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おっさん、軍神として降臨す  作者: 波 七海


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第30話 おっさん、アウレア平原に起つ

 ■中央ゴレムス暦1582年6月30日 7時

  アウレア平原 ドーガ隊本陣


「おい、まだ全軍撃破してねぇのかよ」


 開口一番そう言った(喧嘩を売った)のは、後詰としてやってきたガイナスであった。あの豪雨の後は一転して晴れ間が続いており蒸し暑い。


「ああ? 舐めんな仕事してない(ニート)みたいに言うんじゃねぇよ」

「将軍閣下から竜騎兵を預かっておいて成果なしたぁ、副官補のドーガさんも大したことねぇな」

「おい。まだ何も知らないくせにふざけたことを抜かすんじゃねぇよ。バルト王国軍を撃破して、奇襲して来た部隊を殲滅したっつの。てか後詰に来るのが遅いぞ? 職務怠慢だぞ貴様」

「うるせぇよ。あの豪雨で行軍が遅れたんだ」

「ったく、偉そうに言ってる割に自分の失敗は棚に上げるんだな」

「いや、俺が遅れても、敵に後れを取るお前さんじゃないと思ってな?」

けなしてんのか、褒めてんのかどっちかにしろよ……」


 ガイナスが連れて来たのはアド騎兵一○○○と軽歩兵一五○○だ。

 その多くが檄文を見て集まって来た、在野に埋もれていた元軍人や傭兵くずればかりなので訓練の必要はなかった。元々サナディア領にいた兵力は一○○○程度だったのだ。名実共に兼ね備えた将軍なのにもかかわらず、それだけの領国しか与えられていなかったと言うことだ。アウレア大公国自体が小さいと言うこともあるが。


 辺りは一面の平原である。

 サナディア軍に後詰が来たことは敵方にも知れ渡っていることだろう。

 対するネフェリタス側は総勢で三、四○○○。

 徐々(じょじょ)に兵が集まって来ているようではある。

 特に緒戦の敗北が痛かった。更には奇襲部隊が誰1人帰って来なかったのである。


「どうやら直に将軍閣下が到着するみたいだぜ?」

「出陣が早まったのか?」

「ああ、何でも公女のシルフィーナ嬢が総大将って話だ」

「かーーーッ、口だけは出してくんのな」


 おっさんからアウレアの実権を握るために動くと聞かされていたドーガとしては面白くないところである。更にはおっさんから【個技ファンタジスタ】や【戦法タクティクス】などの未知の力を始め、おっさん自身の秘密の一部まで聞かされたのでドーガの心は完全におっさんに向いていた。

 と言うよりも元々アウレアに特に忠誠心を持っていた訳でもなかったのだが。

 ドーガが仕官したのはアルデ将軍に興味があったのと、歴史だけはある小国で成り上がり易いかと考えていたからに過ぎない。




 ―――




 ■中央ゴレムス暦1582年6月30日 18時

  アウレア平原 オゥル伯爵軍陣地


「カノッサスのレーベ侯爵の動向が掴めました」


 いくら書状を送っても一向に返事がないことに業を煮やしたオゥル伯爵は、伝令にそのままカノッサスの様子を探らせていた。その兵士が帰還したのである。

 伝令から話を聞いたレノキア将軍がオゥル伯爵に告げた。


「で、どうであった?」

「レーベ侯爵ですが、ゴレムス教の神籍に入ったようです」

「神籍に入っただとッ!?」


 神籍に入るとは日本で言う出家して仏門に入るようなものである。

 レーベ侯爵は当初、日和見していたのだが、おっさんの先遣隊・ドーガ軍が寡兵にて緒戦で大勝した報を聞いた上、おっさんに疑われていると疑心暗鬼に陥ったのだ。神籍に入り、家督を嫡男のラグナロクに譲って遠まわしにおっさんに恭順の意思を示したのである。


