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おっさん、軍神として降臨す  作者: 波 七海


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第44話 おっさん、アウレアス会議に臨む

 ■中央ゴレムス暦1582年7月15日

  アウレアス城 とある部屋


 部屋にはピリピリとした雰囲気が漂い、空気が張りつめていた。


 用意された円卓に用意されている席は6つ。


 座っているのは以下の5人。

 ラルノルド領主、ランゴバルド・ア・ジィーダバ伯爵。

 サヴァーエ領主、アガル・ア・ニワード子爵。

 レナスラッド領主、ラムダーク・ド・テイン侯爵。

 カノッサス領主、ラグナロク・ド・レーベ侯爵。

 アリオーガ領主、ネオキア・ア・キングストン子爵。


 最後の1席はまだ誰も座っていない。


「サナディア卿はまだ来んのか」


 ジィーダバ伯爵がおっさんの名前を出して座っている皆を睥睨しながら文句を言い始めた。それにニワード子爵も同調する。


「会議を発案しておいてこれだ。アルデ様様だのう」


「まぁまぁ、忙しいお方ですし……」


 笑顔でそう取り成したのはテイン侯爵であった。

 オゥルに捕らえられ、おっさんに救出されたあのラムダークである。


「我々が忙しくないとでも申すのかな?」


 ニワード子爵がまだ弱輩のラムダークをジロリと睨みつける。

 しかしそれには全く動じずにケロリとした顔で言い返す。


「そうは言っておりません。何を苛立っているのですか?」

「誰も苛立ってなど――」


「いやーすみません。遅くなりました! 申し訳ございません」


 険悪なムードに露ほども気づかずに入室したおっさんは空いていた最後の1席に腰掛ける。悪態をついていたニワード子爵はプイッとそっぽをついてしまった。


「(いや俺も遅れて悪かったけど、意外と大人げないヤツだな。これがニワード子爵か……)」


「それでアルデ将軍、重大事と言うのはなんでしょうか?」


 レーベ侯爵家を継いだラグナロクは、まだ当主の自覚があまりないようで、フレンドリーな様子でおっさんに話し掛けてくる。

 いやフレンドリーなのは構わないのだが、態度ノリがね。

 カノッサスでの一件でおっさんは気に入られてしまったようだ。


「これはジィーダバ伯爵とも話したんですが……まぁ平たく言えば後継ぎ問題をどうするかと言うことです」

「その通りだ。シルフィーナ公女殿下が仮に大公となられたが、本来、アウレア大公国の継承は男系男子のみ。となると、今海外に赴かれているホーネット殿下となる訳だが……」

「確か行先はテラストラリス大陸だったか? 事変が伝わるのはまだまだ先だな」


 ジィーダバ伯爵とテイン侯爵が話を続ける。


「シルフィーナ陛下を今のまま仮の大公とすれば良いのではないのですか?」


 ラグナロクは頭の中が?で埋め尽くされていた。

 何やら首を傾げて、その顔は何が問題なのだ?と言っている。


「レーベ卿、仮の大公などを長期に渡って続けていると舐められるのだ」

「……?」

「あーと、あれですよ。レーベテインの後継国家を名乗る国があるでしょ? そこが騒ぎ出す可能性があるんですよね」


「ッ!! なるほど!! 流石アルデ将軍!!」


 ようやく気付いたラグナロクにニワード子爵はチッと舌打ちしている。

 ジィーダバ伯爵も長い髭を弄びながら苦い顔をしている。


「別に私だけでなくジィーダバ卿も危機感を募らせていらしたんですよ?」

「アウレアもレーベテインの復古を掲げている。このまま放置する訳にも行くまい」


 ホラリフェオはレーベテイン王国を復活させるのではなく、その旧領を併呑してアウレア大公国が正当な後継国家だと示したかったのだが、それを知る者はここにはいない。


「ホーネット殿下の名代を立てるのでは駄目なのか?」


 ラムダークが腕を組んだままで提案してくる。

 名代を立てるのは、ほとんど現状維持と言った感じである。

 要はシルフィーナが名代になると言うことだ。


「しかし心もとないな。後見役が必要だろう」

「合議制でも良いのではないか?」


 ジィーダバ伯爵が異を唱えるが、ラムダークも引き下がらない。

 まだ25歳ではあるが、流石はレーベテイン王国に連なるテイン侯爵家の者である。おっさんとしてはラグナロクもレーベ侯爵家の当主になったのだからもっとしっかりしたら良いと思うのだが。


