表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん、軍神として降臨す  作者: 波 七海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/160

第53話 列強国の影

■中央ゴレムス暦1582年10月26日

 ラグナリオン王国 王都ラグナ


 ラグナリオン王国国王クロームは頭を悩ませていた。


 現在、評定で今後の方針について話し合っているところである。

 出席者としては以下の者が席に着いていた。


 国王 クローム・レイル・ラグナリオン

 戦闘執事バトラー バンディッシュ・クラコービエ

 軍務卿 ソルド・ネイク侯爵

 REC長官 アルフ・ホランド

 評定衆 レクア・ロンド辺境伯

 評定衆 バイロン・シアレティ伯爵

 評定衆 エルダ・エメリ子爵

 評定衆 サーバス・オルダム男爵


「陛下、またネルアンカルムとの間の輸送隊が襲われ、物資などが奪われたと?」

「そうなんだよ。またやられたんだ」


 軍務卿ネイク侯爵の発言にクロームは悔しそうな声を上げる。

 ネルアンカルムはラグナリオン王国の北西、ガヴァリム帝國の北に位置する国家である。


「またか。くそッ……ガヴァリム帝國め」

「今年で何度目になるのでしょうか?」

「何を企んでいる……」


 シアレティ、エメリ、オルダムがそれぞれ思ったことを口にしている。

 ヘリオン平原でおっさんと共にバルト王国を破ったラグナリオン王国であったが、決して余裕がある訳ではなかった。

 特殊諜報部隊RECの掴んだ情報によれば、西の準列強国ガヴァリム帝國、北の列強国ヴァルムド帝國、南の蛮族ヴェルダンがラグナリオン王国を狙っていると言う。


「報告させて頂きました通り、今回、ガヴァリム帝國に奪われたのは主に軍需物資であります。そして襲われたのはまたラニーナ峠です」

「最近、ガヴァリム帝國の動きが盛んなんだよなぁ」


 クロームはまるで他人事のように言った。

 それに動じることもなくREC長官のホランドが現状を説明し始める。


「ガヴァリム帝國だけではありません。ヴァルムド帝國も動きを活発化させています。また、蛮族ヴェルダンも我が国を狙っていると言う情報があります。我々はガヴァリム帝國は挑発行動、ヴァルムド帝國では動員令がかかっていると分析しております」


