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おっさん、軍神として降臨す  作者: 波 七海


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第50話 おっさん、視察する

 ■中央ゴレムス暦1582年9月23日

  サナディア領ネスタト(旧オゥル伯爵領)


 おっさんはハーネスを出てネスタトへとやってきていた。

 謀叛を起こしたオゥルの本拠地であったが、彼の評判は悪くない。と言うよりかなり良いと言える。


「オゥルは良い領主だったみたいだな」

「そのようですな。意外ではありますが……」


 おっさんも意外に感じていた。彼の陰険そうな見た目からは想像もできないが、人は見かけによらないと言うことだろう。


 おっさんは燃え落ちた領主の館を建て直すことにして、それとは別に代官詰所として新たな建物を建てていた。

 詰所に向かうと代官がおっさんを迎える。


「閣下、よくお越し下さいました。復興は着実に進んでおります」

「そうみたいだね。街の人たちの顔も活き活きとしていて安心した」

「不穏分子はいないのか?」

「はい。厳戒態勢を取っていますが、領民は皆落ち着いております」


 代官の男はにこやかな笑みを浮かべている。

 本当に順調に進んでいるのだろう。


「ん? あれって……」


 おっさんは人間とは違う容姿をした女を見かけた。

 何やら耳が長いがファンタジーで出て来るエルフだろうかと思わず凝視してしまう。おっさんの呟きを耳聡く聞きつけた代官もまた同じものを目にしたのか、説明を始める。


「あれはエルフですな。オゥルは精霊魔法の研究をしていたようです」

「へぇ……ファンタジーと同じ感じだな……」

「ふぁ、ふぁんたじーですか?」


 おっさんは英語は翻訳されないのか?と何気なく考えていると、聞き返されてしまったので慌てて誤魔化す。


「あ、いや、精霊魔法の研究とは?」

「どうやら戦に使えないか色々試していたようです。本人に聞いてみますか?」

「そうだな。せっかくだし聞いてみたい」


 おっさんたちは瓦礫を片付けているエルフの家族に近づくと声を掛けた。


「おい。お前ら、この――」

「態度が悪い。偉そうにすんなよ」

「は、ははッ……申し訳ございません!」


 おっさんは少し不機嫌になりながらも気を取り直してエルフたちに声を掛けた。


「あー忙しいところすまないが、ちょっと教えてもらえるかな?」

「えっと……はい……なんでしょうか?」


 男のエルフが少し怯えたような視線を向けてくる。

 おっさんは苦笑いしながら尋ねた。


「キミたちはネスタトで何の仕事をしてたんです?」

「はぁ……我々が使う精霊魔法を戦いに応用できないか、精霊魔法に対抗する術はないかなどを試しておりました……」


 おっさんは軽く驚いて混乱してしまう。


「(精霊魔法まであんのかよ! いやクリスの魔法を考えりゃ当然か? てっきりこれ戦記ものかと思ってたけど、戦記&ファンタジーじゃねぇか!ってそりゃそうか、【戦法タクティクス】とかボードもあるしな。やっぱり異世界ファンタジーで間違いなかったんや!)」


 その後も色々聞いたところ、様々なことが分かった。

 この世界には精霊魔法だけでなく、元素魔法、神聖魔法、暗黒魔法、魔術が存在する。魔法は強力だが使える者は少ないらしい。魔術は人間が魔法研究により生み出して体系化した魔法の劣化版だと言う話だ。

 彼らは迫害されてガーランドに行くところをオゥルに保護され、ネスタトに住むことになったのだと言う。研究が始まって日は浅いらしく、まだ実践段階にはなかったようだ。


「(クリスのは元素魔法か?)戦いに使われてたらヤバかったかもな」

「そうですな。しかし私には【戦法タクティクス】の方が強力に思えますが」


 ドーガは忌憚なく意見を述べてくれるので大いに助かる。


「確かガーランドって多種族国家だったよな? エルフも当然――」

「いるでしょうな。ジィーダバ伯爵も魔法に苦戦していると聞きます」


 おっさんは時間を取らせてしまったことを詫びてその場を後にした。

 エルフたちにこれからどうなるのか聞かれたので、このまま働いてもらうつもりだからとよろしく頼んでおいた。


「(それにしてもこの代官は差別的だな。差別心が芽生えるのは普通のことだが、それを表に出すなよ。それに亜人は差別対象なのか。これは正す必要がある。敵対されると厄介だし)」