「合議制では緊急時に対応できまい」

「エストレア事変以上の緊急時がやってくるのか?」


 ラムダークのツッコミにジィーダバ伯爵はしかめっ面(めんどくせぇ顔)をしている。少しムッとしたらしい。


「常に緊急時に備えるのが国防であろう!」


 少し声を荒げてジィーダバ伯爵が一喝する。

 その隣ではキングストン子爵がうんうんと頷きながらも別の提案を出す。


「異例ではあるが、すぐにでもホーネット殿下を大公位に据えてはどうか?」

「戴冠式はどうするんです? 流石にマズいのでは……?」


 おっさんは儀式は重要だと思う派である。

 既に形骸化しただけの儀式はどうかと思うが、執り行うことで誰かに礼や誠意を尽くすものはするべきなのだ。


「私は今のままで良いと思いますが……」

「今のまま? と言うと?」

「シルフィーナ様をアルデ将軍がお支えすれば良いのです」


 ラグナロクのお気楽な回答に、ジィーダバ伯爵とニワード子爵の顔が引きつった。


「(うーん。ラグナロクくん、空気読めて(何も考えて)ねぇな)」


 明らかにジィーダバ伯爵とニワード子爵はおっさんを警戒している。

 と言うより、勢力図は書き換えられたのだ。

 筆頭貴族であるジィーダバ伯爵の上をいったおっさんがシルフィーナの後見役に納まればおっさんの立場は不動の物となる。ホーネットが帰国しても大公家の勢力が削がれた今、アウレア大公国がおっさんに牛耳られることを恐れているのだ。もしくは単に気に喰わないだけかも知れないが。


 このままでは話が進まないのでおっさんが提案して(餌を撒いて)みる。

 相手に譲るところは譲って、こちらの欲しい物はちゃっかり持って行くのが上手いやり方なのだ。


「やはり後見役を置きましょうか」

「しかし――」

「まぁ聞いて下さい。お役目は貴族諸侯筆頭のジィーダバ卿にお願いしたいと考えております」

「何ッ!?」

「(おいおい、ジィーダバ卿……驚いちゃ何考えてんのかバレちゃうぞ?)」


 あまりの驚愕からしばしの間固まっていたジィーダバ伯爵であったが、コホンと咳払いを1つすると何やら言い始めた(演技を始めた)


「いや、失礼。わしなどに務まるだろうか?(こやつ何を考えている?)」

「ジィーダバ卿にしかできないと考えております(謙遜してんじゃねぇよ?)」


 そのまま、いやいや俺なんて状態が続くかのように思われたその時、思わぬ伏兵がスッと手を挙げ発言を求めてくる。


「私は後見役はサナディア卿がふさわしいと思うておる。ジィーダバ卿はガーランドの抑えで忙しかろう。ニワード卿にしても同様だ」


 まさかのキングストン子爵の発言に一同が呆気に取られたような顔をしている。


「先程の継承者不在の戴冠式のことは忘れて頂きたい。現実的に考えれば自ずと答えも出ようと言うもの」

「(おい、やめろ。ここで俺が後見役になったら、どこかで譲歩しなけりゃならんくなるだろうが)」


「おお、やはりそれが良いと私も思います」

「それが一番良いだろうな。私も賛成だ」


 ラグナロクとラムダークも相次いで賛同の意を示す。

 レーベテインの末裔たちが賛成に回ってしまえば、流石のジィーダバ伯爵も何も言えず、結局、おっさんがシルフィーナの後見役としてアウレアのまつりごとを補佐していくこととなってしまった。


 そしておっさんの危惧した通り、おっさんはサナディア領の一部を割譲させられたのであった。ジィーダバ伯爵としてはこれで一矢報いたと考えているかも知れない。


 優雅に泳ぐ水鳥が水中では必死に足を動かしているように、混乱が治まったかに見えるアウレア大公国も水面下では激しい権力闘争が行われることになる。

 更には外圧も加わり混乱は加速するのであった。


 と言うか、水鳥は浮力で普通に浮いてて泳ぐ時もあまり足を動かしてないよね。

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