「僕としてはさっさとバルト王国を倒して背後に備えたいんだけど」

「この状況で全兵力を向けることは敵いませぬな」

「やはりアウレアと共同で攻めますか?」

「しかし、アウレアに借りを作るのも考えものでは?」


「我が国は片手間で潰されるような国じゃあない。ヴァルムド帝國を国境のデラノ砦で抑えている内に持てる力を投入してバルトを平定したいんだけどな」


 海外派兵で忙しい列強国に簡単にやられるラグナリオン王国ではないと言うのが全員の一致した意見であった。それにヴァルムド帝國は西の隣国ネルアンカルムと戦争中である。


「ネルアンカルムからヴァルムド帝國を牽制して欲しいとの書状が来ておりますが如何いかが致しますか?」

「それなんだよ。ネルアンカルムを見捨てることは出来ない。となればバルト王国に回している兵力はないんだ」


 バルト王国とはヘリオン平原で睨み合っているが今年の戦いで勝利しているし、平原は防御機構が構築されている。簡単に破れるはずがない。


「まったく列強国には碌な国がありませんな」

「だから列強国なんだろうさ」

「覇を唱える国ばかりで嫌になるな」


 評定は躍れども進まず、現状はネルアンカルムに援軍を送ることだけが決まった。




 ―――




■中央ゴレムス暦1582年10月28日

 バルト王国 王都ベイルトン


 バルト王国国王トゥルン・ノエラウル・バルトルトは苛立ちを隠そうともせずに足をカタカタと動かしていた。


「ではガーレ帝國に不穏な動きがあると言うのか」


「はい。帝國南にある城に兵力が集まりつつあります。攻めるとすれば我が国かガーランドですな」


 宰相のカルケーヌは考えられる可能性のみを告げる。


「確か奴らはガーランド地方を蛮地と呼んでいたな?」

「そうでございます。それを考えると――」

「標的は我が国か……アウレアに介入して敗れたのが耳に入ったか?」


 トゥルンは指で肘掛をトントンと叩き始める。

 苛立ちが募っているのだ。


「それだけではありませぬ。アウレアが我が国の討伐令を出したと言うことです」


「アウレア如きが図に乗りおってッ!」


 怒りが最高潮に達したトゥルンは台に乗っていたグラスを投げつける。

 それは床にぶつかって澄んだ音を立てた。


「列強様が今になって動き出すとは……未開の土地を漁っておれば良いものを……」


「二正面作戦はちときついですな」

「そんなことは分かっておるわッ!」


 カルケーヌはトゥルンの癇癪に慣れているため特に動じる気配はない。


「ガーランドと手を組むことも考えねばならんか……」

「亜人種の国家ですぞ」

「ぐぬぬ……」


 バルト王国は亜人種を迫害こそしていなかったが、忌み嫌っていた。

 王国首脳は、国民が国内の亜人たちを差別していることにも特に口出ししていないのが実情であった。


「陛下、アウレアにもガーランドにも下手にでる必要などございません。ナリッジ・ブレインにアウレアを討伐させては如何いかがですか?」

「あの畜生の力を借りると言うのか? 気が進まん……」

「調略はほぼ白紙に戻っておりますし、鬼哭関きこくかんも再度抜かねばなりません。他に手はございませぬぞ! アウレア如きに討伐令を出されて何もしないとなると我が国がナメられます!」


「むむむ……致し方あるまい」


 トゥルンは唸りながらもカルケーヌの意見に同意したのであった。




 ―――




■中央ゴレムス暦1582年10月28日

 エレギス連合王国 国防艦隊


 ディッサニア大陸の北西に位置する島国であるエレギス連合王国は列強国と呼ばれている。その歴史は古く、中央ゴレムス暦を作ったボーナ帝國が滅びた頃には既に存在していたとされる。


 現在では三大列強国の筆頭に挙げられ、ディッサニア大陸に領土は持たないが、海外領土の面積は世界トップであり、そこから収奪する物資、資源、財宝の類は莫大な量にのぼる。植民地からの収益で国は潤い、特に海軍は敵うものはなく無双艦隊グラン・リートと呼ばれて畏怖されていた。


 首都エレゲステンの士官学校を卒業したばかりのアレクシア・フォン・テスタメントは公爵家の出身ということもあり、いきなり少尉と言う階級を与えられて国防艦隊に配属された。


 甲板で広い海をジッと眺めているアレクシアが上官の目に留まったようだ。


「テスタメント少尉か。君は配属されたばかりだが、何か夢でもあるのかね?」

「これは……閣下、海を見ていると自分の矮小さが感じられます。私はロンカの地へ行ってみたいと考えております」

「ほう。ロンカか。黄金文明ロンカ。今は我が国の金庫のようなものだがな」


 上官の言葉に自分のロマンが穢された気がしてアレクシアは心の中で毒づく。

 決して表情には出さない辺り、流石の公爵家令嬢である。


「世界は狭くなった。この世界は我々のものだ。しかし、大陸にはまだまだ蛮族共が溢れている。まぁそちらは陸の仕事だがね」


 そうなのだ。海も広いが、エレギス連合王国にとって陸地もまた広大なのである。

 その大陸はディッサニア大陸のことである。

 他の大陸には列強国や準列強国がぞくぞくと進出しており、未開の地は少なくなりつつある。


「(蛮族か……海を越えて突然やってきて富を奪う。どちらが蛮族なのか……)」


 植民地は広大だ。

 しかし、広すぎて本国の兵力だけでは到底維持できるものではない。

 海外だけで手一杯なのにディッサニア大陸を切り取ることなど可能なのか?

 上官の口ぶりからはエレギス連合王国が侵出するように聞こえる。


「世界を制覇するおつもりなのでしょうか?」

「我が国ならばできるッ! フランチェスカ女王陛下の下、力を結集すれば不可能などないッ!」


 それは単なる精神論では?と思いつつもアレクシアは何も言わない。

 言っても無駄だからだ。

 軍民共に女王陛下には心服している。

 アレクシアも敬愛しているのは間違いないが、だからと言って戦争すれば必ず勝てるとは言えないことは重々理解していた。


 それに最近、何故か胸騒ぎがするのだ。

 アレクシアにはそれが何か分からなかったが、近い内に世界を震撼させる何かが起こるような気がしてならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