騒戦争〉を三大列強国相手に渡り合ったアウレアはずっと抑え付けておかねばなりませぬ」


 現在のバルト王国、ラグナリオン王国そしてガーランドの一部まで領土化していたかつてのアウレア大公国はほぼ一国で現在の三大列強国と互角の戦いをしたのである。それ以来、列強国を始めとする多くの国が、アウレア恐るべしと脳裏に焼き付けられてしまった。


「ガーランド征伐後にアウレアを完全に滅ぼしてしまうべきと存じまする」

「それほどか……此度のアウレアとバルトの戦いの詳細を聞かせよ」


 まだ詳細を聞いていなかった皇帝は少しばかり興味が出てきたようで丞相の言葉に耳を傾け始めた。その表情はどこか楽し気だ。


「はッ……来たる12月19日、バルト王国南部のサースバードデルタ城付近にて大規模な激突があったとのことです。決戦は1日で終り、アウレアが粘るバルトを終始押しまくっていたそうでござります。しかしアウレアはアウレア3将の1人、ジィーダバが討ち死にしたと言うことです」

「バルトはそれほど被害はなかったのか?」

「はい。何故かアウレアはそのまま雪崩れこまずに和議を結んだとか」

「目的がバルト征伐ではなかったと言うことか……」


 皇帝はふむ、とわずかに頷くと顎に手を当てて言った。


「未確認ですが、アウレアとガーランドが接触しているとの報告もございます」


 アロゾフ丞相は更なる火種を投下する。

 もしかするとガーランド征伐に介入してくるかも知れないのだ。

 彼としてもここのところ名前をよく聞くアウレア大公国とアルデ将軍を苦々しく思っていたのである。


「それほどか……そうだな。では圧力をかけておくとしようか」

「圧力と申しますと?」

「我々は見ているぞ!と警告する」

「警告でございますか?」

「ああ、アウレアに我々は見ているぞ!と教えてやるのだ。そうだな我が国だけではつまらん。他の強国気取り共にも教えてやれ」

「ははぁ!」


 その後、皇帝から命を受けて使者が他の列強国へ飛んだ。


 ガーレ帝國第8代皇帝ラスプーチン・ガ・レ・メドベージェフは不敵に口の端を歪めた。御年81歳、まだまだ現役である。

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