「家督は嫡男のラグナロク・ド・レーベに譲ったと言うことです」

「くそッ、カノッサスは寝返ったかッ……」

「もう1つ判明したのですが、アルデ将軍はヘリオン平原からの帰途にカノッサスに寄ったようです」

「その時に何かあったと言うことか?」

「恐らくは」

「ぐぬぬぬぬ……何か掴んでいたと言うのか!?」


 あずかり知らぬところで勝手に株が高騰しているおっさんであった。

 オゥル伯爵が地団太を踏んで悔しがっているところへ密偵が駆け込んで来た。


「申し上げます! サナディアの軍勢がアウレア平原に接近しております。恐らく本隊かと!」

「もう来ただと!?」

「はッ! その数は五○○○を越えると思われます!」


 オゥル伯爵の顔色が蒼白になる。

 平地の戦いは数で決まる。

 未だ戦力が整っていないのにもかかわらず、この地で戦うことは不利を通り越して敗北してもおかしくない。


「ちッ……おのれ……」

「閣下ッどちらへ!?」


 慌てて陣から出て行こうとするオゥル伯爵にレノキア将軍が問い質す。


「ネフェリタスのところだッ! この場所では勝てん。陣を移動するように進言してくる」


 苛立ちのあまり仮とは言え、主君を呼び捨てにしていることに気付かないオゥル伯爵であった。彼はアドに飛び乗ると、すぐさまネフェリタスの陣に向かった。


※※※


「貴様は余に退けと申すのかッ!」


 ネフェリタスの大喝が周囲の空気を震わせる。

 貫禄だけはある彼の言葉に家臣たちは皆、身を縮こまらせて自身に累が及ばないように大人しくしている。


「(ホラリフェオから受け継いだのは貫禄だけか。この無能息子ボンクラが)」


 オゥル伯爵の心の中に鬼が顔を出しかけたが、ここで神輿を失う訳にもいかない。

 ご退場頂くのは確固たる基盤を築いてからである。

 ネフェリタスが正式にアウレア大公になった暁には、オゥル伯爵の息子にネフェリタスの娘が嫁いで公爵の地位が約束されている。

 その発言力は格段に大きなものになるだろうことは想像に難くない。


「そうは言っておりません。こちらの準備が整っておらぬのです。兵が集まるまでにネス峠まで()()致します。あそこは隘路になっており、大軍が一度に通ることは不可能なのです」


「黙れッ! それを退くと言うのだッ!」


「(駄目だこいつ、早く何とかせねば……。気が進まんがバルトから言ってもらうか? 流石に他国(後ろ盾)の意見を(ないがし)ろにはせんだろう)」


 その後も怒りの収まらないネフェリタスを放置してオゥル伯爵はバルト王国軍の陣地へと急ぐのであった。




 ―――




 ■中央ゴレムス暦1582年7月1日 8時

  アウレア平原


 ついにおっさんがアウレア平原に着陣した。

 その数は五○○○以上にまで膨れ上がっていた。


 先発のドーガとガイナスの部隊の三○○○と合わせて八○○○以上の大軍である。

 傭兵を多少含むとは言え、一体、この小さなアウレカ大公国と言う国家の何処どこにこれだけの兵力があったのか不思議なところだ。


 一方、逆賊であるネフェリタス軍は、軍勢を動かす気配を見せたものの、結局動かずに魚鱗の布陣で待ち構えている。


「あいつら動こうとしてたみたいだが、撤退しようとしてたのか?」

「多分な。だがこの距離で背後を見せたら急襲されて終わりだろ」

「竜騎兵を出すだけで壊滅させられる(すり潰せる)だろうねぇ」


 ガイナスの疑問にドーガがこともなげに答え、それを聞いていたおっさんも賛同する。3人は緑茶を飲みながら敵の様子を見ていた。


「敵さん、思ったより少ないね。やっぱり夜陰に紛れて逃げるんじゃないの?」

「私が蹴散らしてやりましたからね」

「夜襲でもかけるか?」


 おっさんの言葉にさりげなく、と言うか思いっきり手柄を主張するドーガであったが、ガイナスがそれを無視しておっさんに提案している。


「私だけならそれでいいんだが、今回は派手に弔い合戦しなきゃいけない。ま、それでも撤退するなら追撃するけどね」


 まずは勝利することである。

 しかも完膚なきまでに叩きのめすのが理想だ。


「俺が先鋒で蹴散らしてやるぜ」

「あ、先陣切る人もう決まってるから」


 おっさんの無慈悲な言葉がガイナスを襲う。

 その哀しき大男(ガイナス)は絶句して動けない。


「マジかよ! 俺は後詰に来てからまだ戦ってないんだぞ!?」

「まぁ不測の事態があったら対処して(動いて)もらうから」

「そう言えばお前はまだ碌に戦ってねぇのな」

「ぐ……言われてみれば……」

「分かった分かった。この部隊は大きいからな。時期を見て参戦命令出すよ」


 ガイナスは兵を率いて着陣しただけで戦闘はしていない。

 馬鹿にしていたドーガより仕事をしていない(ニートな)のである。


 そこへおっさんの下に伝令が走り寄ってきて内容を伝えた。


「良し。軍議通り配置に着いたな。お前らはここの軍を頼むぞ?」


 おっさんはそう言い残すと本陣へと帰っていった。


 いよいよそのときがやってくる。

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