 おっさんは焼け落ちたネスタトの街を見回った後、アウレア有数の穀倉地帯を見に行った。流石にそう言われるだけあってかなり広大な面積が農地となっている。


「コメ麦畑も燃えたと聞いていたが、それなりに残っているみたいだな」

「はい。資料が燃えてしまったので正確には分かりませんが、全体の60%ほどになるかと試算しております」

「6割か……」

「か、閣下、申し訳ございません」


 おっさんの表情が曇ったのを見て慌てて代官が謝る。

 どうして謝るのか分からなかったが、おっさんはすかさずフォローする。


「キミが謝る必要はない。放火したヤツが悪いんだからな」


 代官は胸を撫で下ろして表情の硬さが消える。

 ネスタトが炎上したのは確かに痛い。

 おっさんがもし犯人を見つけたら助走をつけて殴るレベルだ。


 オゥルの家臣でも恭順を誓った者はそのまま使う予定だ。

 おっさんは彼らに再教育した後、ネスタトで働いてもらおうと思っている。

 適材適所の精神である。


 おっさんは代官たちに色々と指示を出してネスタトを後にした。




 ―――




 ■中央ゴレムス暦1582年9月26日

  サナディア領レイカルド


 おっさんはシルフィーナから直接賜った領地であるレイカルドを訪れていた。


 ここは良質の銅が採掘される銅山がある。

 銅貨を作る際にはレイカルドの銅が使われていたと言うことだ。

 ちなみに通貨鋳造ができるのは大公だけである。


 銅山は幾つも存在するので付近の街は大いに潤っている。

 採掘労働者が多く熟練の者も多いと聞く。

 彼らにはこれから役に立ってもらうことになるだろう。

 採掘労働と言っても銅を採るだけが仕事ではない。

 穴が掘れると言うことは何にでも応用が利くのである。

 井戸の硬い岩盤を削ることもできるし、大規模にトンネルを掘っても良いかも知れない。それに武田信玄のように城攻めにも使えるかも知れない。地下水やらそこら辺の問題は精霊魔法でも応用が利きそうなので試してみるのも良いだろう。


 レイカルドがおっさんの領有となっても変わらず採掘作業は行われている。

 作業を止めても混乱するだけだし、労働者にも生活がある。


 レイカルドは鉱山都市だが保養地でもある。

 近くに火山があるため、温泉が出るのだ。

 今は、傷ついた兵士の湯治場とうじばとしてのみ使われているようだが、おっさんとしてはここを一大観光地にしたいところだ。兵士だけでなく一般国民も入れるようにして金を落とさせるのである。


※※※


 せっかくなので温泉に入っていくことにした。

 現在、人はほぼいない。

 大自然の中で連れはドーガと護衛兵のみである。


「いやーでかい風呂に入りたかったんだよ。温泉最高や!」

「ウェダにも大きな風呂を作らせますか?」

「まぁそれもいいが追々で。それにただの風呂と温泉ってやっぱり違うよな」


 おっさんはつくづく自分が日本人であることを痛感した。


 匂いからすると硫黄泉のようである。

 所謂、卵の腐ったような臭いと言うヤツだ。

 となれば、この辺りは自然の硫黄が取れるし、鉱脈が見つかれば採掘することも可能だろう。


 よくもこんな領地をポンと気前良くくれたものである。

 他にどうしても与えられる土地がなかったのか、それともあまり重要性を理解していなかったか。


「いやー気持ちいいわ。酒でも持ってくるんだったな」

「温泉で一杯ですか。それはそそられますな」

「だろ?」

「はい」


 ドーガも護衛兵たちも皆、満足気でおっさんも上機嫌である。

 護衛も皆、入ってんのかと言う感じだが、おっさんは気にしていない。


「この辺を本格的に調査だな。山師なんかもいるだろうからそこはプロに任せよう。金山とかも見つかったりしてな」


 思わず笑みがこぼれてしまうおっさんであった。


 だが、これから起こるであろう血生臭い出来事について考えると、おっさんは憂鬱になってしまった。


「ま、なるようになんだろ……」


 おっさんは考えるのを止めた。

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